特定技能の飲食料品製造 業務範囲を丸ごと理解できるガイド
人手不足に悩む食品製造の現場で、特定技能「飲食料品製造業」の活用が広がっています。ただし、任せられる業務範囲を誤ると、在留資格の取消しなど重大なリスクにつながりかねません。なお、飲食店での接客やレジ打ちなどは、同じ特定技能でも「外食業」分野の対象業務となり、飲食料品製造業とは別の区分です。この記事では、飲食料品製造業で許可される業務とNGとなる業務の境界線を公的資料に基づいて具体的に解説し、現場の業務設計にそのまま役立てられる視点をお届けします。
特定技能「飲食料品製造業」でできる業務・できない業務【一覧まとめ】

特定技能「飲食料品製造業」の外国人材に任せられる業務は、食品の製造・加工と、それに伴う安全衛生の確保が中心です。飲食料品製造業全般(飲食料品(酒類を除く。)の製造・加工及び安全衛生の確保)という枠組みのもと、原料の処理から製品検査、清掃や衛生管理まで、製造ラインに関わる幅広い作業を任せられます。
一方で、レジ打ちや接客等の販売業務、自ら製造・加工した食料品以外の商品の陳列、品出し(補充業務)等は一切行うことはできません。また、関連業務だけを専属で担当させることも認められていません。まずは全体像を対比表で確認し、詳しい判断基準は次の見出し以降で解説していきます。
| 区分 | 具体的な業務内容 |
|---|---|
| できる業務 | 原料の処理・加熱・殺菌・成形・乾燥などの製造加工/原材料受入から最終製品までの品質チェック・検査/機械の安全確認や作業者の衛生管理/HACCPに沿った衛生管理/主たる業務に付随する原料調達・製品納品・清掃・事業所の管理作業 |
| できない業務 | レジ打ちなどの接客・販売業務/自社で製造していない商品の陳列・品出し/関連業務のみへの専従/製造と無関係な管理・監督業務(1号の場合) |
表だけではイメージが掴みにくいという方も多いと思いますので、次の章から順番に詳しく見ていきましょう。
そもそも特定技能「飲食料品製造業」とはどんな在留資格か

特定技能「飲食料品製造業」は、2019年に人手不足解消を目的として創設された在留資格の一分野です。酒類を除く食品全般の製造・加工と安全衛生の確保を担う人材を想定しており、1号・2号の区分があります。ここでは対象業態と技能実習との違いを整理していきましょう。
対象となる9つの業態
飲食料品製造業分野の対象は、日本標準産業分類に基づく業態に限られています。業務範囲=9業態(食料品製造業、清涼飲料、茶・コーヒー、製氷、菓子小売、パン小売、豆腐・かまぼこ等、総合スーパー食品部門、食料品スーパー食品部門)として整理されており、自社がどの区分に当たるかを確認することが受け入れの第一歩です。総合スーパーや食料品スーパーは、食料品製造を行うバックヤードに限り対象となります。なお、酒類製造業、各種商品小売業(細分類 5621 を除く)、飲食料品小売業(細分類5811,5861,5863,5896 を除く)、飲食料品卸売業、塩製造業、医薬品製造業、香料製造業、ペットフードの製造は対象外となるため、事前の確認が欠かせません。
技能実習との主な違い
技能実習は国際貢献を目的とした制度で、担当できる作業が職種・作業ごとに細かく決められています。特定技能は人手不足解消を目的としており、飲食料品製造業全般という広い括りで業務を任せられる点が大きな違いです。在留期間も異なり、特定技能1号は、食品製造現場における実務作業を中心に従事する在留資格であり、通算5年間の在留が可能です。さらに特定技能2号は、在留期間は更新制限がなく、要件を満たせば永続的に在留できる点が大きな特徴です。技能実習より柔軟に業務を組み立てられる分、受け入れ企業側が業務範囲を正しく理解しておく必要があります。
許可されている業務範囲(OKな作業)

許可業務の中心は「飲食料品(酒類を除く)の製造・加工及び安全衛生の確保」です。ここでは原料処理から検査、清掃衛生管理、そして付随業務まで、現場で任せられる具体的な作業を順番に確認していきましょう。
原料処理・加工・製品製造
「飲食料品(酒類を除く。) の製造・加工」とは、原料の処理、加熱、殺菌、成形、乾燥等の一連の生産行為等をいいます。畜産・水産加工、パンや菓子の製造、惣菜や弁当の製造など、幅広い食品分野の中核工程がこれに当たります。ただし、単なる選別、包装(梱包)のみの作業を行う行為は、製造・加工には当たりません。この線引きは現場の業務設計で見落としやすいため、あらかじめ工程表で確認しておくと安心です。
製品の品質チェック・検査
製造工程には、原材料の受入検査から最終製品の検査まで、品質チェックの工程が欠かせません。こうした検品・品質チェックは公式FAQで「関連業務」と整理されており、製造・加工を主たる業務として行う中で付随的に任せられる作業の一つです。ただし、検品等のみに専従させることはできない点に注意しましょう。実際の技能測定試験でも、主な食中毒菌や異物混入に関する基本的な知識・技能や、食品等を衛生的に取り扱う基本的な知識・技能が問われており、検査や品質管理は特定技能人材に期待される専門性の一つといえます。
清掃・衛生管理(HACCPを含む)
「安全衛生の確保」とは、使用する機械に 係る安全確認、作業者の衛生管理等、業務上の安全衛生及び食品衛生の確保に 係る業務をいいます。2021年6月からはすべての食品等事業者にHACCPに沿った衛生管理が義務付けられており、特定技能外国人にもこの手法への対応力が求められます。当該試験は、飲食料品製造業分野における業務に関して、食品等を衛生的に取り扱う基本的な知識を有しており、飲食料品の製造・加工作業について、特段の育成・訓練を受けることなく、直ちにHACCPに沿った衛生管理に対応できる程度の業務に従事できるレベルであることを認定するものであり、技能測定試験でもこの専門性が確認されます。
許可業務に「付随する」関連作業とは
主たる製造・加工業務に従事する日本人が通常担当している関連業務には、付随的に従事することが認められています。当該業務に従事する日本人が通常従事することとなる関連業務に付随的に従事することは差し支えありません。関連業務に当たり得るものとして、例えば、次のものが想定されます。(1)原料の調達・受入れ (2)製品の納品 (3)清掃 (4)事業所の管理の作業ただし、専ら関連業務に従事することは認められません。あくまで製造・加工業務が主軸である体制を維持することが大切です。
認められない業務範囲(NGな作業)

許可業務と対比すると、NGとなる業務の輪郭がより明確になります。ここでは製造と無関係な販売業務、管理職への専従、そして判断に迷いやすいグレーゾーン事例を順に確認していきましょう。
製造業務と無関係な作業(接客・販売など)
レジ打ちや接客といった販売業務、自社で製造していない商品の陳列や品出しは、特定技能「飲食料品製造業」では一切認められていません。飲食料品製造業分野の特定技能外国人が就労できるのは食料品製造部門のバックヤードに限っており、レジ打ちや接客等の販売業務、自ら製造・加工した食料品以外の商品の陳列、品出し(補充業務)等は一切行うことはできません。特に総合スーパーや食料品スーパーのバックヤードで就労させる場合は、「総合スーパーマーケット又は食料品スーパーマーケットにおける特定技能外国人の従事する業務に関する誓約書」を送付してください。という手続きが必要になる点も押さえておきましょう。
管理職・監督業務への従事
特定技能1号は現場での実務作業を中心に担う在留資格であり、製造現場での実務作業が中心であり、販売業務や接客業務は対象外です。管理・監督業務は本来の対象ではありません。一方、特定技能2号は熟練した技能を要する業務に従事することが前提のため、2号特定技能外国人は、事業所責任者(工場長等)が行う飲食料品製造業全般に関する管理業務を補助することを前提に雇用していただくことになりますので、役職等を命じ、業務に従事させる必要があります。1号と2号では役割が大きく異なるため、どちらの区分で受け入れるかによって任せられる業務も変わってきます。
判断に迷いやすいグレーゾーン事例
プロセスセンターやセントラルキッチンなど、現場担当者が判断に迷いやすいケースも少なくありません。小売業者や卸事業者等向けに納品する食品を製造・加工する事業所(いわゆるプロセスセンター)は、対象です。また、外食業の店舗での調理に代わり、料理品及び原材料の製造・加工をしている事業所(いわゆる集中調理施設、セントラルキッチン)は飲食料品製造業分野の対象となりますが、外食店舗と同一敷地内にある場合は対象外になるなど条件があります。精肉・食鳥処理や卵の包装についても、洗浄や消毒が行われない事業所(選別や包装のみのパッキングセンター)は対象外です。といったように、洗浄・消毒の有無や売上構成によって対象可否が変わるため、個別に確認しましょう。
現場の業務設計に使える「割り当て可否チェック」の考え方

迷う場合の相談先の一例として、登録支援機関や人材紹介会社があります。ただし、委託費用や紹介手数料は事業者や契約内容によって変動するため、事前に見積もりで確認することが必要です。
「主たる業務」と「付随業務」の区別ポイント
特定技能外国人が従事する活動は、在留期間中の働き方全体を通して判断されます。1号特定技能外国人は、試験等で立証されたこれらの能力を用いて幅広い業務に従事する必要があります。製造・加工を中心としながら、関連業務を組み合わせる形が基本です。パック詰めや検品、運搬といった業務についても、関連業務であるパック詰め、検品、箱詰め、運搬業務に専ら従事することはできません。ただし、特定技能外国人と同じ業務に従事する日本人が関連業務として付随的に従事しており、この日本人従業員と同程度であれば、従事することは差し支えありません。という基準で線引きしましょう。
シフト・役割分担へ落とし込む手順
実際の配置に落とし込むには、まず現場の業務内容をすべて洗い出し、製造・加工に関わる作業とそれ以外の関連業務に仕分けます。次に1週間や1か月単位で主従の比率を確認し、関連業務だけに偏った時間帯が生まれていないかをチェックしましょう。最後に、雇用契約書や職務記述書に記載した業務内容とシフト表の実態がずれていないか確認します。判断に迷う場合は、登録支援機関(委託費用の相場は外国人1人あたり月額2万円から4万円程度)や人材紹介会社(紹介手数料の相場は30万円から50万円程度)に相談すると、実務に即した助言を得やすくなります。
業務範囲を逸脱した場合のリスク

許可された業務範囲を超えて特定技能外国人を就労させることは、資格外活動に該当するおそれがあります。特定技能制度では、分野ごとに定められた業務以外の業務を行った場合、在留資格の取消や退去命令などの処分の対象となる可能性があります。本人だけでなく、受け入れ企業側にも重い責任が及びます。受け入れ企業においても、指導や勧告、罰金などの対象となる場合があります。
さらに対象外の業務に従事させた場合、在留資格の取り消しや企業の受け入れ停止処分につながる可能性があります。これにより在留期間の更新が認められなくなれば、時間をかけて育成した人材を失うことにもなりかねません。
こうした事態を防ぐためには、採用の段階から業務範囲を正確に把握し、契約書や職務記述書に業務内容を具体的に記載しておくことが欠かせません。日頃から本人とコミュニケーションを取り、担当業務について認識のずれがないか確認する姿勢も大切にしましょう。
まとめ

特定技能「飲食料品製造業」で任せられる業務は、原料の処理・調合、製造・加工、品質管理・衛生管理といった製造工程が中心です。日本人が通常従事することとなる関連業務については付随的に従事させることも認められていますが、専らその業務に従事することは認められていません。
一方で、販売業務や接客など、飲食料品製造業の関連業務のみに専従することは対象外です。また、管理的な業務に就かせる場合も、特定技能1号の本来業務の範囲を外れない設計が必要です。正確な業務設計は、法令遵守だけでなく、外国人材が安心して長く働ける職場づくりにもつながります。判断に迷う場合は、専門家や外国人採用支援サービスへの相談も検討してみましょう。
特定技能 飲食料品製造 業務範囲についてよくある質問

ここでは、特定技能「飲食料品製造業」の業務範囲について、採用担当者からよく寄せられる疑問にお答えします。受け入れ準備の最終チェックとしてご活用ください。
スーパーマーケットのバックヤードは対象になりますか。
総合スーパーマーケットや食料品スーパーマーケットが、バックヤードで自ら食料品製造を行う場合に限り対象です。ただし就労できるのは製造部門のみで、レジ打ちや接客、自ら製造していない商品の陳列・品出しはできません。
プロセスセンターは対象になりますか。
小売業者や卸事業者向けに納品する食品を製造・加工する、いわゆるプロセスセンターは対象となります。精肉加工や水産物加工、惣菜製造などを行う事業所が該当します。
外食業のセントラルキッチンは対象になりますか。
外食店舗での調理に代わり、料理品や原材料の製造・加工を行う集中調理施設は対象です。ただし外食店舗と同一敷地内にある場合は同一事業所とみなされ、対象外となります。
パック詰めや検品業務だけを担当させることはできますか。
パック詰めや検品、箱詰め、運搬は関連業務にあたるため、これらのみに専従させることはできません。製造・加工業務を主として担当させたうえで、付随的に従事させる必要があります。
卵の包装(パック詰め)は対象になりますか。
卵を洗浄・消毒したうえで選別・包装し、小売業者や卸事業者向けに納品する事業所(GPセンター)は対象です。洗浄・消毒を行わず選別や包装のみを行う事業所は対象外となります。