外国人採用の注意点とは?雇用の流れや必要な条件、面接の留意点を解説
グローバル化の進展により、日本でも外国人材の採用はますます重要なテーマとなっています。少子高齢化による労働力不足を背景に、企業は新たな人材確保の手段として外国人採用を進めていますが、そこには文化や制度面での課題も存在します。採用の流れを正しく理解し、法的要件や在留資格の確認を怠らないことが、トラブル防止と円滑な受け入れにつながります。
本記事では、日本企業における外国人採用の現状や将来性を解説するとともに、メリットとデメリットを整理します。さらに、募集から面接、入社に至るまでの採用フローで押さえるべきポイントや、不法就労を避けるための在留資格チェック、採用後の定着支援策まで幅広く紹介します。外国人採用を検討している企業担当者や人事の方は、ぜひ参考にしてください。
日本企業における外国人採用の現状と将来性

日本国内の外国人労働者数は急激な増加傾向にあり、令和6年10月末時点で2,302,587人となりました。これは前年比253,912人増加(12.4%増)という大幅な伸びを示しており、届出が義務化された平成19年以降で過去最高を更新しています。
国籍別で見ると、ベトナムが570,708人(全体の24.8%)と最多で、続いて中国408,805人(17.8%)、フィリピン245,565人(10.7%)となっています。
在留資格別では、専門的・技術的分野の在留資格が718,812人と初めて最多となり、身分に基づく在留資格629,117人、技能実習470,725人が続いています。業界別では製造業が552,399人で最も多く、サービス業320,755人、卸売業・小売業263,555人の順となっており、人手不足が深刻な業界での外国人採用が顕著に進んでいることがわかります。
このような状況は、少子高齢化による労働力不足を背景に、今後もさらに拡大していくと予測されています。
企業が外国人採用で得られるメリットと認識すべきデメリット

外国人採用は企業にとって多くの利益をもたらす一方で、事前に把握すべき課題も存在します。適切な外国人雇用を実現するためには、これらの両面を理解することが重要です。
| メリット | デメリット |
|---|---|
| ・若手人材の確保と人手不足の解消 ・グローバルな事業展開への貢献 ・社内の活性化と多様性の促進 ・公的支援の活用 ・企業イメージの向上 | ・コミュニケーションの難しさ ・文化・習慣の違いへの対応 ・複雑な雇用手続きと労務管理 ・教育コストと体制整備 ・離職のリスク |
主なメリットとしては、若手人材の確保により人手不足を解消できる点が挙げられます。また、多言語対応によるインバウンド対策や海外進出の足掛かり、異なる価値観がもたらす新しいアイデアの創出も期待できるでしょう。
一方、デメリットでは日本語能力や文化的背景の違いによるコミュニケーション上の問題があります。特に海外ではジョブ型雇用が一般的で、日本の幅広い業務を担当する働き方との価値観の違いへの対応が必要となるのです。
外国人採用の基本的な流れと採用フローごとの留意点

外国人の採用は一般的な採用活動と同様の流れで進みますが、在留資格の確認や手続きなど特有の留意点が存在します。国内在留者と海外在住者では採用期間が異なるため、計画的な進行が重要となるでしょう。
【外国人採用の基本的な流れ】
- ステップ1:求人募集
- ステップ2:選考・面接
- ステップ3:内定と在留資格の確認
- ステップ4:雇用契約の締結
- ステップ5:在留資格の申請・変更
- ステップ6:入社準備と受け入れ
募集方法としては、自社サイトへの掲載、人材紹介会社の活用、既存従業員からのリファラル採用の3つが主要な手段となります。各方法にはコストや手続きの難易度に違いがあるため、企業の状況に応じて選択しましょう。採用にかかる期間は下表の通りです。
【採用にかかる期間の比較】
| 採用フェーズ | 国内在留者の場合(目安) | 海外在住者の場合(目安) |
|---|---|---|
| 募集~内定 | 1~2か月 | 1~2か月 |
| 在留資格申請~入社 | 約1.5~3か月※ | 約4か月 |
| 合計期間 | 約2.5~5か月 | 約5~6か月 |
募集段階|企業が遵守すべき採用基準
求人広告では国籍や人種による差別的な表現を避け、均等待遇の原則を守ることが法的に求められます。労働基準法第三条では、国籍を理由とした労働条件の差別的取扱いが禁止されており、違反した場合は罰則が適用される可能性があります。
【求人広告における表現の注意点】
| NG表記 (避けるべき表現) | 理由 | OK表記 (使用可能な表現) |
|---|---|---|
| 外国人歓迎 | 国籍を理由に採用を優遇することは認められていません。 | 〇〇国籍の方が数多く働いています |
| 〇〇国籍の方限定 | 国籍を理由に採用対象を制限することは認められていません。 | 日本語で日常会話レベルの意思疎通ができる方 |
| 国籍不問 | すべての求人は国籍を問わないことが基本であるため、あえて記載する必要はないとされています。 | 留学生歓迎 |
| 外人・原住民・後進国 | 単語自体が差別的な意味合いを持つため使用を避けるべきです。 | △△免許を持っている方 |
また、賃金や待遇は日本人と同等の条件を提示する必要があります。一部の国では兵役義務があるため、採用後の長期休職を避けるためにも事前確認が不可欠でしょう。
面接段階|的確な候補者見極めのポイント
日本語能力試験の認定レベルは目安にすぎません。実際のコミュニケーション能力は対面での確認が必要となります。N1レベルでも業務上の意思疎通に課題がある場合や、N3レベルでも実務に支障がない場合があるためです。
文化的背景の違いから、応募書類の経歴と実務経験に認識のズレが生じることがあります。たとえば、海外での「プロジェクトリーダー」経験は進行管理のみを指す場合が多いですが、日本では進行管理に加えてメンバーのマネジメントや決裁も含むケースが一般的です。具体的な業務内容を口頭で確認することが重要でしょう。
【候補者の視点を引き出す質問例】
| 質問のテーマ | 質問例 |
|---|---|
| 来日した理由 | ・どのような目的で来日しましたか? ・来日のきっかけを教えてください。 |
| 日本に対する印象 | ・日本にどのようなイメージを抱いていますか? ・日本の良い点、悪い点を教えてください。 |
| 日本で働きたい理由 | ・なぜ日本企業を選んだのですか? ・当社で成し遂げたいことはありますか? |
| キャリアプラン | ・今後も日本を拠点にして活動したいと考えていますか? ・〇年後のキャリアプランを教えてください。 |
【避けるべき質問例(差別やプライバシー侵害にあたる可能性)】
| 質問例 | 避けるべき理由 |
|---|---|
| あなたは〇〇人なので、△△しますか? | 国籍に対するステレオタイプに基づいた、差別的な質問と受け取られる可能性があります。 |
| どのような宗教を信仰していますか? | 業務とは無関係な、個人の信条に関わるプライベートな質問であり、尋ねるべきではありません。 |
| あなたは神を信じていますか? | 宗教に関する質問と同様に、個人の思想信条に深く踏み込む不適切な質問です。 |
上記の質問は、差別やプライバシー侵害にあたる可能性があるため、面接ではNGです。
ただし、宗教など個人情報を直接確認するのではなく、業務上の配慮・安全配慮を目的として必要事項を確認する形に言い換えることで適切に対応できます。
【例】
「勤務にあたって、事前に配慮が必要なことはありますか?」
「社食(または会食)があるのですが、食べられないものやアレルギーはありますか?」
このように、業務に必要な範囲での配慮事項の確認であれば、一般的に問題ない範囲で質問可能です。
内定から入社まで|手続きにおける法的注意点
内定通知の際は、就労可能な在留資格の取得を条件とし、確認できない場合は内定取り消しとなる旨を明確に伝える必要があります。これは不法就労助長罪を防ぐための重要な措置となります。
雇用契約では誤解を防ぐため、可能な限り母国語に翻訳した労働条件通知書を用意しましょう。給与の控除項目である社会保険料や所得税についても、おおよその手取り額とともに丁寧に説明することが求められます。海外では契約書に記載されていない内容は契約していないという考え方が一般的だからです。
海外在住者の場合は在留資格の新規申請、国内在留者でも転職や在留資格の変更手続きが必要になるケースがあります。申請書類の作成や手続きには専門知識が必要なため、人材紹介会社や行政書士によるサポート体制の構築が不可欠でしょう。
【採用の必須知識】在留資格と不法就労のリスク管理

外国人採用において最も重要なのは「在留カード」と「在留資格」の適切な確認です。在留カードは日本に3か月以上滞在する外国人に交付される身分証明書で、就労の可否を判断する重要な手がかりとなります。
企業が確認を怠ると、不法就労助長罪により3年以下の懲役 または 300万円以下の罰金(またはその両方)が科せられる可能性があるため、適切なリスク管理が不可欠でしょう。
【在留カードで確認すべき4つの重要ポイント】
| 確認ポイント | 内容と注意点 |
|---|---|
| 1. 在留カードを所持しているか | ・日本に3か月以上滞在する外国人に交付される身分証明書です。 ・採用前に必ず原本を確認する必要があり、不所持の場合は採用できません。 ・偽造のリスクに備え、出入国在留管理庁が提供するアプリなどで真偽を確認することも有効です。 |
| 2. 就労が認められているか | ・在留カードの表面にある「就労制限の有無」の欄で、就労が可能かを確認します。 ・就労が認められていない在留資格や、認められていても活動内容に制限がある場合があります。 ・「就労不可」と記載があっても、裏面の「資格外活動許可欄」に記載があれば、原則週28時間以内の就労が可能なケースがあります。 |
| 3. 在留期限は有効か | ・在留カードに記載された在留期間の満了日が過ぎていないかを確認します。 ・在留期限が切れている外国人を雇用することは違法行為(不法就労)にあたります。 ・発覚した場合、外国人本人はもちろん、雇用した企業側も不法就労助長罪で罰せられる可能性があります。 |
| 4. 業務内容と在留資格が適合しているか | ・就労可能な在留資格でも、それぞれに認められている職種や業務内容が定められています。 ・例えば、「技術・人文知識・国際業務」の在留資格を持つ人に、単純労働をさせることはできません。 ・自社で任せたい業務が、その外国人が持つ在留資格で許可された活動範囲と一致しているか、必ず確認する必要があります。 |
たとえば、「技術・人文知識・国際業務」の在留資格では専門性が必要な業務のみが認められ、単純労働に従事させることは違法となります。在留期限切れや資格外活動など、企業が不法就労助長罪に問われるケースは多岐にわたるため、慎重な確認作業が求められるのです。
在留カードで就労可否を判断するためのチェックリスト
採用担当者が面接後や内定後に使用できる、実践的なチェックリストを活用することで確認漏れを防げます。特に「就労不可」と記載されていても、裏面の資格外活動許可欄に記載があれば週28時間以内の就労が可能である点は見逃しやすいポイントでしょう。
【在留カード確認 チェックリスト】
| No. | チェック項目 | 確認内容と注意点 |
|---|---|---|
| 1 | □ 原本の確認 | コピーや写真ではなく、必ず原本を手にとって確認しましたか? |
| 2 | □ 偽造の有無 | 偽造の疑いはないですか?(出入国在留管理庁のアプリでICチップ情報を読み取るなど、真偽の確認を推奨します) |
| 3 | □ 在留期限の有効性 | カード表面の「在留期間(満了日)」は過ぎていませんか? 期限切れの場合は雇用できません。 |
| 4 | □ 就労制限の有無 | カード表面の「就労制限の有無」欄の記載内容を確認しましたか? ここで就労の可否を大まかに判断します。 |
| 5 | □ 資格外活動許可の確認 | 表面が「就労不可」の場合、裏面の「資格外活動許可欄」に「許可」の記載はありますか? 記載があれば、原則週28時間以内の就労が可能です。 |
| 6 | □ 業務内容との適合性 | カード表面に記載の「在留資格」の種類で、任せたい業務内容(例:専門職、単純労働など)が許可されていますか? |
国籍の確認は在留資格の確認に必要な範囲に留めることが重要です。選考段階で在留カードの提示を求めると差別と見なされるリスクがあるため、内定後の確認が適切なタイミングとなります。
業務内容と在留資格の適合性を確認する方法
企業の事業内容と採用したい外国人に任せる予定の職務内容が、どの在留資格に該当するかを事前に把握することが重要です。代表的な就労ビザである「技術・人文知識・国際業務」と「特定技能」では、認められる業務範囲に大きな違いがあります。
【在留資格ごとの業務範囲の比較】
| 項目 | 技術・人文知識・国際業務 | 特定技能 |
|---|---|---|
| 主な目的 | 専門的な知識や技術を持つ高度人材の確保 | 特定産業分野における人手不足の解消 |
| 対象となる業務 | 理系・文系の専門知識を活かす業務(例:エンジニア、企画、マーケティング、翻訳・通訳など) | 特定産業分野(介護、建設、製造業など)で即戦力となる技能を要する業務 |
| 学歴・職歴との関連性 | 大学卒業などの学歴や実務経験と、従事する業務との間に関連性が求められる | 業務に関連する技能試験や日本語試験に合格することが求められる |
| 単純労働の可否 | 不可 専門性が不要な単純労働にのみ従事することは認められていません。 | 可 分野ごとに定められた業務範囲内であれば、現場での作業(単純労働と見なされる業務を含む)に従事することが可能です。 |
異動によって業務内容が変更になる場合、在留資格の変更許可申請が必要になる可能性があります。自社での判断が困難な場合は、人材紹介会社や行政書士などの専門家への相談が有効な手段となるでしょう。
採用後の定着を促進する受け入れ体制と人事の役割

外国人採用の成功は採用時点で終わりではありません。むしろ、入社後の受け入れ体制と継続的なサポートこそが、外国人社員の定着と活躍を左右する重要な要素となります。
文化的な背景の違いから生じる課題への対応、法的な手続きの管理、そして信頼できるパートナーとの連携が、外国人社員と企業双方にとって価値ある雇用関係を築く基盤となるでしょう。
文化や価値観の相互理解を深めるための施策
宗教上の理由による食事の制限やお祈り、断食などの習慣への配慮が外国人社員の定着には不可欠です。また、仕事に対する考え方も国によって大きく異なります。
海外では個人の業務範囲が明確で、自分の仕事が終わればすぐに帰宅することが一般的ですが、日本ではチームワークを重視する文化があるため、この違いを理解する必要があります。具体的な取り組みとして、異文化理解や多様性をテーマにした研修の実施が効果的でしょう。
多言語対応のマニュアルやツールの導入により、コミュニケーション障壁を軽減することも重要な施策となります。定期的な面談の機会を設けて外国人社員が抱える悩みやストレスを早期に把握し、解決に繋げることで、文化の違いを乗り越えた良好な職場環境が構築できるのです。
届出義務と在留期間の適切な管理方法
外国人の採用時および離職時には、雇用対策法に基づいてハローワークへの届出が法的に義務付けられています。この届出を怠った場合、企業には30万円以下の罰金が科される可能性があるため、確実な手続き実行が求められます。対象者は日本国籍を持たず、在留資格が「外交」と「公用」以外の人物です。
在留期間の更新は外国人本人が行う手続きですが、企業側も在留期間を把握し、更新時期が近づいたら本人にアナウンスする管理体制の構築が必要となります。更新の3か月前に会社から更新のアナウンスを行うことで、期限切れによる不法就労を防げるでしょう。従業員の在留資格や更新状況を管理するシステムを導入するなど、人事部門での効率的な管理方法の確立が重要です。
信頼できる人材紹介会社や専門家の選び方
自社にノウハウがない場合、外国人採用に強い人材紹介会社や行政書士などの専門家を活用することで、適切な採用活動と継続的なサポートが実現できます。在留資格の手続きや文化的な配慮など、専門知識を要する領域での支援は企業にとって大きなメリットとなるでしょう。
信頼できる人材紹介会社を選ぶポイントとして、国の認可である有料職業紹介事業許可の有無が最も重要です。許可番号がホームページに記載されているかを確認し、紹介実績やサポート内容についても詳しく調査する必要があります。特に、日本語能力が高い人材(N1・N2レベル)の紹介が可能かなど、自社の採用基準に合った会社を選ぶことが成功への鍵となります。厚生労働省の「人材サービス総合サイト」も活用して適正な許可を受けた会社を選択しましょう。
まとめ
労働力不足が深刻化する日本において、外国人採用は企業の持続的成長を支える重要な戦略となります。適切な手続きと受け入れ体制を整備することで、優秀な人材の確保と組織の活性化を同時に実現できます。在留資格の確認や文化的配慮といった基本的なルールを遵守し、専門家のサポートを活用することで、不法就労のリスクを回避しながら効果的な採用活動が可能になります。
外国人採用を成功させることで、企業は人手不足の解消だけでなく、グローバルな事業展開への足がかりや社内の多様性促進といった競争優位性を獲得できるでしょう。