外国人雇用状況届出書とは?記入例や提出先・申請方法を解説

外国人労働者を雇用する企業にとって、外国人雇用状況届出書の提出は法的義務であり、適切な手続きを怠ると罰則の対象となります。雇用保険被保険者かどうかによって提出書類や期限が異なるため、正確な知識が必要です。
本記事では、外国人雇用状況届出書の基本的な仕組みから具体的な申請手順、在留カード確認のポイント、提出期限を過ぎた場合の対処法まで、実務に必要な情報を包括的に解説します。適切な届出手続きにより不法就労助長罪などのリスクを回避し、安心して外国人労働者を雇用するための参考にしてください。
目次
外国人雇用状況届出書とは
外国人雇用状況届出書は、労働施策総合推進法第28条に基づき、事業主が外国人労働者を新たに雇い入れた場合や離職した場合に厚生労働大臣へ提出する法的義務のある書類です。
この届出制度は2007年に義務化され、国が外国人労働者の雇用状況を把握し、雇用の安定と改善、再就職支援を行うことを目的としています。
参考:e-GOV法令検索|労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律(外国人雇用状況の届出等)第二十八条
参考:外国人労働者の雇用管理の改善等に関して事業主が適切に対処するための指針
外国人雇用状況届出書が必要な理由
国が外国人労働者の雇用状況を把握することで、雇用管理の改善と雇用安定につなげることが主な目的です。具体的には、職業安定機関が事業主に対して外国人の在留資格や知識経験に応じた適正な雇用管理について必要な指導・助言を行います。
また、事業主の求めに応じて再就職援助に関する指導・助言、外国人に対する雇用情報の提供や職業紹介、公共職業能力開発施設での職業訓練なども実施されます。これにより不法就労を防止し、外国人労働者が在留資格の範囲内で能力を発揮できる環境整備を図っています。
届出対象となる外国人労働者の範囲
特別永住者と在留資格「外交」「公用」を除く全ての外国人労働者が届出対象となります。永住者は届出が必要ですが、特別永住者は対象外という点が重要です。
雇用形態に関係なく、正社員・アルバイト・パートすべてで届出が必要になります。派遣労働者の場合は派遣元が届出義務を負うため、派遣先企業に届出義務はありません。
雇用保険被保険者となる場合は、雇用保険被保険者資格取得届が外国人雇用状況の届出を兼ねるため、別途届出書を提出する必要がないことも覚えておきましょう。
届出対象・対象外の区分
区分 | 届出の要否 | 備考 |
永住者 | 必要 | 通常の「永住者」は届出が必須 |
特別永住者 | 不要 | 届出対象外 |
在留資格「外交」 | 不要 | 届出対象外 |
在留資格「公用」 | 不要 | 届出対象外 |
上記以外の在留資格 | 必要 | 雇用形態に関係なく届出必要 |
派遣労働者 | 派遣元が届出 | 派遣先企業は届出不要 |
提出を怠った場合の罰則規定
労働施策総合推進法第40条により、届出の未提出や虚偽の報告をした場合は30万円以下の罰金が科されます。法人の場合は両罰規定が適用され、法人の代表者や代理人、使用人などの従業者が違反行為を行った際は、行為者を罰するほか、その法人に対しても同じ刑が科されることになります。
さらに深刻なのは、在留期限の確認を怠り不法就労をさせてしまった場合で、不法就労助長罪として入管法第73条の2により3年以下の懲役又は300万円以下の罰金が科される可能性があります。
参考:e-GOV法令検索|労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律(罰則)第四十条
参考:e-GOV法令検索|出入国管理及び難民認定法 第七十三条の二
雇用形態別の提出書類と申請手順
外国人労働者の雇用と離職時には、それぞれ異なる手続きが必要になります。提出する書類や期限は、雇用保険被保険者かどうかによって大きく異なる点が重要です。
申請方法はオンラインとオフラインから選択でき、特にオンライン申請に切り替える際は「外国人雇用状況届出電子届出切替・変更申請書」の提出が必要となります。
雇用保険加入有無による届出方法の違い
項目 | 雇用保険被保険者 | 雇用保険被保険者ではない |
雇用時の様式 | 雇用保険被保険者資格取得届(様式第2号)
※17~23欄に外国人情報を記載 |
外国人雇用状況届出書(様式第3号) |
離職時の様式 | 雇用保険被保険者資格喪失届(様式第4号)
※14~18欄に外国人情報を記載 |
外国人雇用状況届出書(様式第3号) |
雇用時の提出期限 | 雇入れ日の翌月10日まで | 雇入れ日の翌月末日まで |
離職時の提出期限 | 離職日の翌日から10日以内 | 離職日の翌月末日まで |
オフライン提出先 | ハローワーク(窓口・郵送) | ハローワーク(窓口・郵送) |
オンライン提出先 | e-Gov電子申請 | 外国人雇用状況届出システム |
雇用保険被保険者の場合の届出方法
雇用保険被保険者として外国人を雇用する場合は、雇用保険被保険者資格取得届(様式第2号)の17~23欄に外国人特有の記載事項を入力する必要があります。2020年3月からは在留カード番号の記載が必須となった点に注意してください。
提出期限は雇入れ日の翌月10日までと短く設定されているため、早めの手続きが求められます。申請方法はe-Gov電子申請またはハローワーク窓口での提出から選択でき、電子申請を利用すれば24時間いつでも提出可能です。
雇用保険被保険者以外の場合の届出方法
1週間の所定労働時間が20時間未満または31日以上の雇用見込みがない外国人を雇用する場合は、外国人雇用状況届出書(様式第3号)を使用します。氏名はローマ字とカタカナの両方で記載し、ミドルネームがある場合は氏名の後ろに記載してください。
様式第3号は表裏1枚で印刷する必要があり、2ページを別々の紙に印刷してはいけません。雇入れ年月日と事業所情報は正確に記載し、提出期限は雇入れ日・離職日の翌月末日までとなります。外国人雇用状況届出システムまたはハローワーク窓口での提出が可能です。
離職時に必要な手続きと書類
外国人労働者が離職する際も、雇用時と同様に雇用保険加入状況によって提出書類が異なります。雇用保険被保険者の場合は、雇用保険被保険者資格喪失届(様式第4号)の14~18欄に在留資格や在留カード番号などの外国人特有の記載が必要です。
雇用保険被保険者以外の場合は、雇用時と同じ様式第3号を再度使用します。提出期限は雇用保険被保険者が離職日の翌日から10日以内、被保険者以外は翌月末日までと大きく異なるため注意が必要です。
離職時の届出内容比較
雇用保険加入状況 | 使用様式 | 外国人特有の記載欄 | 提出期限 |
雇用保険被保険者 | 雇用保険被保険者資格喪失届(様式第4号) | 14~18欄(在留資格、在留カード番号等) | 離職日の翌日から10日以内 |
雇用保険被保険者ではない | 外国人雇用状況届出書(様式第3号) | 1~8欄(氏名、在留資格等) | 離職日の翌月末日まで |
外国人雇用状況届出システムでのオンライン申請手順
初回利用時はユーザー登録を行い、ログイン後に雇用情報メニューから「外国人雇用情報新規登録」を選択します。在留カードを参照しながら氏名、在留資格、在留期間、生年月日、性別、国籍・地域、出身地域、資格外活動許可の有無、在留カード番号の9項目を入力してください。複数回の雇用・離職がある場合は、届出期限内であればまとめて入力することが可能です。
オンライン申請で入力する項目
入力項目 | 在留カード参照箇所 | 備考 |
氏名 | 表面 | ローマ字・カタカナ両方入力 |
在留資格 | 表面 | プルダウンから選択 |
在留期間 | 表面 | 年月日を正確に入力 |
生年月日 | 表面 | 西暦で入力 |
性別 | 表面 | 選択式 |
国籍・地域 | 表面 | プルダウンから選択 |
出身地域 | - | 別途確認が必要 |
資格外活動許可の有無 | 裏面 | 許可欄を確認 |
在留カードの番号 | 表面 | 12桁の番号 |
ハローワークでの窓口申請と郵送対応
事業所を管轄するハローワークに直接提出するか、郵送による申請も可能です。厚生労働省ホームページから各種様式をダウンロードできるため、事前に準備を整えてから手続きを行えます。
窓口での申請は職員による即時確認でミスを防止できるメリットがある一方、郵送の場合は提出後の控えを適切に保管することが重要です。郵送時は簡易書留などの配送記録が残る方法を利用し、提出期限に余裕を持って発送しましょう。
申請時の重要な確認事項と実務上の留意点
外国人雇用状況届出書の申請時には、単純な書類提出以上に重要な確認事項があります。特に在留カードの内容確認は不法就労防止の観点から極めて重要で、企業の法的責任に直結する部分です。また、提出期限の管理も罰則回避のために欠かせません。
これらの実務上の留意点を適切に把握し、社内でのチェック体制を構築することで、安心して外国人労働者を雇用できる環境を整えることができます。
在留カードの確認ポイントと資格外活動許可
在留カード裏面の資格外活動許可欄で「許可」の記載があることを必ず確認してください。留学生を雇用する場合は週28時間以内の就労制限があるため、労働時間の管理が不可欠です。在留期限の確認も重要で、期限切れのまま就労させると不法就労助長罪に該当する可能性があります。
在留資格に応じた就労可能な業務範囲については、出入国在留管理庁のウェブサイトで詳細を確認し、自社の業務内容との適合性を事前に検証しましょう。
提出期限を過ぎてしまった場合の対処法
提出期限を過ぎてしまった場合は、速やかに管轄ハローワークに連絡して指示を仰いでください。帳尻を合わせるために虚偽の日付で届出を行うことは絶対に避けなければなりません。
再発防止のためには期限管理システムの導入や、人事担当者による定期的なチェック体制の構築が有効です。雇用契約締結時に届出期限をカレンダーに記録し、リマインダー機能を活用することで確実な期限管理を実現できるでしょう。
まとめ
外国人雇用状況届出書は、事業主に法的義務として課せられた重要な手続きです。雇用保険被保険者かどうかで提出書類や期限が大きく異なるため、事前の確認が欠かせません。在留カードの適切な確認により不法就労を防止し、提出期限を厳守することで罰則を回避できます。オンライン申請システムの活用や社内チェック体制の構築により、確実な届出手続きを実現しましょう。適切な手続きは外国人労働者と企業双方を守る重要な取り組みです。