在留カードとは?偽造カードとの見分け方や在留資格の確認方法を解説

在留カードとは、日本に中長期滞在する外国人に対して交付される、法務省発行の公的な身分証明書です。氏名や在留資格、就労の可否などが記載されており、在留管理の中核を担う重要な書類です。しかし、日本で外国人を雇用する企業や施設にとっては、在留カードの見方や偽造カードとの見分け方がわからず、不安に感じるケースも少なくありません。
本記事では、在留カードの役割や記載事項の確認方法、偽造防止のためのチェックポイントまでをわかりやすく解説します。
目次
在留カードとは?基本的な役割と対象者
在留カードは、日本に中長期間滞在する外国人にとって最も重要な身分証明書です。出入国在留管理庁から交付されるこのカードは、適法な在留者であることを証明し、日本での活動内容や期間を明確に示します。
企業が外国人を雇用する際には、このカードの確認が法的義務となっており、コンプライアンス上極めて重要な役割を果たしています。
日本に中長期滞在する外国人のための身分証明書としての役割
在留カードは法的に2つの重要な役割を持っています。これらの役割により、外国人の日本での滞在が適法であることを証明する唯一の手段となります。
【在留カードの役割】
- 法務大臣が適法な在留者であることを証明する「証明書」としての役割
- パスポートへの証印などに代わる「許可証」としての役割
この証明書としての機能により、在留カードを携帯することは日本での正当な滞在資格を示す確実な方法となっています。許可証としての機能では、従来パスポートに押印されていた各種許可の証印に代わって、許可内容を明示する重要な書類として機能します。
企業が外国人を雇用する際、このカードの確認を怠ると不法就労助長罪に問われる可能性があるため、コンプライアンス上必須の確認事項となっています。
在留カードの交付対象となる中長期在留者とは
在留カードが交付されるのは、日本に3ヶ月を超えて在留する「中長期在留者」です。この定義に該当する外国人のみが在留カードの交付を受けることができます。
【中長期在留者に該当する在留資格の例】
- 「技術・人文知識・国際業務」などの就労ビザを持つ方
- 「留学」「技能実習」で滞在する方
- 「日本人の配偶者等」「永住者」など
一方で、観光客などの「短期滞在者(3ヶ月以下の滞在)」には在留カードが交付されません。そのため、在留カードを所持している外国人は、適法に日本に入国し、中長期的な滞在が認められた者であることの証明となります。
この区別により、企業は在留カードの有無を確認するだけで、その外国人が長期間の就労が可能な立場にあるかを判断できます。
在留カードと在留資格の関係性
在留資格とは、外国人が日本で行うことができる活動内容を定めたものであり、この資格がなければ日本に入国・在留することはできません。在留カードは、その人がどの「在留資格」を持っているかを証明する重要な書類です。
在留資格によって就労が認められていない場合も多く存在するため、カードに記載された在留資格の確認は雇用時の必須事項となります。たとえば「留学」や「家族滞在」の在留資格では、原則として就労が認められていません。
しかし、資格外活動の許可を得ることで、週28時間以内の就労は可能になります。このような複雑な制度により、単に在留カードを持っているだけでは就労の可否を判断できず、記載されている具体的な内容まで確認する必要があります。
在留カードでわかること|表面・裏面の記載事項
在留カードには、外国人の身分情報から滞在許可の詳細まで、雇用判断に必要な情報が表面と裏面に分けて記載されています。表面には基本的な身分事項と在留資格の情報が、裏面には住所変更や追加の許可情報が記載される構造になっており、両面を確認することで外国人の現在の状況を正確に把握できます。
氏名や在留資格が記載された表面の確認ポイント
在留カードの表面には、外国人の基本的な身分情報と在留許可の詳細が記載されています。雇用時の確認では、特に本人確認と就労の可否に関わる項目の確認が重要となります。
記載項目 | 確認すべきポイント |
顔写真 | 本人であるかを確認する(16歳未満は顔写真なし)。 |
氏名、生年月日、性別、国籍・地域 | 本人確認の基本情報。 |
在留資格、在留期間(満了日) | どのような活動が許可されているか、いつまで滞在できるかを確認する。 |
就労制限の有無 | 「就労不可」や「指定書により指定された就労活動のみ可」など、就労の可否を示す最も重要な項目の一つ。 |
在留カード番号 | カードの有効性を確認する際に使用する12桁の番号。 |
特に外国人雇用時には、顔写真での本人確認、在留期間が切れていないか(オーバーステイでないか)、就労が認められているかの3点は必ず確認すべき事項です。氏名は原則アルファベット表記となっていますが、申出により漢字氏名を併記することも可能です。
住所変更や資格外活動許可がわかる裏面の確認ポイント
在留カードの裏面は、表面の情報の変更履歴や追加の許可情報が記載される重要なスペースです。表面だけの確認では見落としがちな重要な情報が含まれているため、必ず確認が必要です。
【裏面で確認できる情報】
- 住居地記載欄:引越しをした場合、市区町村の窓口で手続き後に新しい住所がここに追記される。
- 資格外活動許可欄:「留学」や「家族滞在」など、原則就労できない在留資格の人がアルバイトをするための許可。許可されている場合、ここに「許可」と記載され、週28時間以内の就労が可能になる。
- 在留期間更新等許可申請欄:在留期間の更新などを申請中の場合にスタンプが押される。この記載があれば、在留期間満了後も特例で最大2ヶ月間は適法に滞在できる。
これらの情報から、裏面の確認を怠ると、外国人の現在の就労許可状況や滞在の適法性を見誤る可能性があります。特に資格外活動許可の有無は、アルバイト雇用の可否を左右する決定的な情報となるため、見落としは法的リスクを招く恐れがあります。
【外国人雇用】在留カードの有効性と就労可否の見分け方
外国人を雇用する企業にとって、在留カードの有効性確認と就労可否の判断は法的責任を伴う重要な業務です。偽造カードの見分け方から、就労制限の詳細確認、更新中の特例措置まで、正確な判断に必要な知識と確認方法を理解することで、不法就労助長罪のリスクを回避できます。
アプリやWebサイトでできる偽造カードの見分け方
偽造カード対策として、出入国在留管理庁では複数の確認方法を提供しています。これらの方法を組み合わせることで、偽造リスクを大幅に低減できます。
【確認のステップ】
- 目視での確認
カードを傾けると左端の色が変わる、透かし文字「MOJ」があるなど、以下の偽変造防止のポイントを確認します。
- 「MOJ」の周囲の絵柄の色の変化を確認
- 顔写真下のホログラムの変化を確認
- 左端の縦型模様の色の変化を確認
- カード裏面の透かし文字を確認
- Webサイトでの失効情報照会
出入国在留管理庁の「在留カード等番号失効情報照会」サイトにアクセスし、カード番号と有効期間を入力して失効していないかを確認します。
- アプリでのICチップ読取り
出入国在留管理庁の「在留カード等読取アプリケーション」をスマートフォンにインストールし、ICチップ情報を読み取ることで偽変造でないことを確認します。
「就労制限の有無」欄と資格外活動許可の確認方法
就労できるかどうかを確認する最も重要なポイントは、表面の「就労制限の有無」欄の記載内容です。この欄には就労の可否が明確に示されており、雇用判断の基準となります。
裏面の「資格外活動許可欄」の確認も同様に重要です。「留学」「家族滞在」などの在留資格の場合、この欄に許可の記載がなければアルバイトであっても雇用できません。許可がある場合は「許可」と記載され、週28時間以内かつ風俗営業等を除く業務での就労が可能となります。
在留資格が「特定活動」の場合は特別な注意が必要です。この在留資格では許可される活動内容が個別に指定されているため、必ずパスポートに添付された「指定書」の内容を確認しなければなりません。指定書には具体的な活動内容や就労の可否が詳細に記載されています。
在留カードの有効期間と更新中の注意点
在留カード自体の有効期間と、在留資格の「在留期間の満了日」は異なる場合があります。この違いを理解せずに判断すると、適法に滞在している外国人を不当に扱ってしまう可能性があります。
対象者 | 在留カードの有効期間 |
永住者(16歳以上) | 交付の日から7年間 |
永住者(16歳未満) | 16歳の誕生日まで |
永住者以外(16歳以上) | 在留期間の満了日まで |
永住者以外(16歳未満) | 在留期間の満了日または16歳の誕生日のいずれか早い日まで |
在留期間の更新申請中は、カード裏面にその旨が記載され、表面の在留期間満了日から最大2ヶ月間は在留が認められる特例があります。そのため、表面の日付だけを見てオーバーステイだと判断せず、必ず裏面の記載も確認する必要があります。この特例により、更新手続き中の外国人も適法に就労を継続できます。
在留カードに関する各種手続きと携帯義務
在留カードの各種手続きと携帯義務は、外国人が日本に適法に滞在するための重要な法的要件です。紛失時の再交付申請から住所変更の届出、常時携帯義務まで、これらの手続きを正しく理解することで、雇用している外国人が法的トラブルに巻き込まれることを防げます。
紛失・盗難時に必要な再交付申請
在留カードを紛失したり、盗難に遭ったりした場合は、その事実を知った日から14日以内に地方出入国在留管理局へ再交付申請をしなければなりません。この期限を過ぎると法的な問題が生じる可能性があります。
【再交付申請の必要書類】
- 申請書、パスポート、顔写真
- 紛失・盗難の事実を証明する資料(警察署で発行される遺失届受理証明書、盗難届受理証明書など)
カードが著しく汚れたり、破損したりした場合も速やかな再交付申請が必要です。また、汚損等がなくても希望すれば手数料1,300円を払って交換することも可能です。
紛失や盗難の場合は手数料は不要ですが、警察への届出が必須となります。再交付期間中は、申請受理証明書が在留カードの代わりとなります。
氏名や住所の変更があった場合の届出
在留カードに記載された情報に変更があった場合、届出が必要です。変更内容によって届出先と期限が異なるため、正確な理解が重要です。
変更内容 | 届出先 | 届出期限 |
氏名、生年月日、性別、国籍・地域の変更 | 地方出入国在留管理局 | 変更日から14日以内 |
住居地(住所)の変更 | 新しい住居地の市区町村役場 | 移転した日から14日以内 |
参考:出入国在留管理庁|氏名や住所の変更があった場合の届出、住居地以外の在留カード記載事項の変更届出
特に、住所変更の届出先は「市区町村の役所」であり、「入管」ではないという点を間違えやすいポイントです。住所変更の手続きが完了すると、在留カード裏面の「住居地記載欄」に新しい住所が記載されます。その他、所属機関(会社や学校)の変更や、配偶者との離婚・死別なども入管への届出が必要な場合があります。
在留カード原本の常時携帯義務と罰則
出入国管理及び難民認定法により、16歳以上の中長期在留者には、在留カードの原本を常に携帯することが法律で義務付けられています。この義務は非常に厳格で、違反には重い罰則が科せられます。
警察官や入国審査官から提示を求められた際には、応じる義務があります。職務質問や交通違反の際など、さまざまな場面で在留カードの提示が求められる可能性があります。
【携帯義務違反や提示拒否に対する罰則】
- 不携帯:20万円以下の罰金
- 提示拒否:1年以下の懲役又は20万円以下の罰金
参考:出入国在留管理庁|Answer (Q1~Q79)<在留カードの常時携帯義務>
スマートフォンのカメラで撮影した画像などでは認められず、必ず「原本」を携帯する必要があります。画像では本人確認ができないため、警察等での手続きにおいて問題となる場合があります。
企業は雇用している外国人に対し、この携帯義務について十分に説明し、法的トラブルを未然に防ぐ必要があります。
まとめ
外国人雇用を適法に行うためには、在留カードの正確な理解と確認が不可欠です。偽造カードの流通や複雑な就労制限により、企業が不法就労助長罪に問われるリスクが高まる現代において、在留カードの見分け方や記載事項の確認方法を習得することが重要です。在留カードの知識を身につけることで、法的トラブルを回避し、安心して外国人材を活用できる職場環境を構築することができるでしょう。