外国人材の離職原因を分析し定着率アップの秘訣を発見
「せっかく採用した外国人スタッフが、また辞めてしまった」——そんな悩みを抱える人事担当者の方は少なくありません。外国人の離職には原因分析が欠かせず、賃金や孤立感、キャリアの見通しなど複数の要因が絡み合っています。本記事では国籍・職種別の傾向を整理し、優先すべき対策の判断材料をお届けします。
外国人材が離職する主な原因は5つ|データで見る傾向と優先すべき対策

外国人材の離職原因を分析すると、賃金・待遇、コミュニケーション・文化の違いによる孤立、キャリアパスの不透明さ、労働条件・労働環境、生活・家族等のストレスなど、複数の調査で挙げられている要因が主なものとして挙げられます。まずは全体像を押さえたうえで、次の見出しから一つずつ詳しく見ていきましょう。
原因①賃金・待遇が日本人と比べて低い
外国人材の多くは、母国の家族への仕送りを目的に来日しており、賃金への期待水準が日本人以上に高い傾向があります。そのため、日本人従業員との待遇差は不満として表面化しやすく、離職の直接的な引き金になりがちです。ヒューマングローバルタレント株式会社らの共同調査(2021年)では、日本で働く外国籍人材の28.0%が入社後1年以内に離職した経験があると回答しています。
この背景には、同一労働同一賃金の考え方が徹底されていない職場が一定数存在することがあります。国籍を理由に基本給や賞与を下げる運用は、外国人従業員の離職原因分析においても真っ先に見直すべきポイントです。昇給ルールを明文化し、日本人と同じ評価基準を適用することが改善の第一歩になります。
原因②職場での孤立・コミュニケーション不足
言語の壁に加え、日本特有の曖昧な指示や「空気を読む」文化により、外国人従業員は意思疎通に苦労し、孤立感を深めるケースが目立ちます。指示の意図が伝わらないまま失敗を繰り返すと、職場への信頼そのものが揺らいでしまいます。
日本政策金融公庫総合研究所の調査では、中小企業の従業員の多くが外国人を雇用することに肯定的である一方、外国人従業員とのコミュニケーションには問題があると考えており、人間関係に問題のあるケースもみられました。また、外国人材とのコミュニケーションが容易な企業ほど定着率が高い傾向がみられていることも指摘されており、コミュニケーション課題は定着を左右する大きな障壁だといえるでしょう。
原因③キャリアアップの見通しが持てない
「この先どうなるか分からない」という将来への不安は、外国人従業員が離職を決意する大きなきっかけになります。特に在留資格の更新時期が近づくと、この先も働き続けられるのか、キャリアの選択肢が広がるのかを強く意識するようになります。
特定技能2号への移行支援や、社内での役職・資格取得のステップを明確に示せていない企業では、優秀な人材ほど早期に見切りをつけてしまう傾向があります。国籍にかかわらずキャリアパスを可視化する仕組みが、長期定着のカギになります。
原因④労働環境・労働時間への不満
面接時に聞いていた条件と、実際の残業時間や休日の少なさとのギャップは、外国人従業員の不信感を強める要因です。「話が違う」と感じた時点で、職場への信頼は急速に失われてしまいます。
求人内容と実態が食い違う運用は、職業安定法の観点からも避けるべきです。業務内容や労働時間、固定残業代の有無を正確に明示し、募集条件を変更した場合はすみやかに求人内容を更新することが求められます。労働時間・休暇への不満は、勤続年数を問わず離職理由の上位を占め続ける項目です。
原因⑤家族と離れた生活によるストレス
母国に配偶者や子どもを残して来日する外国人材は、孤独感を抱えながら働いているケースが少なくありません。在留資格によっては家族の呼び寄せが難しく、長期間離れて暮らすストレスが徐々に蓄積していきます。
さらに、食文化や生活習慣の違いが重なると、心理的な負担はより大きくなります。定期的な帰省の相談に応じる、同郷の仲間とつながれる場を用意するといった配慮が、離職を防ぐ土台になります。
国籍別に見る離職原因の違い|ベトナム、インドネシア、ミャンマーなど主要国籍の傾向

離職の背景にある価値観や優先事項は、国籍によって異なります。日本の外国人労働者を国籍別に見ると、ベトナムが最も多く605,906人(外国人労働者数全体の23.6%)を占めており、次いで中国出身者が431,949人(16.8%)を占めます。ここからは主要国籍ごとの離職傾向を見ていきましょう。
ベトナム出身者が離職しやすい職場環境の特徴
ベトナム人材は自尊心が強く、人前で叱責されることを強く嫌う傾向があります。適切なマネジメントがあれば定着率は高い一方、突然の離職の主な原因の一つに人前での叱責が挙げられ、プライドを傷つけられたと感じた場合に離職につながりやすいとされています。
また、ベトナム人は給与や待遇に対して非常に敏感で、同じ職場での給与格差や残業代の支払い方法への関心が高く、不透明な給与体系や不公平な扱いがすぐに不満につながるとも指摘されています。文化的な違いを事前に理解していないと、コミュニケーションの齟齬から採用後の早期離職に繋がる可能性が高まるという調査結果もあり、個別フィードバックの徹底と明確なキャリアパスの提示が定着のポイントになります。
中国出身者が重視するキャリアと報酬の条件
中国人材は転職をキャリアアップの一環と捉え、会社への帰属意識よりも自身の市場価値を高めることを優先する価値観を持つ人が多い傾向にあります。「会社に属する」という考え方ではなく「自分自身の能力を会社に売っている」と捉える人が多く、決断が早く勤続年数に関わらず離職するリスクがあるため、早期離職や内定辞退には注意が必要です。
一方で、会社はスキルアップ・キャリアアップの場であると考え、昇級志向が強く、どんなキャリアパスが描けるかを重視する傾向もあります。給与条件や昇給ルールを明確に伝え、成長機会を具体的に提示できる企業ほど定着しやすいといえるでしょう。
その他の国籍に共通して見られる離職パターン
インドネシアやミャンマー、フィリピンなど多様な国籍の人材にも、共通した離職パターンが見られます。宗教上の礼拝時間や食事の制約への配慮不足、日本語の壁による細かな誤解の積み重ねが、じわじわと不満を募らせるケースです。
国籍による特性を理解しつつも、根本にあるのは「尊重されている実感が持てるかどうか」という点です。相談窓口の設置、やさしい日本語での指示、生活面のサポートといった基本的な取り組みは、国籍を問わず定着支援の土台になります。
職種別に見る離職原因の違い|製造・飲食・介護の比較

離職の主因は職種によっても異なります。特定技能外国人や外国人労働者を対象とした調査では、製造業・飲食業・介護分野などの職種を問わず、「待遇(給与・休暇など)」「職場環境」「人間関係」「キャリア・将来への不安」などが主な離職理由として挙げられていると報告されており、それぞれ対策の優先順位も変わってきます。
製造業・工場勤務での離職が多い理由
特定技能人材は同一分野内であれば転職が可能なため、待遇や評価への不満がそのまま離職行動に結びつきやすい構造があります。昇給基準が不透明な職場ほど、この動きは加速する傾向にあります。
また、残業や休日出勤に対する価値観の違いも見過ごせません。収入を増やしたい人材と、法令順守を優先する企業側の考え方にズレが生じると、不満が蓄積しやすくなります。評価基準を数値化し、昇給の根拠を丁寧に説明することが離職防止につながります。
飲食・サービス業での早期離職の背景
飲食業界は長時間労働に加え、給与体系や評価制度が曖昧なまま運用されているケースが多く、離職の温床となりやすい業界です。シフトの組み方一つで、生活リズムへの不満が一気に噴出することもあります。
さらに、宗教上の理由による食事制限や礼拝時間への配慮不足が重なると、不満は複合的に膨らんでいきます。求人内容と実際の業務内容にずれがあると、職業安定法上のリスクも生じるため、募集要項は正確に記載し、変更時は速やかに更新する運用が欠かせません。
介護・医療・IT職種での離職原因の特徴
介護業界では、賃金への不満に加えて特徴的な離職パターンが見られます。過去5年間の離職理由は多い順に、①他の職種(介護関係以外)への転職(52.1%)、②賃金への不満(36.3%)、③病気のため(26.8%)、④他の施設への転職(22.3%)となっています。
また、「人間関係」「給与不満」「将来・キャリアへの不安」が離職理由として多く報告されており、多くの施設が「日本人と同等の待遇」を重視しており、報酬の額や労働時間等が日本人職員と同等以上でなければならないことは制度上の要件です。待遇の同等性を確保することが、介護分野における定着の鍵になります。
自社の離職原因を特定するためのチェックリスト

ここまで解説してきた賃金・孤立・キャリアなどの原因のうち、自社にどれが当てはまるかを客観的に把握することが対策の第一歩です。次の3つの質問群で自己診断してみましょう。
「賃金・待遇」が原因かどうかを確認する3つの質問
まずは賃金・待遇面の問題を洗い出してみましょう。以下の質問に「いいえ」が多いほど、賃金・待遇が離職原因になっている可能性が高いといえます。
- 同一労働をしている日本人従業員と、外国人従業員の基本給に不自然な差はないか
- 昇給・昇格のルールを本人に分かる言葉で明示しているか
- 残業代や各種手当を、契約どおり正確に支払っているか
「孤立・職場環境」が原因かどうかを確認する3つの質問
次に、孤立感やコミュニケーション不足を診断してみましょう。日々の職場運営の中で見落としがちなポイントを確認します。
- 悩みを相談できる窓口や担当者を設けているか
- 日本人従業員と外国人従業員が交流する機会を意図的に作っているか
- 指示を出す際、曖昧な表現を避けやさしい日本語を使っているか
「キャリアの見通し」が原因かどうかを確認する3つの質問
最後に、将来性への不安を診断する質問です。将来の道筋が見えないと感じさせていないか、改めて確認してみてください。
- 入社時に将来のキャリアパスを具体的に説明しているか
- 評価基準を明文化し、本人が納得できる形で伝えているか
- 資格取得や特定技能2号への移行に向けた支援制度があるか
離職原因別に優先すべき再発防止策まとめ

特定した離職原因に優先順位をつけて対策を実行することが、限られたリソースを有効に使うポイントです。すぐに着手できる施策と、中長期で整備すべき制度に分けて整理します。
すぐに取り組める施策(コストゼロ〜低コスト)
孤立感やコミュニケーション不足への対策は、比較的低コストで始められるものが多くあります。まずは以下のような施策から着手してみましょう。
- メンター制度を導入し、業務や生活の相談相手を明確にする
- 同郷の社員同士をペアリングし、安心して質問できる関係をつくる
- 月1回程度の定期面談を実施し、小さな不満を早期にキャッチする
- 朝礼や社内報で相互の文化を紹介し合う時間をつくる
いずれも大きな予算をかけずに始められ、外国人従業員の孤立感を和らげる効果が期待できます。
中長期で整えるべき制度・環境づくり
賃金やキャリアに関わる問題は、制度そのものの見直しが必要になるため、中長期的な視点で取り組むことが重要です。評価制度の明確化、キャリアパスの整備、日本語教育支援、住居・生活支援体制の構築などが代表的な施策です。
専門家に相談する場合、登録支援機関への委託費用は外国人1人あたり月額2〜4万円程度、人材紹介会社を利用する場合の手数料は30万〜50万円程度が一般的な相場とされています。自社の体制と照らし合わせ、どこまで内製化し、どこを外部に委託するかを検討しましょう。
2027年4月からは技能実習制度に代わり、育成就労制度が施行される予定です。育成就労制度では、技能実習制度では原則認められなかった本人意向による転籍が一定要件のもとで認められるようになります。転籍のハードルが下がることを見据え、今のうちから定着施策の土台を整えておくことが、これからの外国人材確保において重要になります。
まとめ

外国人従業員の離職原因としては、長時間労働などの労働環境、日本語コミュニケーション、評価・キャリアパスの不透明さ、上司のマネジメントや人間関係などが挙げられており、性別や産業、事業規模などによって傾向が異なることが指摘されています。ベトナム人労働者については、評価制度や給与・キャリアパスの透明性、テトボーナスなどの待遇要素が重要とする解説が複数見られますが、国籍や職種ごとの特徴については公的な統計・研究に基づくものというより、経験則やノウハウレベルの傾向として捉えるのが妥当です。
自社の状況をチェックリストで洗い出し、優先順位をつけて対策を実行することが、外国人 離職 原因 分析を成果につなげる近道です。すぐにできる施策と中長期の制度整備を組み合わせ、無理なく定着支援を進めていきましょう。
外国人 離職 原因 分析についてよくある質問

外国人 離職 原因 分析についてよくある質問
外国人材の離職原因分析に関して読者からよく寄せられる質問をQ&A形式でまとめました。記事全体の要点を振り返る参考にしてください。
外国人従業員の離職率は日本人と比べてどのくらい高いのですか?
外国人労働者の離職率については、業種や在留資格、調査によって結果が分かれており、一律に日本人より高いとは言えません。特定技能人材など一部の統計では日本人より低い離職率を示す例もありますが、入社後1年以内の早期離職が課題となりやすい傾向は指摘されており、早期からの対策が重要です。
外国人材が離職する最も多い理由は何ですか?
業種によって異なりますが、賃金・待遇への不満、孤立感やコミュニケーション不足、キャリアの見通しが持てないことなどが離職理由として挙げられる傾向があります。介護分野では、他職種への転職を選ぶ人が多いという指摘も見られます。
国籍によって離職対策を変える必要はありますか?
はい。価値観や優先事項は個人差や文化的背景によっても異なるため、画一的な対応では効果が限定的になりがちです。ただし、相談窓口の設置や公正な待遇の確保など、共通して有効な基本施策もあります。
離職対策にはどのくらいの費用がかかりますか?
メンター制度や定期面談など低コストで始められる施策もあります。一方、登録支援機関への委託や人材紹介会社の活用といった外部委託を行う場合は、依頼内容や委託先によって費用に幅があるため、事前に見積もりを確認したうえで予算を検討することをおすすめします。
育成就労制度に変わると離職対策はどう変わりますか?
技能実習制度に代わる「育成就労制度」は、2024年6月の改正入管法等の成立によりすでに創設されており、2027年4月1日に施行されます。新制度では、同一機関での一定期間の就労や技能・日本語能力などの要件を満たせば、本人の意向による転籍(職場の移動)が認められます。つまり、待遇や職場環境が見劣りする企業からは人材が流出しやすくなるということです。施行まで1年を切った今、定着支援の体制づくりは「今後の課題」ではなく「今すぐ着手すべき課題」に変わっています。