外国人雇用の法律基礎知識を安心して学べる完全ガイド
外国人採用を任されたものの、何から確認すればよいか迷っていませんか。外国人雇用では、労働基準法や最低賃金法といった一般的な労働関連法令に加え、在留カードの確認義務や不法就労助長罪など特有のルールも押さえる必要があります。本記事では、外国人雇用における法律の基礎知識を、初めて担当する人事ご担当者さまにもわかりやすく整理してご紹介します。
外国人雇用で守るべき法律・ルールは大きく2種類ある

外国人を採用する企業が守るべき法律は、大きく2つに分けられます。ひとつは日本人と共通して適用される労働基準法や最低賃金法などの労働関連法令、もうひとつは在留資格の確認や届出など外国人雇用ならではのルールです。まずは全体像を押さえ、次章から順に詳しく見ていきましょう。
日本人と共通して適用される労働関係法令
労働基準法や最低賃金法、社会保険関連の法令は、国籍を問わずすべての労働者に適用されます。労働基準法3条は、国籍を理由とした賃金・労働時間などの差別的取り扱いを禁止しており、外国人だからといって待遇を下げることは認められません。次の章では、これらの法律が実務上どのように関わってくるのか、具体的に解説していきます。
外国人雇用に特有のルール
外国人を雇用する場合は、労働関連法令に加えて、在留カードで就労資格を確認する義務や、確認を怠った際に問われる不法就労助長罪、ハローワークへの外国人雇用状況の届出義務など、外国人雇用ならではのコンプライアンス対応も欠かせません。これらは日本人雇用にはない、特有の注意点です。後の章で、それぞれのポイントを丁寧に解説します。
外国人も日本人と同じ労働法が適用される

外国人だからといって、労働条件を日本人より低く設定してよいわけではありません。労働基準法3条が定める均等待遇の原則により、外国人労働者にも日本人と同じ労働関係法令が適用されます。ここでは、労働時間・賃金・社会保険という3つの観点から確認していきましょう。
労働基準法:労働時間・休日・残業代のルール
労働基準法では、法定労働時間を1日8時間・週40時間と定め、これを超えて働かせる場合は割増賃金の支払いが義務付けられています。休日や有給休暇のルールも同様です。労働基準法3条により、こうした規定は国籍に関わらずすべての労働者に適用されるため、外国人労働者にだけ残業代を支払わない、休日を与えないといった対応は違法となります。
最低賃金法:国籍に関係なく地域の最低賃金が適用される
最低賃金法も国籍を問わず全ての労働者に適用される法律です。技能実習生であっても例外ではなく、地域別最低賃金を下回る賃金設定は違法となります。地域別最低賃金が適用される労働者に対し、地域別最低賃金額以上の賃金を支払わなかった使用者は、50万円以下の罰金に処せられることがあります。「実習生だから」「日本語が不慣れだから」といった理由で賃金を引き下げることは認められません。
社会保険・雇用保険への加入義務
健康保険・厚生年金・雇用保険・労災保険は、国籍に関わらず要件を満たす労働者すべてに加入義務があります。雇用保険の加入基準は、1週間の所定労働時間が20時間以上であること、31日以上の雇用の見込みがあることの2点で、日本人と同様です。ただし留学生アルバイトなど一部は適用除外となる場合があります。未加入のまま働かせると、雇用管理が適正でないと判断され、思わぬ不利益につながるおそれもあるため注意しましょう。
外国人雇用に特有のルール①:在留資格の確認義務

外国人を雇用する際は、労働関連法令の遵守に加えて、在留カードで就労資格を確認する義務があります。これは日本人雇用にはない、外国人雇用特有のコンプライアンス事項です。確認を怠った場合のリスクも含めて、順に見ていきましょう。
在留カードで確認すべき3つのポイント
在留カードでは「在留資格」「在留期限」「就労制限の有無」等を必ず確認しましょう。さらに、予定する業務が資格の範囲内かどうかは、在留資格ごとの活動範囲や指定書等と照合して判断する必要があります。どれか一つでも見落とすと、意図せず不法就労をさせてしまう可能性があります。それぞれの確認方法を詳しく見ていきましょう。
在留資格の種類(就労可能かどうか)
在留カード表面の「就労制限の有無」欄を確認すれば、その外国人が就労できるかどうかがひと目でわかります。「就労不可」と記載されている場合でも、留学や家族滞在などの在留資格では、「資格外活動許可」を出入国在留管理庁から受けている場合、例外的に週28時間までの就労が可能になります。この例外を知らずに採用を諦めてしまったり、逆に許可の範囲を超えて働かせてしまったりしないよう、裏面の許可欄まで必ず確認しましょう。
在留期限が切れていないか
在留カードに記載された在留期間満了日を必ず確認し、期限切れ、いわゆるオーバーステイの状態でないかをチェックしましょう。なお、在留期間の更新申請を行っている場合は、審査中であっても一定期間就労が認められる特例期間が設けられています。期限だけを見て機械的に判断せず、更新手続きの状況も併せて確認すると安心です。
業務内容が在留資格の範囲内か
在留資格ごとに、認められている活動の範囲が定められています。たとえ有効な在留カードを持っていても、実際に従事させる業務がその範囲を超えていれば不法就労にあたるおそれがあります。たとえば「技術・人文知識・国際業務」の資格を持つ人に、単純作業や接客のみを担当させるようなケースは注意が必要です。雇用契約を結ぶ前に、業務内容と在留資格の整合性を必ず確認しましょう。
確認を怠ると「不法就労助長罪」に問われる
在留カードの確認を怠って外国人を不法就労させた場合、企業側が入管法第73条の2の不法就労助長罪に問われる可能性があります。現行の罰則は3年以下の拘禁刑若しくは300万円以下の罰金(又は併科)ですが、2024年6月公布の改正入管法により、2027年4月1日からは5年以下の拘禁刑若しくは500万円以下の罰金(又は併科)へ大幅に引き上げられます。罰則は決して軽くありません。入管法第73条の2第2項では、外国人が不法就労者であることを知らなかった場合でも、在留カードの確認を怠るなどの過失があれば罰則の対象となります。「知らなかった」では済まされないからこそ、採用時のチェック体制を整えておくことが大切です。
外国人雇用に特有のルール②:ハローワークへの届出義務

在留資格の確認に続いて押さえておきたいのが、労働施策総合推進法に基づくハローワークへの外国人雇用状況の届出義務です。雇い入れ時だけでなく離職時にも必要となるこの届出について、手続きの流れと罰則を確認していきましょう。
雇い入れ・離職どちらも届出が必要
外国人雇用状況の届出は、雇い入れ時と離職時の両方で必要です。雇用保険被保険者となる外国人については、雇い入れ時には「雇用保険被保険者資格取得届(様式第2号)」、離職時には「雇用保険被保険者資格喪失届(様式第4号)」を提出すれば、外国人雇用状況の届出を行ったことになります。一方、雇用保険被保険者とならない外国人については、「外国人雇用状況届出書(様式第3号)」を提出しなければなりません。雇用保険加入の有無で使用する様式や提出期限が変わるため、事前に確認しておきましょう。なお派遣社員や派遣アルバイトの場合、外国人雇用状況の届出は「派遣元企業」が行います。
届出を怠った場合の罰則
外国人雇用状況の届出を怠ったり、虚偽の届出を行ったりした場合には、30万円以下の罰金の対象となります。また、法人の代表者・代理人・使用人なども、両罰規定により処罰の対象となります。届出の未提出は不法就労を見逃す原因にもなりかねないため、雇い入れ・離職の都度、忘れずに対応する習慣をつけておきましょう。
採用前に確認しておきたい実務チェックリスト

これまで解説してきた労働関連法令や在留資格確認、届出義務のポイントを、採用担当者がすぐに使えるチェックリストとして整理しました。抜け漏れを防ぐために、採用前後で確認しておきたい事項をまとめましたので、実務にお役立てください。
- 労働条件(賃金・労働時間・休日)が労働基準法・最低賃金法の基準を満たしているか
- 求人票や労働条件通知書の内容が実際の業務内容・賃金と一致しているか(虚偽記載は禁止です)
- 在留カードの原本で就労制限の有無・在留期限等を確認し、在留資格・指定書等と予定業務の内容を照合したか
- 資格外活動許可の有無と、許可されている場合は週28時間以内の就労になっているか
- ハローワークへの外国人雇用状況の届出(雇入れ時・離職時)を忘れていないか
- 社会保険・雇用保険の加入手続きを漏れなく行っているか
社内だけで全てを判断するのが不安な場合は、社労士や登録支援機関、人材紹介会社といった専門家の力を借りるのもひとつの方法です。登録支援機関へ委託する場合の費用は、外国人1人あたり月額2万円から4万円程度が目安とされ、依頼先やサポート範囲によって幅があります。また、人材紹介サービスを利用する場合の手数料は、30万円から50万円程度が一例として挙げられ、サービス内容や契約条件によって変動します。費用と自社の体制を照らし合わせながら、無理のない採用体制を整えていきましょう。
まとめ

外国人雇用には、労働基準法や最低賃金法といった一般的な労働関連法令の遵守に加え、在留カードの確認義務や不法就労助長罪への対策、ハローワークへの届出義務という外国人雇用特有のコンプライアンスが欠かせません。どちらか一方だけでは不十分で、両方をバランスよく押さえることが重要です。採用前後のチェックを徹底し、正しい知識を持って外国人採用に取り組むことが、外国人労働者を守るとともに、自社を法的リスクから守ることにもつながります。
外国人雇用 法律 基礎知識についてよくある質問

ここでは、外国人雇用の法律基礎知識について、初めて担当する人事ご担当者さまが疑問に感じやすい点をQ&A形式でまとめました。実務で迷ったときの参考にしてください。
アルバイトや技能実習生にも最低賃金は適用されますか?
はい。最低賃金法は雇用形態や国籍を問わずすべての労働者に適用されます。技能実習生やアルバイトであっても、地域別最低賃金を下回る賃金設定は違法となるため注意しましょう。
在留カードはコピーを保管しておけば十分ですか?
雇用時には在留カードの原本を確認することが基本です。コピーだけでは偽造や失効に気づけないことがあるため、原本確認に加えて出入国在留管理庁が提供する失効情報の照会なども活用すると安心です。
ハローワークへの届出を忘れていたことに気づいた場合はどうすればよいですか?
気づいた時点で速やかに管轄のハローワークへ相談し、指示に従って届出を行いましょう。放置すると罰則の対象となるおそれがあるため、早めの対応が大切です。
留学生をアルバイトとして雇う際に注意すべきことは?
留学生は原則として就労が認められていないため、資格外活動許可を得ているかを必ず確認しましょう。許可されている場合も、1週間28時間以内という就労時間の上限を守る必要があります。
不法就労だと知らずに雇っていた場合でも罰せられますか?
知らなかったとしても、在留カードの確認を怠るなどの過失があれば処罰の対象となる可能性があります。「知らなかった」では済まされないため、雇用前の確認を徹底しましょう。