特定技能の職種16分野(12分野+2024年追加4分野)の詳細をわかりやすく解説

少子高齢化や人手不足の深刻化を背景に、日本では外国人材の受け入れ拡大が進んでいます。その中でも注目を集めているのが「特定技能制度」です。特定技能は、一定の専門性や技能を有する外国人が日本で働くことを可能にする制度で、現在は16分野にわたる職種が対象となっています。特に2024年には新たに4分野が追加され、制度の幅がさらに広がりました。
本記事では、特定技能制度の概要や最新動向に加え、対象となる16職種の特徴や求められるスキル、雇用時のポイントについて詳しく解説します。外国人材の採用や受け入れを検討している企業のご担当者様にとって、実務に役立つ情報をわかりやすくご紹介していますので、ぜひ参考にしてください。
特定技能制度の基本と最新動向
特定技能制度は、日本の深刻な人手不足に対応するため創設された在留資格制度です。2019年に当初12分野でスタートした制度は、2024年に新たに4分野が追加され、現在16分野に拡大しています。
ここでは、特定技能制度の基本から最新動向、各分野の詳細、そして企業が外国人材を採用・受入れる際のポイントまでを解説します。
特定技能制度とは何か
特定技能とは、人手不足が深刻な産業分野において外国人の就労を認めた在留資格です。2019年4月に創設された比較的新しい制度で、「特定技能1号」と「特定技能2号」の2種類があります。
この制度の最大の特徴は、単純労働を含む幅広い業務が可能な点です。技能実習のように特定の作業区分だけでなく、日本人と同様に多様な業務に従事できます。たとえば外食業分野では、調理と接客の両方を担当することが可能です。
また、特定技能は学歴が在留資格の要件として必須ではないことも特徴的です。分野ごとの技能試験と日本語試験に合格することで資格取得が可能なため、幅広い人材に門戸が開かれています。
特定技能1号と2号の違いと特徴
特定技能には「1号」と「2号」の2種類があり、それぞれ要件や特徴が異なります。
項目 | ||
技能水準 | 試験等で確認(技能実習2号を良好に修了した外国人は試験等免除) | 試験等で確認 |
在留期間 | 1年、6か月、4か月ごとの更新で、通算で上限5年まで | 3年、1年、6か月ごとの更新で、上限なし |
家族帯同 | 認められていない | 要件を満たせば認められる(配偶者、子) |
対象分野 | 16分野 | 11分野 |
支援義務 | 企業または登録支援機関による支援の対象 | 支援の対象外 |
日本語レベル | 試験等で確認(技能実習2号を良好に修了した外国人は試験等免除) | 試験等での確認は不要 |
永住権取得 | できない | 要件を満たせば取得可能 |
雇用形態 | 直接雇用(農業と漁業のみ派遣可能) | 直接雇用(農業と漁業のみ派遣可能) |
特定技能1号は最長5年間の在留が可能ですが、期間満了後は帰国するか、特定技能2号へ移行する必要があります。一方、特定技能2号は在留期間の更新に制限がなく、家族の帯同も認められています。現在、特定技能2号が取得可能なのは11分野のみで、介護、自動車運送業、鉄道、林業、木材産業の5分野は対象外となっています。
2024年の制度拡大と4職種の追加背景
2024年3月29日、閣議決定により特定技能制度が拡大され、特定技能1号の対象分野が従来の12分野から16分野に拡大しました。これは制度開始から5年が経過し、さらなる人手不足分野への対応が求められたことが背景にあります。
追加分野 | 概要 |
自動車運送業 | バス、タクシー、トラック運転者の3業務区分。日本の運転免許取得が必須。5年間で24,500人の受入れ見込み。 |
鉄道 | 運輸係員、軌道整備、電気設備整備、車両製造、車両整備の5業務区分。運輸係員にはN3以上の日本語能力が必要。5年間で3,800人の受入れ見込み。 |
林業 | 育林、素材生産、林業種苗育成等の業務。安全対策への配慮が重視される。5年間で1,000人の受入れ見込み。 |
木材産業 | 製材業、合板製造業などの木材加工工程に関わる業務。5年間で5,000人の受入れ見込み。 |
この拡大は深刻化する労働力不足への対応だけでなく、物流や交通インフラ、林業など日本の重要産業の持続可能性を確保するための措置でもあります。特に自動車運送業や鉄道分野では、運転士の高齢化と若手の不足が課題となっており、外国人材の活用によって安定したサービス提供を目指しています。
特定技能外国人の受け入れ状況と傾向
2023年12月末時点での特定技能外国人の在留者数は208,462人、2024年6月末時点は251,747人、2024年12月末時点では284,466人と急速に増加しています。分野別では、2024年12月末時点で飲食料品製造業が74,538人(26.2%)と最も多く、次いで工業製品製造業45,279人(15.9%)、介護44,367人(15.6%)、建設38,578人(13.6%)となっています。
国籍別では、ベトナムが133,478人(46.9%)と約半数を占め、インドネシア53,538人(18.8%)、フィリピン28,234人(9.9%)、ミャンマー27,348人(9.6%)が続いています。特にインドネシアとミャンマーからの受入れが増加傾向にあります。
地域別では、愛知県、大阪府、東京都、埼玉県、千葉県などの大都市圏での受入れが多い一方、北海道や福岡県など地方での受入れも増加しています。
特定技能1号の取得経路としては、当初は技能実習からの移行者が多数を占めていましたが、現在は技能試験を受験して直接取得するケースが増えています。特に飲食料品製造業や外食業では、技能試験による新規取得者が急増しています。
特定技能の対象16分野の詳細解説
特定技能制度では、深刻な人手不足に悩む16の産業分野において外国人材の受入れが認められています。当初は12分野でスタートした制度ですが、2024年3月の閣議決定により「自動車運送業」「鉄道」「林業」「木材産業」の4分野が新たに追加されました。
各分野で就労可能な業務内容や対象職種は明確に定められており、分野ごとに特有の要件や制限が設けられています。
分野 | 業務区分 | 対象職種・業務内容 |
介護 | l 介護(1区分) | l 身体介護(入浴介助、食事介助など)
l 付随する支援業務 ※訪問系サービスは不可(今後変更予定) |
ビルクリーニング | l ビルクリーニング(1区分) | l 建築物内部の清掃
l 付随業務としてホテルの客室ベッドメイク作業も可能 |
工業製品製造業
(旧素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業) |
l 素形材区分
l 産業機械製造区分 l 電気・電子情報関連区分 |
l 機械金属加工
l 電気電子機器組立て l 金属表面処理 l 紙器・段ボール箱製造 l コンクリート製品製造 l 陶磁器製品製造 l 紡織製品製造 l 縫製 l RPF製造 l 印刷・製本 |
建設 | l 土木
l 建築 l ライフライン・設備 |
l 型枠施工、左官、コンクリート圧送
l トンネル推進工、建設機械施工 l 土工、屋根ふき、電気通信 l 鉄筋施工、内装仕上げ、とび l 建築大工、配管、建築板金 |
造船・舶用工業 | l 造船
l 舶用機械 l 舶用電気電子機器 l 溶接 l 塗装 l 鉄工 l 仕上げ l 機械加工 l 電気機器組立て |
l 船舶の製造・修理に関わる各種作業
l 舶用機器の製造・組立て l 金属の切断、加工、溶接 l 塗装、仕上げ作業 |
自動車整備 | l 自動車整備(1区分) | l 自動車の日常点検整備
l 定期点検整備 l 分解整備 l 付随業務(整備説明、部品販売、板金塗装、洗車、車内清掃など) |
航空 | l 空港グランドハンドリング
l 航空機整備 |
l 航空機の誘導、牽引、貨物・手荷物取扱い
l 航空機の点検、整備、修理、部品交換 |
宿泊 | l 宿泊(1区分) | l フロント、企画・広報
l 接客、レストランサービス ※ベッドメイキングのみの業務は不可 ※風俗営業法対象施設では不可 |
農業 | l 耕種農業
l 畜産農業 |
l 作物栽培管理、農産物の集出荷・選別
l 家畜の飼養管理、畜産物の集出荷・選別 l 関連業務(製造・加工、運搬、販売、除雪等) |
漁業 | l 漁業
l 養殖業 |
l 漁具の製作・修理、水産動植物の採捕
l 養殖用資材の製作・管理 l 養殖水産動植物の育成・収穫・処理 |
飲食料品製造業 | l 飲食料品製造業(1区分) | l 飲食料品(酒類除く)の製造・加工
l 安全衛生管理 l スーパー等のバックヤードでの食品製造 |
外食業 | l 外食業(1区分) | l 飲食物調理
l 接客 l 店舗管理 |
自動車運送業
(2024年追加) |
l バス運転者
l タクシー運転者 l トラック運転者 |
l 旅客・貨物の運送業務
l 運行前後の点検、安全運行 l 乗務記録作成、乗客対応 |
鉄道(2024年追加) | l 運輸係員
l 軌道整備 l 電気設備整備 l 車両製造 l 車両整備 |
l 運転士、車掌、駅係員業務
l 軌道や電気設備の保守点検 l 車両の製造、整備 |
林業(2024年追加) | l 林業(1区分) | l 育林
l 素材生産 l 林業種苗育成 l 関連業務(製造・加工、運搬等) |
木材産業(2024年追加) | l 木材産業(1区分) | l 製材業に関わる木材加工
l 合板製造業に関わる木材加工 l 関連する付帯作業 |
介護分野
介護分野では、身体介護(入浴・食事・排泄介助など)と付随する支援業務を行います。2024年12月末時点の在留者数は44,367人で全体の15.6%を占め、3番目に多い分野です。
試験は国内外12か国で実施され、特にインドネシア国籍の増加が顕著です。介護は唯一特定技能2号が存在しない分野で、キャリアアップには介護福祉士資格の取得が必要です。当初訪問系サービスでの就労は不可でしたが、今後可能になる見通しです
ビルクリーニング分野
ビルクリーニング分野では、不特定多数が利用する建築物の内部清掃を行います。場所や建材に応じた専門知識を要する仕事です。付随業務としてホテルの客室ベッドメイク作業も可能なため、ホテル業界での雇用にも適しています。
2024年12月末時点の在留者数は6,140人と少ないものの、有効求人倍率は高水準(北陸地方3.76倍)です。特定技能2号への移行には現場管理の実務経験2年以上が必要です。
工業製品製造業分野
工業製品製造業分野は、2023年に3つの分野(素形材産業、産業機械製造業、電気・電子情報関連産業)が統合され、2024年に名称変更されました。素形材区分では金属等の素材加工、産業機械製造区分では産業用機械の製造、電気・電子情報関連区分では電子機器組立てなどを行います。
2024年12月末時点の在留者数は45,183人で全体の15.9%を占め、2番目に多い分野です。産業機械製造区分は受入れ上限に達し、新規発行を停止しています。
建設分野
建設分野では、建築大工や内装、左官などの仕事に従事できます。業務区分は土木、建築、ライフライン・設備の3つです。以前は19区分あったものが再編され、業務範囲が明確化されました。
2024年12月末時点の在留者数は38,365人で全体の13.5%を占め、区分別では土木が21,784人と最多です。現在の在留者の大多数は技能実習からの移行者です。2022年4月には全国初の特定技能2号認定者が誕生し、現在は評価試験も実施されています。
造船・舶用工業分野
造船・舶用工業分野では、船舶製造のさまざまな工程に従事できます。業務区分は9つあり、2024年12月末時点の在留者数は9,665人です。区分別では「造船」が7,124人で大半を占めています。
1号試験は集合形式で行われ、海外ではフィリピン1か国のみで実施されています。2号試験は「溶接区分」のみで実施され、受験には複数の作業員を指揮・管理する監督者としての実務経験2年以上が必要です。
自動車整備分野
自動車整備分野では、日常点検整備、定期点検整備、分解整備などの業務に従事できます。付随業務として「整備内容の説明や部品販売」「板金塗装」「洗車や車内清掃」なども担当可能です。
2024年12月末時点の在留者数は3,076人と少なめですが、試験はフィリピン、ベトナムの2か国でも実施されています。1号試験合格者は3,365人で、2号試験もほぼ毎日実施中です。自動車保有台数増加に伴う整備士不足解消が期待されています。
航空分野
航空分野には、「空港グランドハンドリング」と「航空機整備」の2区分があります。前者は航空機の誘導や貨物取扱いを、後者は機体整備を担当します。2024年12月末の在留者数は1,382人と少なく、内訳は「空港グランドハンドリング」が1,369人、「航空機整備」が13人とかなり偏っています。
1号試験は5か国で実施され、合格者は3,066名です。2号試験は対象者がいないため未実施です。航空需要の回復に伴い、今後の人材需要増加が見込まれます。
宿泊分野
宿泊分野では、ホテルや旅館でのフロント、企画・広報、接客、レストランサービスなど幅広い業務に従事できます。簡易宿所や風俗営業法対象施設では受入れできず、ベッドメイキングをメイン業務にすることも不可です。
2024年12月末の在留者数は671人と最も少ないものの、試験合格者は6,694人と多く、別分野や別在留資格で就労している可能性があります。2号試験には複数の職種での2年以上の実務経験が必要で、要件が厳しい点が課題です。
農業分野
農業分野には「耕種農業」と「畜産農業」の2区分があります。耕種は施設園芸、畑作・野菜、果樹の栽培を、畜産は養豚、養鶏、酪農を対象とします。関連業務として農畜産物の製造・加工、販売、冬場の除雪作業も可能です。
派遣雇用が認められている点が特徴的です。2024年12月末の在留者数は29,157人で全体の10.2%を占め、5番目に多い分野です。技能実習生の受入れも盛んで、外国人採用に先進的な業界となっています。
漁業分野
漁業分野は「漁業」と「養殖業」の2区分に分かれ、それぞれ別の試験が用意されています。合格した区分でしか就労できず、両方で働きたい場合は2つの試験合格が必要です。繁忙期と閑散期の差から派遣雇用が認められています。
2024年12月末の在留者数は3,488名で、内訳は「漁業」が2,127名、「養殖業」が1,361名です。2号の申請要件として日本語能力試験N3以上が必須で、他分野より日本語スキルが求められる点が特徴です。
飲食料品製造業分野
飲食料品製造業分野では、酒類を除く飲食料品の製造、加工、安全衛生業務に従事します。対象は食料品製造業、清涼飲料製造業、茶・コーヒー製造業など7業態です。2024年3月の閣議決定により、総合スーパーや食料品スーパーのバックヤードでの食品製造も対象となりました。2024年12月末の在留者数は74,380人で全分野中最多です。1号試験合格者は68,713名と多く、2号試験も実施中ですが、申込みは企業からのみで外国人個人からはできません。
外食業分野
外食業分野では、飲食物調理、店舗管理から接客まで幅広い業務ができます。飲食店のフロアはもちろん、ホテル併設レストランでの配膳も可能です。外国人が一般飲食店で幅広く働ける初めての在留資格として注目されています。2024年12月末の在留者数は27,759人で6番目に多い分野です。
1号試験合格者は71,615名と多く、日本語を活かして働きたい外国人に人気があります。2号試験にはマネジメント経験や店舗管理補助経験が必要で、N3以上の日本語力も求められます。
自動車運送業分野(2024年追加)
自動車運送業は2024年に新たに追加された分野で、バス・タクシー・トラックの運転業務を担当します。在留資格申請にはバス・タクシーは第二種運転免許、トラックは第一種運転免許が必要です。タクシー・バスドライバーには日本語能力N3が求められる点も特徴的です。
5年間の受入れ見込み数は24,500人と設定され、2024年から出張試験が開始されています。CTB試験については現在準備が進められている段階です。
参考:出入国在留管理庁|「自動車運送業分野における特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する方針」に係る運用要領
鉄道分野(2024年追加)
鉄道分野も2024年に新たに追加され、運輸係員(運転士、車掌、駅係員)、軌道整備、電気設備整備、車両製造、車両整備の5区分があります。特に運輸係員は日本語能力が重要なため、N3以上の要件が設けられています。
5年間で3,800人の受入れが見込まれており、現在は車両整備区分の試験が2025年3月実施に向けて準備中です。車両製造区分では、技能検定3級取得でも要件を満たせる点が特徴的です。
参考:出入国在留管理庁|「鉄道分野における特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する方針」に係る運用要領
林業分野(2024年追加)
林業分野も2024年に追加され、育林、素材生産、林業種苗の育成、原木生産を含む製炭作業とその関連業務に従事できます。5年間の受入れ見込み数は1,000人で、試験は2025年3月から開始予定です。それまでは技能実習からの移行による在留資格取得が中心となります。
林業の労働安全対策強化のため、事業者・業界団体等への助言・指導体制も整備されています。林業における労働災害発生率は他産業より高いため、安全対策が特に重視されています。
参考:出入国在留管理庁|「林業分野における特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する方針」に係る運用要領
木材産業分野(2024年追加)
木材産業分野も2024年に追加され、製材業、合板製造業等に係る木材の加工とその関連業務に従事できます。5年間の受入れ見込みは5,000人です。試験は2024年12月から実施されており、第1回目は受験者20人全員が合格しました。
海外試験はインドネシアでの実施準備が進められています。木材産業も安全対策が重視され、協議会での情報共有や現地調査、助言指導など、外国人労働者の安全確保に向けた取り組みが推進されています。
参考:出入国在留管理庁|「木材産業分野における特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する方針」に係る運用要領
特定技能外国人の採用と受け入れのポイント
特定技能外国人を採用するには、試験制度や在留資格申請、支援体制の構築など、いくつかの重要なステップがあります。企業側には雇用契約締結や支援計画作成などの義務が課せられる一方、技能実習からの移行や特定技能2号へのキャリアアップなど、外国人材と企業双方にメリットのある制度設計となっています。
ここでは、特定技能外国人を雇用する際の主なポイントと手続きの流れ、キャリアパスについて解説します。
特定技能の試験制度と合格要件
特定技能1号の試験制度は、①各分野の業務に関連した技能評価試験と、②日本語能力に関する試験の2本立てです。技能評価試験は分野ごとに異なり、それぞれの業務に必要な専門知識や実技能力が問われます。日本語試験は、日本語能力試験(JLPT)N4以上または国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-basic)200点以上のいずれかに合格する必要があります。
特定技能2号の試験は、①各分野の高度な技能評価試験が基本ですが、外食業と漁業の2分野では日本語能力試験N3以上の合格も必須条件です。試験実施回数や場所は分野によって大きく異なり、多くの分野で海外試験も実施されています。
技能実習からの移行条件と手続き
技能実習2号を良好に修了した外国人は、同一分野であれば試験免除で特定技能1号に移行できます。「良好に修了」とは、技能実習の成績が優秀で、不正行為や失踪などの問題がなく修了することを指します。
移行手続きには、特定技能雇用契約の締結、支援計画の作成、在留資格変更許可申請などが必要です。申請書類には技能実習修了証明書や、実習実施者による技能等の修得状況を証明する資料も求められます。
建設や農業など技能実習生が多い分野では、特定技能への移行者も多く見られます。
特定技能外国人を雇用する企業の要件
企業が特定技能外国人を雇用するには、まず特定技能雇用契約の締結と支援計画の作成が必須です。雇用契約には報酬額や就業場所、業務内容などを明記し、日本人と同等以上の待遇を確保する必要があります。
特定技能所属機関(受入れ企業)には欠格事由があり、5年以内に出入国・労働法令違反で刑に処せられた場合や、不正行為で受入れ停止となった場合などは認められません。また、介護や建設など一部分野では「協議会」への加入が義務付けられています。
支援計画には、入国前後のオリエンテーション実施、住居確保・生活環境の説明、外国人からの相談・苦情対応体制など、10項目の支援内容を盛り込む必要があります。これらの支援は登録支援機関に委託することも可能です。
参考:出入国在留管理庁|特定技能外国人受入れに関する運用要領
特定技能2号への移行と将来展望
特定技能1号から2号への移行には、分野別の技能試験合格が必要です。外食業と漁業では日本語能力試験N3以上も求められます。2024年現在、特定技能2号への移行が可能なのは11分野で、介護、自動車運送業、鉄道、林業、木材産業の5分野は対象外です。
2号への移行の最大のメリットは、在留期間の上限がなくなり、配偶者や子どもの帯同が可能になる点です。また、一定期間日本に在住し、他の条件も満たせば永住許可申請の対象にもなります。
現在、多くの分野で2号試験が実施されていますが、申込方法は分野ごとに異なります。多くの場合、外国人個人ではなく企業からの申込が必要です。今後は対象分野の拡大や要件緩和なども検討されており、日本での長期キャリア構築がより容易になる可能性があります。
まとめ
特定技能制度は、深刻化する日本の人手不足に対応するための重要な仕組みです。16の産業分野で外国人材を受け入れることで、企業は必要な人材を確保し、外国人は自身のスキルを活かして日本で就労できます。特に2024年に追加された4分野を含め、各分野の詳細と採用・受入れのポイントを理解することで、効果的な外国人材活用が可能になります。特定技能制度を適切に活用し、企業の成長と外国人材のキャリア構築を同時に実現することが、今後の日本社会において重要な課題となるでしょう。