【2025年】外国人雇用で使える助成金・支援制度を詳しく紹介

外国人労働者の雇用を検討している企業にとって、助成金や支援制度は人材確保や育成の大きな後押しになります。しかし、制度の種類や申請条件、手続きの流れが分かりにくく、うまく活用できていないケースも少なくありません。
そこでこの記事では、外国人雇用に活用できる代表的な助成金制度をわかりやすく紹介するとともに、活用時の注意点や成功のコツも解説します。自社に合った制度を見つけ、上手に取り入れるための参考にしてみてください。
目次
外国人雇用における助成金と補助金の基本知識
外国人雇用において活用できる助成金と補助金は、返済不要の給付金である点で共通していますが、その性質には明確な違いがあります。
最も重要な違いは財源にあり、助成金は雇用保険料から拠出され厚生労働省が管轄しているのに対し、補助金は税金から拠出され経済産業省が管轄しています。この違いにより、支援の目的や対象範囲、申請方法も異なります。
外国人雇用を検討する際には、両制度の特徴を理解し、自社に合った支援を選択することが重要です。また、自治体独自の支援制度も存在するため、国の制度と併せて活用を検討するとよいでしょう。
項目 | 助成金 | 補助金 |
定義 | 雇用や労働環境の改善、人材育成などを目的とし、企業や事業主の取り組みを支援するための給付金 | 特定の事業や産業の振興、技術開発などを促進するために交付される給付金 |
財源 | 雇用保険料(事業主と労働者が納める保険料)から拠出 | 税金(一般会計)から拠出 |
管轄省庁 | 厚生労働省 | 経済産業省 |
主な目的 | 雇用の維持・創出、労働者の処遇改善、職場環境の整備 | 産業振興、技術革新、国際競争力の強化 |
対象範囲 | 主に雇用保険適用事業所が対象 | 業種や事業内容によって対象が決定される |
申請窓口 | ハローワークや労働局 | 経済産業局や専用の事務局 |
特徴 | 雇用関連の取り組みに対して支給されることが多い | 設備投資や事業開発など幅広い分野で活用可能 |
外国人労働者雇用に活用できる主要な助成金制度
外国人労働者の採用や雇用を検討する企業にとって、国が提供する助成金制度は経済的負担を軽減する大きな支援となります。
2025年現在、厚生労働省が提供している主要な助成金制度は、それぞれ目的や支給条件が異なるため、自社の状況に合わせて最適な制度を選択することが重要です。
助成金制度名 | 目的 | 対象となる事業主 | 支給額の概要 |
人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース) | 外国人労働者の職場定着のための環境整備を支援 | 雇用保険の被保険者である外国人労働者を雇用する事業主 | 支給対象経費の1/2(上限57万円)、賃金要件達成で2/3(上限72万円) |
人材開発支援助成金(人材育成コース) | 労働者の職業訓練を通じたスキルアップを支援 | 職業訓練を実施する雇用保険適用事業所の事業主 | 企業規模や訓練時間により経費助成30~45%、賃金助成380~760円/時間 |
トライアル雇用助成金(一般トライアルコース) | 就職困難な求職者の試行雇用を支援 | 職業経験の不足する求職者をトライアル雇用する事業主 | 1人あたり月額4万円(母子家庭の母等は5万円)最長3ヶ月 |
キャリアアップ助成金(正社員化コース) | 非正規雇用労働者の正社員化や処遇改善を支援 | キャリアアップ計画を作成し、労働局長の認定を受けた事業主 | コースにより異なる(中小企業で40万円~80万円) |
雇用調整助成金 | 経済上の理由で事業縮小時の雇用維持を支援 | 事業活動の縮小により雇用調整を行う事業主 | 休業手当等の一部(労働者1人当たり8,265円が上限) |
業務改善助成金 | 生産性向上と賃金引上げを支援 | 事業場内最低賃金と地域別最低賃金の差額が30円以内の事業主 | 設備投資等費用の75~90%(生産性向上要件達成で加算) |
参考:厚生労働省|人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)ガイドブック、人材開発支援助成金(人材育成支援コース)のご案内、トライアル雇用助成金(一般トライアルコース)、キャリアアップ助成金のご案内(令和7年度版)、雇用調整助成金、業務改善助成金
人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)
外国人労働者の職場定着を促進するため、就労環境の整備を行う事業主を支援する制度です。外国人特有の事情に配慮した環境整備、たとえば多言語での就業規則の整備や相談体制の構築、日本語学習の支援などが対象となります。
この助成金を活用するには就労環境整備計画を作成し、計画的に実施することが重要です。支給対象となる経費は外部機関へ支払った費用で、外国人労働者の基本賃金が一定期間内に上昇していれば、より高い助成率が適用されます。
参考:厚生労働省|人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)ガイドブック
支給対象となる事業主の条件
この助成金を受給するための主な条件は、雇用保険の被保険者となる外国人労働者(特別永住者および在留資格「外交」「公用」を除く)を雇用し、「外国人雇用状況届出」を提出していることです。また、認定された就労環境整備計画に基づいて就労環境整備措置を実施する必要があります。
過去に同助成金を受給した場合は、最終支給決定日から3年以上経過していることも条件です。さらに、離職者の割合が6%以下であり、計画期間前の6ヶ月間と計画期間中に事業主都合の解雇を行っていないことも求められます。
受給可能な金額と申請から支給までの流れ
本助成金の支給額は、賃金要件の達成状況により異なります。外国人労働者の基本賃金が最も遅い施策実施日から1年以内に5%以上増加している場合は支給対象経費の2/3(上限72万円)、そうでない場合は経費の1/2(上限57万円)が支給されます。
申請から支給までの流れは、まず就労環境整備計画を作成し労働局またはハローワークへ提出します。認定後、計画に基づき外国人労働者の就労環境整備措置を導入・実施し、計画期間終了後の算定期間(12ヶ月間)終了後2ヶ月以内に支給申請を行います。
人材開発支援助成金(人材育成コース)
外国人を含む労働者に対し、専門的な知識や技能を習得させるための職業訓練を実施した場合に、その経費や訓練期間中の賃金の一部が助成される制度です。この助成金は、計画的な人材育成を促進し、外国人労働者のスキルアップと企業の競争力向上を同時に支援します。
対象となる訓練は、職務に関連する専門的なものであり、外国人労働者の日本語能力向上や専門技術習得にも活用できます。
参考:厚生労働省|人材開発支援助成金(人材育成支援コース)のご案内
対象となる訓練と支給条件
対象となる訓練は、OFF-JTやOJTとの併用、eラーニング、通信制など多岐にわたります。訓練を実施するためには、まず「職業訓練実施計画届」を作成し、訓練開始日の1ヶ月前までに提出する必要があります。企業は職業能力開発計画を策定し、従業員に周知するとともに、職業能力開発推進者を選任しなければなりません。
また、適正な賃金支払いや解雇制限などの条件も満たす必要があります。オンライン訓練を実施する場合は、テレワーク制度の導入も求められます。
効果的な申請のポイントと受給額
この助成金の支給額は、企業の規模や訓練時間によって大きく異なります。中小企業の場合、経費助成率は45%、賃金助成は1人1時間あたり760円となります。
eラーニングや通信制による訓練では経費助成のみとなり、訓練時間に応じて10〜50万円の定額が支給されます。賃金要件または資格要件を満たした場合には支給額が加算されます。資格要件とは、訓練終了後1年以内に全対象労働者に対して手当を支払い、毎月の賃金を3%以上増加させることです。
トライアル雇用助成金
職業経験が不足し、就職が困難な求職者を一定期間試用雇用する企業を支援する制度です。この助成金は、無期雇用への移行を前提として、原則3ヶ月間の試用期間中に求職者の適性や能力を見極める機会を提供します。
外国人求職者の採用においても、言語や文化の違いから生じる不安を軽減し、相互理解を深める期間として活用できます。このトライアル期間中、企業はリスクを抑えながら雇用の可能性を検討できるのがメリットです。
参考:厚生労働省|トライアル雇用助成金(一般トライアルコース)
対象となる求職者の条件
トライアル雇用の対象となる求職者は、無期雇用を希望し、トライアル雇用に同意している方で、週30時間以上の勤務を希望していることが条件です。また、ハローワークや民間職業紹介機関に求職申込をしていることも必要です。
さらに、過去2年以内に2回以上離職・転職を繰り返している方や、1年以上就労経験がない方、妊娠・出産・育児で離職し1年以上就労していない方などが対象となります。求職者は紹介日前に正社員として働いていたり、現在トライアル雇用中であったりしてはいけません。
支給額と申請の手続き
トライアル雇用助成金は、対象者1人あたり月額4万円(母子家庭の母または父子家庭の父の場合は月額5万円)が最長3ヶ月間支給されます。申請手続きとしては、まずハローワークや地方運輸局、職業紹介事業者にトライアル雇用求人を提出し、紹介を受けた求職者と雇用契約を結びます。
トライアル雇用開始から2週間以内に実施計画書をハローワークに提出し、トライアル雇用終了日の翌日から2ヶ月以内に支給申請書を提出します。必要書類を正確に準備することで、スムーズな受給が可能となります。
キャリアアップ助成金
キャリアアップ助成金は、非正規雇用労働者のキャリアアップを促進するための制度です。この助成金は、有期雇用労働者や短時間労働者、派遣労働者などを対象に、正社員化や処遇改善の取り組みを行う事業主を支援します。
外国人労働者も対象となりますが、処遇改善支援コースでは全ての外国人労働者が対象である一方、正社員化コースでは外国人技能実習生や特定技能第1号の労働者は対象外となっている点に注意が必要です。
コース名 | 目的 | 対象となる事業主 | 対象となる労働者 |
正社員化コース | 有期雇用労働者等を正社員に転換することを促進 | 有期雇用労働者等を正規雇用労働者に転換または直接雇用する事業主 | 有期雇用労働者、無期雇用労働者、派遣労働者(外国人技能実習生、特定技能第1号の労働者は対象外) |
障害者正社員化コース | 障害のある有期雇用労働者等を正社員に転換することを促進 | 障害のある有期雇用労働者等を正規雇用労働者等へ転換する事業主 | 障害のある有期雇用労働者、無期雇用労働者、派遣労働者 |
賃金規定等改定コース | 全ての有期雇用労働者等の基本給の賃金規定等を増額改定し、処遇改善を図る | 全ての有期雇用労働者等の基本給の賃金規定等を一定割合以上引き上げた事業主 | 有期雇用労働者、無期雇用労働者、派遣労働者(外国人労働者も対象) |
賃金規定等共通化コース | 有期雇用労働者等と正社員との共通の賃金規定等を新たに規定し、適用 | 有期雇用労働者等と正社員との共通の賃金規定等を導入した事業主 | 有期雇用労働者、無期雇用労働者、派遣労働者(外国人労働者も対象) |
賞与・退職金制度導入コース | 有期雇用労働者等に賞与・退職金制度を導入し、適用 | 有期雇用労働者等に賞与・退職金制度を新たに導入し、支給または積立を実施した事業主 | 有期雇用労働者、無期雇用労働者、派遣労働者(外国人労働者も対象) |
社会保険適用時処遇改善コース | 社会保険の適用拡大に伴い、有期雇用労働者等の処遇改善を図る | 社会保険の適用拡大の対象となる労働者の手当支給や労働時間延長等を行った事業主 | 社会保険の適用拡大の対象となる有期雇用労働者等(外国人労働者も対象) |
参考:厚生労働省|キャリアアップ助成金のご案内(令和7年度版)
正社員化支援と処遇改善支援の違い
キャリアアップ助成金における正社員化支援は、有期雇用労働者等を正社員に転換することを促進する制度です。正社員化コースでは有期雇用から正社員への転換に対して、中小企業で80万円(40万円×2期)の助成があります。
一方、処遇改善支援は賃金規定の改定や共通化、賞与・退職金制度の導入など、非正規雇用者の待遇改善を目的としています。処遇改善支援コースは外国人労働者も広く対象となりますが、正社員化コースでは外国人技能実習生や特定技能第1号の労働者、EPA受入れの看護師や介護福祉試験合格前の方は対象外です。
生産性要件を満たすためのステップ
キャリアアップ助成金では、「生産性要件」を満たすことでより高額の助成を受けられます。生産性は「付加価値÷雇用保険被保険者数」で計算され、付加価値は「営業利益+人件費+減価償却費+動産・不動産賃借料+租税公課」から算出します。
助成金申請時の直近会計年度の生産性が、3年前と比較して6%以上向上している場合、または1%以上向上し金融機関から事業性評価を得ている場合に生産性要件を満たしたとみなされます。さらに、その期間中に事業主都合による離職者が出ていないことも条件となります。
雇用調整助成金
雇用調整助成金は、経済上の理由により事業活動の縮小を余儀なくされた際に、従業員の雇用を維持するための制度です。事業主が休業手当を支払ったり、従業員を出向させたりすることで雇用を守る取り組みを支援します。
この助成金は国籍を問わず適用されるため、外国人労働者の雇用維持にも活用できます。経済状況の悪化や事業の見直しなどで一時的に事業活動を縮小する必要がある場合に、解雇を回避するための有効な手段となります。
支給対象となる事業主と支給要件
雇用調整助成金の対象となるのは、経済上の理由により事業活動が縮小し、雇用調整を行わざるを得ない事業主です。具体的には、最近3ヶ月間の生産量や売上高などが前年同期と比べて10%以上減少している必要があります。
また、雇用保険適用事業所であることや、雇用調整の実施について労使間で協定を結んでいることなども条件です。休業等を実施する前に「休業等計画届」を提出することが原則ですが、急な対応が必要な場合には事後提出が認められる場合もあります。
助成額の計算方法と申請手続き
雇用調整助成金の支給額は、休業手当に対して助成率をかけて計算されます。通常、中小企業で2/3、大企業で1/2の助成率ですが、解雇等を行わない場合はそれぞれ3/4、2/3に引き上げられます。
労働者1人1日あたりの上限額は8,265円です。申請手続きとしては、支給対象期間終了後、2ヶ月以内に支給申請書と必要書類をハローワークに提出します。申請書類には、労働者の出勤簿や賃金台帳、休業手当や出向元賃金の支払いを証明する書類などが必要です。審査後、適切と認められれば助成金が支給されます。
業務改善助成金
業務改善助成金は、生産性向上のための人材育成や設備投資等を行い、事業場内の最低賃金(その企業で最も低い賃金)を引き上げる取り組みを支援する制度です。
外国人労働者を雇用する企業にとっては、業務効率化と処遇改善を同時に実現できる有効な助成金です。特に言語や文化の違いを踏まえた作業環境の改善や、コミュニケーションツールの導入などを通じて、外国人労働者の生産性向上と賃金アップを両立させることが可能となります。
活用できる設備投資の種類と対象範囲
業務改善助成金で活用できる設備投資は多岐にわたります。生産性向上につながる機械設備の導入や、業務効率化のためのソフトウェア購入、外部専門家によるコンサルティング、従業員の人材育成・教育訓練などが対象となります。
外国人労働者のための多言語マニュアルの作成や翻訳機器の導入、作業工程の可視化ツールなども含まれます。ただし、事業所の建設や不動産の取得、自動車など汎用性の高い物品の購入、単なる経費削減のための投資などは対象外となるため注意が必要です。
助成率・助成上限額と申請のタイミング
業務改善助成金の助成率は事業場内最低賃金により変わり、地域別最低賃金との差額が30円以内の場合で75~90%となります。生産性の伸び率が一定以上の場合は、より高い助成率が適用されます。申請のタイミングは賃金引上げ計画を策定した後で、実際に賃金を引き上げる前に行います。
申請後、交付決定を受けてから設備投資等を実施し、賃金引上げを行います。支給申請は賃金引上げ後の賃金支払いと設備投資等の費用支払いが完了してから行い、支給決定後に助成金が支給されます。
外国人雇用における助成金活用の注意点と成功のコツ
外国人雇用に関する助成金を効果的に活用するには、いくつかの重要な注意点があります。まず、助成金は原則として後払いであるため、申請から受給までの期間の資金計画をしっかり立てる必要があります。実際に取り組みを実施し、条件を満たしたことが確認された後に支給されるため、当面の資金準備が欠かせません。
また、実態と異なる書類による申請は不正受給となり、助成金の返還だけでなく、今後3年間すべての雇用関係助成金が支給停止となる可能性もあります。申請内容と実際の取り組みに相違がないように細心の注意を払いましょう。
申請における一般的な失敗例としては、提出期限の見落としや条件の誤解、必要書類の不備などがあります。これらを防ぐためには、早めの情報収集と計画的な準備が重要です。必要に応じて社会保険労務士などの専門家に相談することで、申請手続きの負担軽減とともに、受給可能性を高めることができます。
まとめ
外国人雇用における助成金制度の活用は、企業の経済的負担を軽減する強力なサポートとなります。2025年現在、人材確保等支援助成金や人材開発支援助成金などさまざまな支援制度が用意されています。これらを効果的に利用するには、各制度の特徴や申請条件を正確に理解し、計画的に準備を進めることが重要です。助成金は後払いであることや申請期限の厳守など注意点もありますが、専門家のサポートを受けながら適切に活用することで、外国人雇用の課題を乗り越え、多様な人材が活躍できる職場環境の構築に繋がるでしょう。