特定技能の特定産業分野追加とは?対象業種と最新動向を解説
人手不足が深刻な業種で外国人材の受け入れを可能にする特定技能制度は、当初12分野でしたが、現在は16分野まで対象が広がりました。この記事では、2024年に追加された自動車運送業・鉄道・林業・木材産業の内容や追加の背景、2027年に予定される特定技能の特定産業分野追加の見通しまでわかりやすくご紹介します。
特定技能の特定産業分野はいくつ追加された?現在の対象分野一覧

特定技能制度は、2024年3月の閣議決定をきっかけに対象分野が広がり、現在は16の特定産業分野で外国人材を受け入れられます。まずは制度創設時の12分野と、2024年の特定産業分野追加によって加わった4分野の位置づけを整理してみましょう。
当初12分野からスタートした特定技能制度
特定技能制度は2019年4月に創設された在留資格で、生産性の向上や国内人材の確保のための取組を行ってもなお人材を確保することが困難な状況にある産業上の分野に限り、一定の専門性・技能を有し即戦力となる外国人の受入れが認められている制度です。制度開始当初は、介護や建設、農業など人手不足が特に深刻な12分野に対象が限定されていました。技能実習制度が国際貢献を目的とした人材育成の仕組みであるのに対し、特定技能は即戦力となる人材を受け入れる点が大きな違いです。そのため、就労前には技能や日本語能力を試験で確認する仕組みになっています。
2024年に4分野が新たに追加され、現在は16分野に拡大
2024年3月29日の閣議決定により、特定技能制度は大きな転機を迎えました。2024年3月29日、閣議決定により特定技能制度が拡大され、特定技能1号の対象分野が従来の12分野から16分野に拡大しました。新たに加わったのは自動車運送業・鉄道・林業・木材産業の4分野で、いずれも国内での人材確保が難しい業種として選ばれました。同時に、飲食料品製造業や工業製品製造業、造船・舶用工業といった既存分野でも、対象となる業務の範囲が広げられています。特定技能の特定産業分野追加の動きは、この2024年の改正を境に加速したといえるでしょう。
2024年に特定技能へ追加された4つの特定産業分野

2024年の特定産業分野追加で加わったのは、自動車運送業・鉄道・林業・木材産業の4分野です。今回追加された4分野については1号特定技能外国人(通算在留期間5年間・家族の帯同は不可)のみ受入れ可能です。ここからは、それぞれの分野で従事できる業務内容や受け入れ見込み数、試験要件を見ていきましょう。
自動車運送業
自動車運送業分野では、自動車運送業に該当する業務は、バス運転者、タクシー運転者、トラック運転者の3つです。自動車運送業での受け入れ見込み数は、2024年から5年間で24,500人に設定されています。バス・タクシー・トラックいずれも運転業務が中心で、物流や地域の公共交通を支える人材として期待されています。分野独自の要件として日本国内の運転免許取得が必須とされているほか、日本語能力試験を受ける場合、バス運転者とタクシー運転者は「N3」以上、トラック運転者は「N4」以上を取得する必要があります。免許取得には一定の期間がかかるため、採用計画は余裕を持って立てておきましょう。
鉄道
鉄道分野では、鉄道分野に該当する業務は、運輸係員(運転士、車掌、駅係員)、軌道整備、電気設備整備、車両製造、車両整備の5つです。鉄道分野での受け入れ見込み数は、2024年から5年間で3,800人に設定されています。運行に直結する業務から車両整備まで幅広い区分が対象になっている点が特徴です。鉄道は安全性が特に重視される分野のため、各区分ごとに求められる技能水準も細かく定められています。受け入れを検討する場合は、運用要領で自社が該当する業務区分を確認しておくと安心です。
林業
林業分野は、伐採・育林・木材搬出などの森林管理作業を担う分野。地方山間部での人手不足に対応する目的があります。林業での受け入れ見込み数は、2024年から5年間で1,000人に設定されています。森林資源の維持管理には人手が欠かせない一方、都市部からのアクセスが悪い地域も多く、若手の担い手が集まりにくいという課題を抱えていました。特定技能の対象に加わったことで、地方の山間部でも外国人材による労働力確保が期待されています。
木材産業
木材産業分野では、製材業、合板製造業などに係る木材の加工工程及びその附帯作業等が1業務区分として対象になります。木材産業での受け入れ見込み数は、2024年から5年間で5,000人に設定されています。林業で生産された木材を製品へと加工する工程を担う分野で、林業分野とあわせて木材の生産から加工までの流れを支える人材確保が図られています。国産木材の需要が伸びるなか、加工現場の人手不足解消への貢献が期待されている分野です。
なぜこれらの分野が追加されたのか?背景にある人手不足の実態

2024年3月の閣議決定で自動車運送業・鉄道・林業・木材産業という4分野が新たに加わった背景には、それぞれの業界に共通する深刻な人手不足があります。自動車運送業や鉄道では、運転士の高齢化や担い手不足が課題となっており、特定技能制度を通じた外国人材の受け入れによって人材確保を図ることが目指されています。トラックやバスの運転手は、人手不足が深刻で、担い手確保が課題とされてきました。鉄道分野でも同様に、人材確保が課題となっています。林業と木材産業についても、森林資源の管理・活用のための人材確保が急務となっているという状況が指摘されており、地方の山間部を中心に担い手不足が深刻です。こうした状況を踏まえ、この拡大は深刻化する労働力不足への対応を目的とした措置だといえます。特定技能の特定産業分野追加は、単に受け入れ枠を広げるだけでなく、暮らしを支えるインフラを将来にわたって維持するための政策的な判断だといえるでしょう。
既存分野でも業務内容が拡大されている

特定技能では新規4分野の追加だけでなく、既存分野の業務範囲も段階的に広がっています。2024年3月29日の閣議決定では、新たに4分野が追加され、あわせて既存の3分野の業務範囲も拡大されました。対象となったのは、「飲食料品製造業分野」「工業製品製造業分野」「造船・舶用工業分野」の3つです。また、2025年(令和7)3月11日の閣議決定では、介護分野で訪問介護サービスへの従事が認められ、外食業分野でも業務範囲の見直しが行われました。それぞれの改正内容を見ていきましょう。
飲食料品製造業・工業製品製造業・造船舶用工業(2024年3月)
2024年3月の閣議決定では、飲食料品製造業において飲食料品製造業でのスーパー対象化(省令改正)が行われ、スーパーの総菜製造なども特定技能の対象として扱われるようになりました。工業製品製造業(旧素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業)では、上記3業務区分に加え、今回の閣議決定で下記7業務区分が追加されたことで、技能実習からの移行ルートも広がっています。造船・舶用工業でも業務区分が再編され、対象業務が拡大しました。
介護・外食業(2025年3月)
2025年3月11日の閣議決定では、介護分野と外食業分野の運用方針が見直されました。これまで施設内での身体介護が中心だった介護分野に、訪問介護をはじめとする訪問系サービスへの従事が認められるようになったことは大きな変化です。ただし、訪問介護に従事する場合は、所定の研修修了、原則1年以上の実務経験、受入事業所の遵守事項、適合確認書の取得等の条件があります。無条件に従事できるわけではない点に注意が必要です。外食業分野についても、あわせて業務範囲の見直しが行われています。
2027年に3分野の追加が決定——リネンサプライ・物流倉庫・資源循環が新たに加わる

特定技能の特定産業分野追加は、2024年の4分野だけにとどまりません。2024年に4分野が追加されて16分野となったことに加え、2026年1月23日の閣議決定により「リネンサプライ」「物流倉庫」「資源循環」の3分野が新たに追加されました。これにより、対象分野は16分野から19分野へ拡大されています。なお、リネンサプライは2026年6月から受入れ対象となっており、物流倉庫・資源循環は受入れ開始に向けた準備段階です。リネンサプライはホテルや病院で使うシーツやタオル類の洗濯・管理業務、物流倉庫は倉庫内でのピッキングや仕分け・在庫管理業務、資源循環は廃棄物処理施設での選別などの業務が想定されています。ただし、閣議決定はあくまで制度上の枠組みが決まる段階であり、すぐに受け入れが始まるわけではありません。新3分野については、技能評価試験の整備等が必要なため、実際の採用開始は2027年頃の制度運用開始を目指していると報じられています。既存の16分野であれば、この新3分野の開始を待たずに今すぐ採用を進められます。3分野での採用を検討している企業は、試験制度の整備状況など出入国在留管理庁の発表を継続してチェックしておくと安心です。
自社の業種が対象かどうか確認する方法と採用を始めるステップ

自社の業種が特定技能の対象になるかどうかを確認するには、出入国在留管理庁および分野を所管する省庁が公表している分野別運用方針・運用要領を確認する方法が確実です。分野ごとに対象となる業務区分や、受け入れ企業に求められる基準・要件が、これらの分野別運用方針・運用要領において詳細に定められています。自社の業種が対象に含まれると分かったら、次のようなステップで受け入れ準備を進めていくとよいでしょう。
- 分野を所管する省庁等が設置する「特定技能に関する分野別協議会」への参加要件や加入手続きを確認する(参加形態は分野ごとに異なる場合があります)
- 特定技能外国人への支援計画を自社で実施するか、登録支援機関へ委託するか検討する
- 登録支援機関へ委託する場合は、支援内容や機関によって費用は異なるものの、実務上は外国人1人あたり月額数万円程度(例:2万円から4万円程度)とされることが多いとされているため、これを目安に予算を立てる
- 外国人材の紹介を利用する場合は、紹介手数料は会社や職種等によって異なるものの、数十万円程度(例:30万円から50万円程度)とされるケースもあるため、各社の料金体系を確認した上で採用コストを試算する
制度が複雑で自社だけでの判断が難しいと感じる場合は、専門家や登録支援機関、外国人採用支援サービスへ早めに相談してみてください。FMSグローバル人材推進事業部の外国人採用支援サービスでは、特定技能制度の対象分野の確認支援、受入れに必要な手続きのサポート、受入れ後の生活支援・就労支援などを提供しています。
まとめ

特定技能の特定産業分野は、これまでの閣議決定により対象分野の追加が進められてきました。創設当初は12分野でしたが、2024年3月29日の閣議決定により自動車運送業・鉄道・林業・木材産業の4分野が追加され、対象分野は16分野となりました。同時に、飲食料品製造業や工業製品製造業(旧:素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業)、造船・舶用工業などの既存分野でも対象業務の拡大が実施されています。今後、対象分野の追加や既存分野の対象業務拡大が行われる可能性もあるため、最新の政府方針は随時確認することが望ましいでしょう。自社の業種が対象になるかを見極め、外国人採用を検討する際は、早めに専門家や支援機関へ相談してみてください。
特定技能 特定産業分野 追加についてよくある質問

特定技能の特定産業分野追加に関して、読者の方から寄せられやすい疑問をQ&A形式でまとめました。
特定技能の特定産業分野は現在いくつありますか?
2024年3月29日の閣議決定で4分野が追加され、特定技能1号の対象は16分野になりました。その後、2026年1月23日の閣議決定と同年4月の関係省令施行により、リネンサプライ・物流倉庫・資源循環の3分野が追加され、特定技能1号は19分野になりました。最新の分野数については公的情報でご確認ください。
2024年に追加された4分野は特定技能2号に移行できますか?
自動車運送業・鉄道・林業・木材産業の4分野は、特定技能2号の対象分野に含まれていません。なお特定技能2号全体の対象分野は制度改正により変動するため、最新の公的資料でご確認ください。
既存分野の業務追加はどの分野が対象ですか?
2024年3月29日の閣議決定では、既存分野の業務区分見直しに関する改正が行われました。介護・外食業について見直しが行われるかどうかは、最新の公的情報でご確認ください。
2026年に追加された3分野は今から採用できますか?
3分野は2026年1月23日の閣議決定で分野別運用方針に追加されました。2026年6月1日から受入れ可能なのはリネンサプライで、物流倉庫・資源循環は省令等の準備が整い次第、受入れ開始となります。最新の状況は出入国在留管理庁や所管省庁の公的資料でご確認ください。
自社の業種が対象分野に含まれるかはどこで確認できますか?
出入国在留管理庁が公表している分野別運用方針・運用要領に加え、各分野を所管する省庁が公表する資料でも確認できます。判断が難しい場合は、登録支援機関や外国人採用支援サービスに相談する方法もあります。