特定技能の受け入れ人数上限を分野別に解説し採用計画に活かそう
特定技能外国人の採用を検討し始めると、まず気になるのが「何人まで受け入れられるのか」という点ではないでしょうか。実は分野によってルールが大きく異なり、企業ごとの上限がない分野と、常勤職員数に応じた制限がある分野が存在します。本記事では介護・建設分野の人数制限や、国全体で管理される受入れ見込数の仕組みを整理し、採用計画に役立つ基礎知識をお伝えします。
受け入れ人数の上限、企業ごとと分野全体で何が違う?結論から解説します

特定技能1号の受け入れ人数には、実は3つの異なるレイヤーがあります。企業ごとの上限、介護・建設分野特有の制限、そして国全体で管理される分野別の受入れ見込数です。この3つを混同すると採用計画を誤ってしまうため、順を追って整理していきましょう。
基本的に上限なし——ただし一部の分野・業種は例外
特定技能制度は、企業ごとの受け入れ人数について原則として上限を設けていません。特定技能外国人を受け入れる際に、企業ごとの人数制限は原則としてありません。出入国在留管理庁が作成した「特定技能制度に関するQ&A」でも、受け入れ機関ごとの受け入れ数の上限はないと記載されています。技能実習制度のように常勤職員数に応じた細かい人数枠がなく、人手不足に悩む企業にとって心強いポイントです。
ただし、すべての分野が同じルールというわけではありません。建設分野は受入機関(企業)単位の常勤職員数(外国人技能実習生・特定技能1号外国人を除く)が上限であり、介護分野は事業所単位の日本人等の常勤介護職員数が上限です。自社の分野がどちらに当てはまるか、次の一覧で確認してみましょう。
「上限なし」と「制限あり」の分野を一覧で確認
特定技能の対象分野は、2024年の自動車運送・鉄道・林業・木材産業の追加や、2026年の物流倉庫・リネンサプライ・資源循環の追加を経て、元々12業種だったところ、2024年に「自動車運送」「鉄道」「林業」「木材産業」の4分野が追加され…2026年に「物流倉庫」「リネンサプライ」「資源循環」の3分野の追加が決定し、トータルで19分野へ拡がりました。これだけ分野が多いと、自社がどちらに該当するか分かりにくいものです。
以下の表で、企業ごとの人数上限がある分野とない分野を整理しました。
| 区分 | 該当する分野 | 企業・事業所ごとの人数上限 |
|---|---|---|
| 制限あり | 介護、建設 | 常勤職員数を基準に上限あり |
| 制限なし | 製造業、外食業、農業、宿泊業、ビルクリーニング、飲食料品製造業など残りの分野 | 上限なし(国全体の受入れ見込数のみが制約) |
この表からも分かる通り、特定技能19分野のうち企業単位・事業所単位の人数上限があるのは介護と建設だけです。それ以外の分野に該当する企業は、次章で解説する国全体の受入れ見込数の状況に注意を払えば、人数面での大きな制約はないと考えてよいでしょう。
受け入れ人数に制限がある分野のルールを詳しく解説

介護・建設の2分野には、常勤職員数を基準にした受入れ人数の制限があります。ただし介護は事業所単位、建設は受入機関(企業)単位で計算するなど、範囲の考え方に違いがあるため注意が必要です。ここでは具体的な算定ルールと、その他分野にも関わる総数管理の仕組みを見ていきます。
介護分野:事業所の規模(常勤介護職員数)によって上限が変わる
介護分野は事業所単位で上限が決まります。1号特定技能外国人の人数枠は、事業所単位で、日本人等の常勤の介護職員の総数を超えないこととされています。ここでいう日本人等には、EPA介護福祉士や在留資格「介護」保有者なども含まれます。「日本人等」という書き方にある通り、常勤介護職員は必ずしも日本人である必要はありません。要件を満たせば、外国人介護職員も「日本人等の常勤介護職員」に数えられます。
一方で、技能実習生やEPA介護福祉士候補者、留学生、そして特定技能1号外国人自身は常勤介護職員としてカウントされません。企業として60名の常勤介護職員がいたとしても、特定技能外国人を受け入れる事業所の常勤介護職員が10名であった場合、10名が上限になりますという点は見落としやすいので、複数事業所を展開する法人は特に注意しましょう。
建設分野:自社の常勤職員数と同数までが上限
建設分野は事業所ではなく法人単位で人数を計算する点が、介護分野と大きく異なります。特定技能1号として受け入れられる外国人の人数は、受入機関(企業)の常勤職員数が上限となります。この常勤職員数には、「特定技能1号外国人」「技能実習生」は含まれません。
上限が設けられている背景には、工事によって、建設技能者の就労場所が変わるため、現場ごとの就労管理が必要になるという事情や、季節や工事受注状況による報酬変動への配慮があります。複数の現場を掛け持ちする建設業ならではの管理体制が求められているといえます。
全分野共通:業界全体の受け入れ総数には上限が設けられている
介護・建設以外の分野でも、実は上限が存在しないわけではありません。国は分野ごとに5年間の受入れ見込数を定めており、これに達すると新規受け入れが制限される仕組みになっています。受入れ見込数を超えることが見込まれる場合その他必要とされる人材が確保されたと認められる場合には、法務大臣に対し、一時的な在留資格認定証明書の交付の停止を求めることができるとされているのです。
たとえば造船・舶用工業分野では令和6年度からの向こう5年間の受入れ見込数は、最大で3万6,000人であり、これを令和10年度末までの5年間の受入れの上限として運用するとされています。さらに2026年には外食業分野で実際にこの上限に到達し、特定技能「外食業」の在留者数が受入上限(5万人)に達する見込みであることから、2026年4月13日より新規の在留資格許可を原則停止するという措置がとられました。個別企業に上限がない分野でも、国全体の枠が埋まれば新規採用ができなくなるリスクがある点は覚えておきたいところです。詳細は出入国在留管理庁の分野別運用方針でも確認できます。
国全体の受け入れ人数にも上限(分野別目標値)が設定されている

前章で触れた業界全体の受け入れ総数は、正式には「分野別の受入れ見込数」と呼ばれています。ここでは算出方法や上限に達した場合の運用ルール、そして2024年から2025年にかけての制度改正の動きを詳しく見ていきましょう。
分野別の受け入れ見込み数とは何か
受入れ見込数は、各分野の人手不足状況を踏まえて算出される数値です。受入れ見込数=5年後の人手不足数-(生産性向上+国内人材確保)という式で計算され、この数値が事実上の受け入れ上限として運用されます。
2024年4月からの5年間については、各分野の人手不足状況等を踏まえ、2024年4月からの5年間の受け入れ見込数が82万人と大幅に増枠されました。その後、育成就労制度との調整を経て、2026年1月に2027年4月より開始予定の育成就労との関連で人数枠が若干削減され805,700人となりました。上限に達した分野では、法務大臣が在留資格認定証明書(COE)の交付を停止できる仕組みになっており、実際に前章の外食業分野で発動されています。
上限撤廃・見直しの最新動向(2024〜2025年)
2025年12月23日の有識者会議では、育成就労制度と特定技能を合わせた新たな運用方針案が示されました。技能実習に代わる外国人材受け入れ新制度「育成就労」について、制度開始の2027年度~28年度の受け入れ上限を約42万6千人とする素案が提示され、在留資格「特定技能1号」と2027年4月に始まる新制度「育成就労」について、2028年度末までの外国人労働者の受け入れ上限を計123万1,900人とする運用方針がまとめられています。
特定技能単体の枠についても昨年3月に24~28年度の受け入れ上限を82万人としたが、デジタル技術の活用といった生産性向上や国内人材確保を図ることで、上限を約1万4千人減らしたという経緯があり、撤廃ではなく分野ごとの精査と調整が進んでいるのが実情です。実際に2026年4月には外食業分野で新規受入れが一時停止されており、採用計画を立てる際は常に最新の運用方針を確認する姿勢が欠かせません。
自社は何人まで採用できる?確認の手順

ここまでの内容を踏まえ、自社が実際に何人まで特定技能外国人を採用できるのか、3つのステップで確認してみましょう。分野の該当確認から人数算出、採用計画への落とし込みまで順番に見ていきます。
ステップ1:自社の業種が制限対象かどうかを確認する
最初に確認すべきは、自社の分野が企業ごとの人数上限の対象かどうかです。特定技能19分野のうち、事業所や企業単位の人数上限があるのは介護・建設の2分野のみで、介護分野は事業所単位、建設分野は受入機関(企業)単位で、それぞれ所定の常勤職員数を上限としますというルールの対象になります。
それ以外の分野であれば、自社単位での上限を気にする必要はありません。まずは自社が該当する分野の運用要領を確認し、個別の人数上限があるかどうかを把握することから始めましょう。該当しない分野の場合は、次に国全体の受入れ見込数の充足状況をチェックする流れになります。
ステップ2:制限対象の場合は常勤職員数をもとに上限を算出する
介護・建設分野に該当する場合は、常勤職員数を数える作業が必要です。介護分野は事業所単位で日本人等の常勤介護職員数を、建設分野は法人単位で常勤職員数(技能実習生・特定技能1号を除く)を基準とします。
計算例を挙げると、企業として60名の常勤介護職員がいたとしても、特定技能外国人を受け入れる事業所の常勤介護職員が10名であった場合、10名が上限になりますという点は見落としやすいので注意しましょう。建設分野では常勤職員が10人の場合、特定技能1号外国人は10人が上限です。技能実習生は技能実習制度の別の人数枠で管理されます。常勤職員としてカウントできる人・できない人を事前に整理しておくと、算出時の混乱を防げます。
ステップ3:採用計画に落とし込む際の注意点
算出した人数はあくまで上限であり、実際の採用計画にはいくつか注意点があります。以下のポイントを踏まえて計画を立てましょう。
- 国全体の受入れ見込数の充足率は分野によって変動するため、枠が逼迫する前に早めの申請を心がける
- 常勤職員数は退職や増員によって変動するため、上限も変わりうる前提で余裕のある計画を立てる
- 複数事業所を持つ企業は、介護は事業所単位・建設は法人単位と計算範囲が異なるため、拠点ごとに管理方法を整理する
- 登録支援機関に委託する場合、外国人1人あたり月額2万円から4万円程度の費用がかかることも見込んでおく
こうした点を採用計画の初期段階から織り込んでおくことで、後々のトラブルを防ぎやすくなります。
まとめ

特定技能1号の受け入れ人数は、介護・建設分野を除き、企業ごとの一律な上限が原則として設けられていません。ただし介護分野と建設分野には人数制限があり、介護分野は事業所単位で日本人等の常勤介護職員数を基準とし、建設分野は受入れ機関の常勤職員数(技能実習生等を除く)を基準とするなど、計算範囲の違いにも注意が必要です。さらに国全体では分野ごとに受入れ見込数という事実上の上限が存在します。特定技能の受け入れ人数上限を正しく理解するには、自社の分野に該当するルールを確認し、常に最新の運用方針をチェックする姿勢が欠かせません。採用計画に迷ったときは、登録支援機関や行政書士などの専門家に相談することも検討してみてください。
特定技能 受け入れ人数 上限についてよくある質問

特定技能の受け入れ人数上限について読者から寄せられやすい疑問をQ&A形式で整理しました。記事全体の要点を振り返る際にも役立ててください。
特定技能は結局何人まで雇えるのですか?
分野によって異なります。多くの分野では企業ごとの上限はなく、介護・建設分野ではそれぞれ常勤職員数に基づく人数制限がありますが、建設分野は常勤職員数そのものというよりも、受入計画や算定要件に沿って管理される点に留意が必要です。
介護施設で常勤職員が少ない場合、受け入れ人数はどうなりますか?
介護分野では、事業所単位で、日本人等の常勤介護職員の総数を上限として受け入れ可能です。常勤職員が少ない事業所ほど、受け入れられる特定技能外国人の人数も少なくなります。常勤職員を増やすか、複数事業所での配置バランスを見直すとよいでしょう。
建設分野で常勤職員が数名しかいない中小企業でも特定技能外国人を採用できますか?
可能です。建設分野でも人数制限はありますが、上限の考え方は常勤職員数だけでなく、受入計画や常勤職員の人数などの要件に基づきます。常勤職員数を基準に上限が決まるため、常勤職員3人であれば特定技能1号外国人は3人が上限となります。人数が少なくても支援体制や届出義務は発生するため、支援計画や届出などの義務を確実に果たす必要があります。
国全体の上限に達した分野は今後も採用できないのでしょうか?
分野別の受入れ見込数は一定期間の目安であり、見直しや再設定が行われることがあります。既存人材の更新や転職は引き続き可能ですが、採用可否への直接的な影響については所管省庁の最新方針で確認することをおすすめします。
受け入れ見込数はどこで確認できますか?
出入国在留管理庁および厚生労働省・国土交通省など各分野の所管省庁が公表する分野別運用方針・運用要領、告示・資料で確認できます。該当分野の最新の情報もあわせて確認することをおすすめします。