外国人採用の助成金種類と要件を一覧で整理
外国人採用にかかるコストを少しでも抑えたい、という声はとても多いです。実は、採用や育成の場面で活用できる助成金制度はいくつか存在していて、うまく使えば費用負担をかなり軽くできます。この記事では、外国人採用・育成に使える助成金の種類を3つに絞って整理し、対象場面・金額・申請要件をわかりやすくまとめました。制度の全体像をざっくり把握したい方は、ぜひ最後まで読んでみてください。
外国人採用・育成で使える助成金は主に3種類

外国人材の採用・育成に関連する助成金は複数あります。それぞれ対象となる場面が異なるため、自社の状況に合わせて選ぶことが大切です。
①キャリアアップ助成金:非正規から正社員に切り替えるときに使える
キャリアアップ助成金は、パートや契約社員などの非正規雇用で働いている外国人を正社員に転換するときに受け取れる助成金です。雇用形態を変えることで、外国人材の定着率アップや戦力化にもつながります。
「せっかく育てた人材に辞められたくない」という場面での活用が特に多く、正社員化のきっかけとしてうまく機能する制度です。外国人の正社員転換・雇用安定を後押しする、代表的な助成金といえます。
②人材開発支援助成金:外国人材のスキルアップ研修に使える
人材開発支援助成金は、外国人を含む労働者にOFF-JT(座学研修)やOJT(職場内訓練)を実施したときに、研修費用や賃金の一部を補助してもらえる制度です。職務に関連する日本語・専門用語研修や業務技能研修は、訓練内容と各コースの要件を満たす場合に対象となり得ます。
採用した外国人材の業務スキルを高めたいケースや、職務上必要な日本語力を強化したいケースで活用を検討できる助成金です。ただし、一般的な生活日本語の研修は対象外となる場合があるため、事前に訓練内容が要件を満たすか確認しましょう。
③雇用調整助成金:経営悪化で雇用を維持するときに使える
雇用調整助成金は、景気の悪化や売上の急減など、事業活動が一時的に縮小した際に従業員を解雇せず雇用を維持するための制度です。外国人労働者も、雇用保険の被保険者であれば対象に含まれます。
採用した外国人材をやむなく解雇しなければならない状況に追い込まれる前に、休業や短時間勤務で雇用を保ちながら助成を受けられます。経営が不安定な時期の「雇用の守り手」として押さえておきたい制度です。
各助成金の対象場面・金額・申請要件

3種類の助成金はそれぞれ対象場面や金額、申請条件が異なります。以下では制度ごとに詳しく見ていきましょう。
キャリアアップ助成金の要件と金額
キャリアアップ助成金は、有期雇用労働者や短時間労働者、派遣労働者などの非正規雇用労働者を正社員化したり、処遇を改善したりした事業主が活用できる制度です。外国人採用における助成金の種類を調べている方にも関係が深く、外国人も対象となり得ますが、在留資格によっては対象外となる場合があります。対象場面・支給金額・申請条件の3つに分けて整理します。
対象となる場面
キャリアアップ助成金(正社員化コース)は、次のような場面で活用できます。
- 有期雇用(契約社員・パート等)で働いている外国人を正規雇用に転換するとき
- 無期雇用の非正規社員を正社員に転換するとき
- 派遣社員を派遣先が正社員として直接雇用するとき
外国人労働者であっても、雇用保険の被保険者であれば対象となり得ます。ただし、正社員化コースでは技能実習生や特定技能1号など、在留資格によって対象外となる場合があります。申請年度の公式Q&Aで対象可否を必ず確認してください。
支給金額の目安
支給額は転換の種類(有期→正規、無期→正規)、対象者の区分(「重点支援対象者」に該当するかどうか)、企業規模によって異なります。また、転換前後6か月の賃金を比較して3%以上増額していることが支給の必須要件です。このほか、派遣から直接雇用に切り替えた場合や、正社員転換制度を新たに就業規則に規定した場合などの加算措置もあります。具体的な支給額・要件は年度ごとに見直されるため、申請前に必ず厚生労働省の公式ページで最新の金額を確認してください。
申請するための主な条件
申請には以下の条件をすべて満たす必要があります。
- 雇用保険適用事業所であること
- キャリアアップ計画をあらかじめ作成・届出していること(転換前に届出が必要)
- 転換前に6ヶ月以上、有期雇用で継続して雇用していること
- 転換後も6ヶ月以上継続して雇用し、給与を支払っていること
- 転換日の前後6ヶ月に解雇等を行っていないこと
「キャリアアップ計画の事前届出」を忘れると受給できなくなるため、正社員化を決めたら早めに手続きを進めることが大切です。
人材開発支援助成金の要件と金額
人材開発支援助成金は、外国人材のスキルアップや日本語研修に使いやすい制度です。コースが複数あるため、自社の研修内容に合ったコースを選ぶのがポイントです。
対象となる場面
人材開発支援助成金には複数のコースがあり、外国人採用の場面でよく使われるのは以下です。
- 人材育成支援コース:OFF-JT(外部研修・座学)やOJT(職場内訓練)を実施するとき
- 障害者職業能力開発コース:障がいのある外国人労働者への職業訓練(該当する場合)
具体的には「採用した外国人への日本語研修」「技能実習修了後の特定技能移行に向けたスキルアップ研修」「業務に必要なITスキル研修」などが対象となることが多いです。
研修はあらかじめ計画を立て、訓練開始前に届出を済ませる必要があります。
支給金額の目安
人材育成支援コース(OFF-JT)の助成額の目安は以下の通りです(2024年度時点)。
| 区分 | 中小企業 | 大企業 |
|---|---|---|
| 訓練費用の助成率 | 訓練内容や要件に応じて30〜75% | 訓練内容や要件に応じて15〜60% |
| 賃金助成(1人1時間あたり) | 760円 | 480円 |
OJTを含む訓練を実施した場合は、「OJT実施助成」として、1人1コースあたり中小企業は10万円または20万円、大企業は9万円または15万円の定額助成が支給されます。OFF-JT部分については別途、1人1時間あたりの賃金助成が支給される仕組みです。外国人採用に活用できる助成金の種類によって受け取れる金額や条件が異なるため、詳細は厚生労働省の人材開発支援助成金ページの最新リーフレットをご確認してみてください。
申請するための主な条件
申請にあたっての主な条件は以下の通りです。
- 雇用保険適用事業所であること
- 訓練開始日の前日までに訓練計画届をハローワーク等に提出していること
- 訓練は業務命令として行われ、訓練中も通常の賃金が支払われること
- OFF-JTの場合、1コース10時間以上の訓練であること
- OJTを実施する場合は、担当する指導員(ジョブ・カード作成アドバイザー)の関与が必要なコースもある
「訓練計画届の事前提出」が必須で、研修を始めてから申請しようとしても受付されません。研修の実施を決めたら、まず届出を最優先に動いてください。
雇用調整助成金の要件と金額
雇用調整助成金は、経営の悪化で雇用を維持したい場面で使う制度です。外国人労働者も対象になるため、いざというときのために内容を把握しておきましょう。
対象となる場面
雇用調整助成金は、景気の変動や経済的な理由によって事業活動が縮小し、雇用を維持するために以下のような措置をとったときに支給されます。
- 一時的に従業員を休業させる(休業手当を支払う)
- 教育訓練を実施する(通常の業務ができない期間に研修を行う)
- 出向させる(他の企業に一定期間出向させ、雇用を継続する)
外国人労働者が対象となるのは、雇用保険の被保険者である場合です。特定技能外国人など雇用保険に加入している外国人材であれば、日本人と同じ条件で助成を受けられます。
新型コロナウイルスの流行時に大幅に拡充されたことで認知度が上がりましたが、通常期でも活用できる制度です。
支給金額の目安
人材育成支援コースの助成額の目安は以下の通りです。 項目 内容 助成率(休業・教育訓練) 中小企業:2/3、大企業:1/2 1人1日あたり上限額 8,870円 ※毎年8月に改定の可能性あり 教育訓練加算 1人1日あたり1,200円 支給限度日数 1年間100日、3年間150日
※累計支給日数が30日に達した後は、教育訓練の実施率に応じて助成率が段階的に変動します。最新の上限額・助成率は厚生労働省の人材開発支援助成金ページで必ず確認してください。
申請するための主な条件
雇用調整助成金の申請には、以下の条件を満たす必要があります。
- 雇用保険適用事業所であること
- 売上高や生産量など事業活動を示す指標の最近3か月間の月平均値が、前年同期比で10%以上減少していること
- 雇用保険被保険者数等が前年同期比で一定以上増加していないこと(中小企業:10%超かつ4人以上、大企業:5%超かつ6人以上の増加がないこと)
- 実施する休業等について、事前に労使協定(労働組合がない場合は労働者代表との書面協定)を結んでいること
- 休業等の実施前に「計画届」を労働局またはハローワークへ提出していること(事前提出がないと支給されません)
- 休業手当を法定通りに支払っていること(最低でも平均賃金の60%以上)
- 支給申請は、判定基礎期間(賃金締切期間)の末日の翌日から2か月以内に行うこと
このほか、過去に受給したことがある場合は前回の対象期間終了から1年を超えている必要があります。「売上減少を示す書類」や「労使協定書」「出勤簿・賃金台帳」など必要書類が多い制度のため、初めて申請する場合は社会保険労務士などの専門家に相談しながら進めると安心です。
外国人採用で助成金を申請するときの注意点

助成金制度は活用できれば大きな助けになりますが、手続きや仕組みを知らずに動くと受給を逃してしまうことも。よくある落とし穴を2つ確認しておきましょう。
助成金は「後払い」なので事前の費用負担が必要
本記事で紹介する雇用関係助成金は、取組や賃金支払い後に支給申請を行うものが中心であり、事前の資金負担が必要です。
たとえば正社員化コースであれば、転換して6ヶ月分の賃金を支払い終えた後に申請し、さらに審査を経て支給されます。申請から入金まで数ヶ月かかることも珍しくないため、「助成金が入ったら費用を払おう」という考え方では対応できません。
採用費・研修費・人件費はいったん自社で立て替えることが前提です。資金繰りの計画に助成金を組み込む際は、受給時期がズレることを念頭に置いておいてください。
申請のタイミングを逃すと受給できない
助成金には制度ごとに「事前届出」と「申請期限」の両方が設けられています。どちらかを守れなかった場合、受給資格そのものがなくなってしまいます。
特に注意が必要なのが「事前届出」です。キャリアアップ助成金ではキャリアアップ計画の提出、人材開発支援助成金では訓練計画届の提出が、いずれも実施前に必要です。研修や転換を先に進めてしまうと、後から届け出ても対象外となります。
また、支給申請にも期限があり、期限を1日でも過ぎると不受理になります。申請スケジュールを整理したうえで、余裕をもって動くことが大切です。社会保険労務士などの専門家に依頼すると、スケジュール管理がぐっとラクになります。
自社に合った助成金を選ぶための3つのポイント

「どの助成金を使えばいいかわからない」という声はとても多いです。制度の選び方に迷ったときは、以下の3つの視点で整理してみてください。
① 今、どの場面にいるかを確認する
助成金はそれぞれ「使える場面」が決まっています。採用した外国人をこれから育成するフェーズなのか、非正規で雇用中で正社員化を考えているのか、はたまた経営が苦しくて雇用を守りたいのかによって、選ぶべき制度が変わります。まずは自社の状況を言語化してみましょう。
| 場面 | 向いている助成金 |
|---|---|
| 非正規→正社員に転換したい | キャリアアップ助成金 |
| 研修・スキルアップをしたい | 人材開発支援助成金 |
| 経営悪化で休業させたい | 雇用調整助成金 |
② 申請条件を事前に照らし合わせる
助成金には細かい要件があり、「うちは対象外だった」というケースも少なくありません。特に「雇用保険への加入」「事前届出の有無」「継続雇用期間」は必ずチェックが必要な項目です。要件を確認せずに動き始めると、手間だけかかって受給できないという事態になりかねません。
③ 複数の制度を組み合わせることも考える
助成金は1つだけ使うものではなく、状況に応じて複数を組み合わせることができます。たとえば、採用した外国人を非正規で雇い入れ、まず人材開発支援助成金(有期実習型訓練)で研修費の補助を受け、その後キャリアアップ助成金を活用して正社員に転換する、といった流れも可能です。この場合、訓練修了者は「重点支援対象者」に該当するため、正社員化の助成額が満額(中小企業80万円)の対象になるメリットもあります。 ただし、同一の経費や賃金に対して複数の助成金を重複して受給することはできません。また、助成金の申請書類の作成・提出を代行できるのは社会保険労務士(または弁護士)に限られます。複数の制度を並行して使う場合は手続きが複雑になりやすいため、社会保険労務士、あるいは社労士と連携体制のある登録支援機関への相談をおすすめします。
特定技能外国人の受け入れを検討している場合は、受け入れ支援と助成金の情報提供を合わせて相談できる登録支援機関を選ぶと、手続き全体がスムーズになります。
まとめ

外国人採用・育成に活用できる主な助成金は、「キャリアアップ助成金」「人材開発支援助成金」「雇用調整助成金」の3種類です。それぞれ対象場面が異なるため、自社の状況に合った制度を選ぶことが大切です。
どの制度も「事前届出」が必要で、後払い方式であることを忘れずに。申請タイミングを逃すと受給できなくなるため、実施前の準備が何より重要です。
助成金をうまく活用しながら外国人材の採用・定着を進めたい方は、FMS(フィールドマーケティングシステムズ)への相談も選択肢のひとつです。制度の選び方から申請サポートまで、まとめて相談できる体制を整えておくと、費用面の不安がぐっと和らぎます。
外国人採用 助成金 種類についてよくある質問

外国人を雇った場合、日本人と同じように助成金を申請できますか?
はい、外国人でも制度ごとの要件を満たせば申請できます。ただし、申請できる助成金の種類や条件は制度によって異なります。たとえば、人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)は、雇用保険被保険者となる外国人労働者(特別永住者および在留資格「外交」「公用」を除く)を雇用している事業主が対象です。キャリアアップ助成金は有期雇用労働者や短時間労働者などの非正規雇用労働者が対象となっており、雇用調整助成金は経済上の理由で事業活動を縮小した事業主が休業等を行う場合に利用できる制度です。外国人採用で使える助成金の種類はさまざまあるため、それぞれの制度の要件をしっかり確認しておきましょう。
助成金の申請はいつすればいいですか?
制度によって必要な事前手続の内容が異なります。キャリアアップ助成金はキャリアアップ計画の提出が必要で、人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)は就労環境整備計画を作成・提出したうえで、計画期間は3か月以上1年以内と定められています。雇用調整助成金は休業等の実施要件に応じた申請手続が必要です。「申請すればいつでも大丈夫」と思っていると受給できなくなるケースもありますので、利用したい制度の手続きの流れは早めに確認しておくと安心です。
中小企業でも申請できますか?
はい、外国人採用に活用できる助成金の種類はいずれも中小企業を含む事業主が利用できます。ただし、対象は中小企業だけに限定されているわけではありません。たとえば、人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)は雇用保険被保険者となる外国人労働者を雇用している事業主が対象となっており、企業規模を問わず申請できます。また中小企業の場合は助成率や支給額が大企業より優遇されているケースが多いため、積極的に活用してみてください。
複数の助成金を同時に申請することはできますか?
条件を満たせば、異なる制度を組み合わせて申請できる場合があります。たとえば、研修に対して人材開発支援助成金を使い、その後の正社員転換についてキャリアアップ助成金を申請するといった活用方法です。ただし、同一の費用や同一の取組に対する重複申請はできないため、それぞれ対象経費と対象措置を明確に分けて整理する必要があります。外国人採用で使える助成金の種類を組み合わせる際は、費用の対応関係をきちんと確認しながら進めましょう。
助成金を申請するのに、専門家への依頼は必須ですか?
必須ではありませんが、書類の種類が多く、期限管理も細かいため、初めての場合は社会保険労務士への相談をおすすめします。助成金の申請実務は主に社会保険労務士が担当する領域で、外国人材の在留資格や入管手続については登録支援機関がサポートを行います。特に外国人材の受け入れと同時進行で申請を進める場合、それぞれの専門家にサポートしてもらえるとスムーズに進めやすいでしょう。