特定技能の受け入れ失敗はなぜ起きる?原因と改善策
特定技能外国人を採用したのに、思っていたより早く辞めてしまった、現場がうまく回らない——そんな経験をお持ちではないでしょうか。実は、受け入れの失敗には共通したパターンがあります。この記事では、特定技能の受け入れが失敗する主な原因を4つに整理し、それぞれの具体的な要因と対策をわかりやすく解説します。次の採用をうまく進めるためのヒントとして、ぜひ参考にしてみてください。
特定技能の受け入れが失敗する主な原因は4つ

特定技能外国人の受け入れがうまくいかないとき、その背景にはたいてい同じような問題が潜んでいます。多くの企業の事例を見ていくと、失敗の原因は大きく次の4つに分類できます。
- 受け入れ前の準備が足りていない
- 入社後のサポートが形だけになっている
- 日常のコミュニケーションが取れていない
- 仕事内容が本人のスキルと合っていない
これらは単独で起きることもありますが、いくつかが重なって問題を大きくするケースも少なくありません。それぞれの原因について、次のセクションから順番に見ていきましょう。自社の状況と照らし合わせながら読んでいただくと、課題が見えやすくなるはずです。
原因①:受け入れ前の準備が足りていない

「とりあえず採用して、あとは現場でなんとかなる」という感覚で進めてしまうと、入社直後からトラブルが連発します。受け入れ前の準備不足は、後から取り返しがつかない問題になりやすいので注意が必要です。
業務内容や条件のすり合わせが不十分だった
採用前の段階で、担当する業務の内容・勤務時間・給与・住環境などについて、外国人本人としっかり確認できていないケースがよく見られます。たとえば「食品製造業での調理補助」と伝えていたのに、実際は清掃や資材運搬が中心だったというミスマッチが起きると、本人の不信感につながるだけでなく、在留資格に合わない業務とみなされてしまうケースもあります。
特定技能は業種ごとに従事できる業務の範囲が法律で定められており、その範囲を逸脱した業務を命じることは法令違反にもなります。採用前の段階で、どの業務をどの程度の割合で担当するのかを具体的に文書化しておくことが大切です。
すり合わせが甘いまま進めると、本人の期待と現実のギャップが広がり、早期離職の大きな要因になります。
社内の受け入れ体制が整っていなかった
外国人材が入社した初日から「誰が何を担当するか」が決まっていないと、現場は混乱します。担当者が曖昧なまま放置されると、外国人本人も「誰に相談すればいいかわからない」という状況に陥りがちです。
受け入れ体制の整備とは、単に書類を準備するだけではありません。社内の既存スタッフへの事前説明、多言語対応のマニュアル作成、住居や生活面のサポート体制など、入社前から整えておくべき準備は多岐にわたります。
特に中小企業では、担当者一人に業務が集中して過負荷になるケースも多いです。役割分担を明確にして、チーム全体で受け入れを支える体制を作っておくことが、定着への第一歩になります。
原因②:入社後のサポートが形だけになっている

特定技能では、受け入れ企業または登録支援機関が、入社後も継続的な支援を行うことが義務づけられています。ところが、書類の上では支援計画があるのに、実際にはほとんど機能していないという事例が後を絶ちません。
法律で義務づけられた支援が実態を伴っていない
特定技能の制度では、受け入れ企業は「1号支援計画」に基づいた支援を実施する義務があります。具体的には、定期的な面談(3ヶ月に1回以上)、生活オリエンテーション、日本語学習の機会の提供などが含まれます。
しかし実態としては、面談を「形式的にこなすだけ」のケースが多く、外国人の本音を引き出せていないことがよくあります。たとえば、「困っていることはありますか?」と聞いても、外国人の方は「問題ありません」と答えてしまいがちです。これは文化的な背景もあり、不満を直接口にしない傾向があるためです。
支援が形骸化していると、外国人が抱える問題が表面化しないまま蓄積し、ある日突然「退職したい」という申し出につながるケースも少なくありません。
相談できる窓口や担当者がいない
日常業務の中で生じる小さな疑問や悩みを気軽に相談できる人が社内にいないと、外国人材は孤立しやすくなります。「誰かに聞きたいけど迷惑をかけたくない」という気持ちから問題を抱え込み、ストレスが積み重なって離職につながるパターンは非常に多いです。
対策としては、特定の担当者を「サポート窓口」として明確に設定することが効果的です。また、LINEやチャットツールを使って母国語でも相談できる環境を整えると、ハードルがぐっと下がります。社内で母国語での相談窓口を設置するのが難しい場合でも、登録支援機関等に相談すれば対応してくれます。
窓口を設けるだけでなく、「いつでも相談してください」と繰り返し伝える姿勢が、外国人材の安心感につながります。
原因③:日常のコミュニケーションが取れていない

日本語が流ちょうでない外国人材との意思疎通は、慣れないうちは難しく感じるかもしれません。ただ、コミュニケーション不足を「仕方ない」で片づけていると、現場の信頼関係が崩れていきます。
言葉の壁が放置されている
特定技能の試験に合格しているからといって、業務で使う専門用語やその会社独自の言い回しまで理解しているとは限りません。「指示を出したのに動いてくれない」と感じているとき、実は指示の意味が正確に伝わっていなかったというケースは多いです。
言葉の問題を放置したまま仕事を続けると、ミスが増え、お互いの不満が募ります。図や写真を使ったマニュアルの整備、やさしい日本語(短い文・簡単な言葉)での指示出しなど、小さな工夫が積み重なって大きな差になります。
翻訳アプリや多言語対応ツールをうまく活用することも、コスト面・時間面でのハードルを下げる有効な手段です。
不満や悩みを拾い上げる仕組みがない
外国人材が仕事や生活で抱える悩みは、表に出にくいという特徴があります。「迷惑をかけたくない」「文句を言うと関係が悪くなる」という心理が働くことが多く、問題が深刻化するまで誰にも気づかれないことがあります。
不満を早期に拾い上げるためには、定期的な1on1面談やアンケートを仕組みとして導入することが効果的です。特に、面談は「困ったことを報告する場」ではなく「一緒に考える場」という雰囲気にすることが大切で、そのためには担当者の関わり方や質問の仕方も重要になります。
些細な不満が積み重なる前にキャッチできれば、離職を防ぐ可能性が大きく上がります。日々の声かけも、立派な支援のひとつです。
原因④:仕事内容が本人のスキルと合っていない

「特定技能の試験に合格しているから大丈夫」と思っていたら、実際の業務では使えなかった——こうした業務ミスマッチも、受け入れ失敗の大きな原因のひとつです。試験のスコアと実務スキルは、必ずしも一致しません。
試験で測れない実務レベルのギャップがある
特定技能の評価試験は、各分野の基礎的な知識・技能を問うものです。合格イコール即戦力ではなく、あくまで「一定の基礎がある」ことの証明に過ぎません。機械操作の手順や、現場特有の判断が必要な場面では、試験の知識だけでは対応できないケースも多いです。
たとえば、農業分野で採用した外国人が試験では合格していたものの、特定の農機具の操作経験がほとんどなかったというケースがあります。こうした実務レベルのギャップは、日本人でも同様ですが、新入社員に対して丁寧に指導を行うことが重要です。
スキルのギャップを放置すると、本人の自己効力感が低下して意欲を失うだけでなく、現場の他のスタッフへの負担も増えます。
配属後のフォローがなく定着につながらない
仮に最初のスキルが不十分でも、適切な指導とフォローがあれば時間をかけて育てることは十分できます。問題は、配属後に「あとは現場でやってみて」と放置されてしまうことです。
入社直後は誰もが不安を抱えていますが、外国人材にとっては言語・文化・職場環境のすべてが異なる環境に飛び込む経験です。最初の数ヶ月は特に手厚くフォローし、段階的に業務に慣れてもらうオンボーディングの設計が欠かせません。
定着率を上げるためには、スキルアップの機会を用意することも大切です。「ここで成長できる」と感じられる環境があれば、外国人材のモチベーションも維持しやすくなります。
失敗を繰り返さないために見直すべき3つのポイント

ここまでで挙げた4つの失敗原因を踏まえて、次の受け入れに活かすための見直しポイントを整理します。採用の「前・後・継続」の3段階で考えると、どこに改善の余地があるか見えやすくなります。
採用前:業務定義とマッチング精度を高める
受け入れを成功させるための土台は、採用前の段階で作られます。まず「どの業務を・どの程度の頻度で・どんな環境で行うのか」を具体的に言語化しておきましょう。送り出し機関や紹介エージェントとの情報共有もしっかり行い、候補者のスキルや経験を事前に詳しく確認することが大切です。
可能であれば、採用前に実技確認の機会を設けることもおすすめです。業務のデモンストレーションを見てもらい、候補者が実際にどう動けるかを把握しておくと、入社後のミスマッチを大幅に減らせます。
採用条件の書面化・多言語対応も、トラブルを未然に防ぐための重要なステップです。
採用後:支援内容を形式でなく実態で評価する
入社後の支援は「やった・やっていない」ではなく、「機能しているかどうか」で評価する視点が必要です。面談の回数をこなすことよりも、外国人材が実際に悩みを話せているか、問題が早期に解決されているかが重要です。
支援の実態を確認するために、担当者が外国人材とのやり取りを記録・振り返る仕組みを作ることをおすすめします。また、登録支援機関に支援を委託している場合も、報告内容が形式的でないか定期的にチェックしましょう。
支援の質を高めることは、法令遵守という観点だけでなく、人材定着という経営的な目標にも直結しています。
継続:定期的な面談と改善サイクルを回す
受け入れの改善は一度で終わりではなく、継続的に見直し続けることが大切です。定期面談の内容を記録し、出てきた課題を次の支援計画に反映させる「改善サイクル」を組み込むことで、受け入れ体制は少しずつ成熟していきます。
特に有効なのは、外国人材本人からのフィードバックを仕組みとして収集することです。アンケートや面談で得た声をもとに、マニュアルや研修の内容を更新していくと、次の採用時にも役立つ資産になります。
「うまくいかなかった経験」は、正直なところ受け入れ体制を強化するための最良の教材です。失敗を責めるのではなく、何を改善すべきかの出発点として活かしていきましょう。
まとめ

特定技能の受け入れが失敗する原因は、①準備不足、②支援の形骸化、③コミュニケーション不足、④業務ミスマッチの4つに集約されます。どれも「うっかり見落としてしまいやすい」ものばかりですが、裏を返せば、意識して対策すれば防げる問題でもあります。
受け入れを成功させるためには、採用前・採用後・継続支援の3つのフェーズそれぞれでの取り組みが欠かせません。自社だけで対応が難しいと感じる場合は、登録支援機関の活用も視野に入れてみてください。
FMS(フィールドマーケティングシステムズ)では、採用から定着まで一貫してサポートする体制を整えています。「次こそうまくやりたい」という方は、ぜひ一度ご相談ください。
特定技能の受け入れ失敗原因についてよくある質問

特定技能外国人が早期離職する主な原因は何ですか?
業務内容のミスマッチ、入社後の支援不足、コミュニケーション不足が主な原因として挙げられます。特に「仕事内容が聞いていた話と違う」「誰にも相談できない」という状況が重なったとき、離職リスクが高まります。
受け入れ前にやっておくべき準備を教えてください。
担当業務の明文化、候補者との条件すり合わせ、社内担当者の役割分担決定、既存スタッフへの事前説明などが基本です。
1号支援計画の「形骸化」とはどういう状態ですか?
書類上は面談や支援を行った記録があるのに、実際には外国人の悩みや問題が把握できていない状態を指します。定型的な質問に「問題ありません」と答えるだけで終わる面談が繰り返されているケースがその典型です。
言葉の壁への対策として何が有効ですか?
図や写真を使ったマニュアルの整備、「やさしい日本語」での指示出し、翻訳アプリの活用などが効果的です。また、母国語で相談できるチャットツールの導入も、外国人材の心理的ハードルを下げる手段として有効です。
登録支援機関に委託すれば失敗しないですか?
登録支援機関の活用は受け入れ体制を整える大きな助けになりますが、委託するだけで終わりにしてしまうと形骸化するリスクがあります。報告内容を定期的に確認し、支援が実態を伴っているかを企業側もチェックすることが大切です。