特定技能の製造業は業種細分化に注目?区分の見極め方をすっきり解説
特定技能で外国人材を採用しようと調べ始めたとき、製造業の対象業種一覧を見て「思ったより細かく分かれている」と戸惑った方も多いのではないでしょうか。工業製品製造業は1つの分野でありながら、内部は産業分類と業務区分という2つの軸で細分化されています。この記事では、特定技能の製造業で業種が細分化されている理由と、自社がどの区分に該当するかを調べる具体的な方法をわかりやすく解説します。
特定技能の製造業で業種が細分化されている理由

特定技能の対象分野のうち、製造業は「素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業」から名称変更された「工業製品製造業」という1分野に集約されています。しかし内部を見ると、日本標準産業分類等に基づく対象業種(産業分類)と、「機械金属加工」「電気電子機器組立て」「金属表面処理」などの実際の作業内容を示す業務区分という2つの軸で細かく規定されており、これが細分化されていると感じる理由になっています。
素形材・産業機械・電気電子情報関連の3分野が『工業製品製造業』に統合された理由
特定技能制度がスタートした2019年4月、製造業に関わる分野は「素形材産業」「産業機械製造業」「電気・電子情報関連産業」という3つの独立した分野として運用されていました。特定技能制度が始まった当初、製造業分野は3つの分野に分かれていましたが、2022年5月に「素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業分野」という1つの分野に統合されました。統合の直接的なきっかけは、「産業機械製造業」での受け入れ人数が上限を超え新規入国が止まってしまったことでした。3分野それぞれに受入枠が設定されていたため、1つの分野が上限に達すると、その分野だけ新規受け入れが止まってしまう問題があったのです。そこで2022年5月に製造3分野が1つに統合され、それぞれに割り当てられていた受入れ見込み数の合計31,450人が新たな製造業分野の受入れ上限となりました。分野をまたいだ柔軟な受入れ枠の運用が、統合の大きな目的でした。
細分化によって何が変わったのか
3分野が統合された結果、「素形材産業」を含む「素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業分野」で外国人が従事できる業種は19種類あります。そして任せられる業務は機械金属加工・電気電子機器組立て・金属表面処理の3区分に整理されました。以前は19の細かい業務区分ごとに従事できる作業が限定されていましたが、現場のニーズや業務の関連性を考慮し、19区分から「機械金属加工」「電気電子機器組立て」「金属表面処理」の3区分に統合されました。これにより、鋳造の技能を持つ人材が同じ機械金属加工区分内のダイカストや金属プレス加工にも従事できるようになったのです。統合前に、「素形材産業」の分野で在留資格を有していた外国人や旧試験区分で合格していた外国人は、旧区分が含まれる新区分の他の業務に従事することは可能です。さらに2024年3月には分野名が「工業製品製造業」へ変更され、対象業種・区分がいっそう拡大しました。
工業製品製造業の17業務区分と対象業種一覧

工業製品製造業分野は、2026年6月1日の経産省告示施行により業務区分が従来の10区分から17区分へ拡大されました。機械金属加工・電気電子機器組立て・金属表面処理といった旧「製造3分野」に対応する区分に加え、新たな区分が追加されています。各業務区分ごとに、日本標準産業分類に基づく対象業種が定められており、受入れ可否の判断には自社の業種と業務区分の両方を確認する必要があります。以降で全17区分の内容と対象業種を見ていきましょう。
素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業とは
旧分野名である「素形材産業」は、金属やプラスチックに熱や圧力を加えて部品のもとになる形を作る、製造業の川上工程を担う業界です。鋳造・鍛造・プレス加工などが代表的で、完成品ではなく他の製品に組み込まれる中間投入財を扱う点が特徴といえるでしょう。「産業機械製造業」は、工場や事務所内で使用される機械を製造する区分で、建設機械や農業機械、工作機械など、あらゆる産業で必要とされる機械を作ります。「電気・電子情報関連産業」は電子部品やデバイス、電気機械器具を扱う分野で、身近な家電製品や情報通信機器の部品製造も含まれます。3つの分野は扱う素材や工程が大きく異なるため、もともと別々の分野として運用されていました。
各業務区分に含まれる具体的な業種の一覧
機械金属加工・電気電子機器組立て・金属表面処理の3区分には、それぞれ対応する日本標準産業分類と、実際に任せられる作業が定められています。代表的な対応関係を表に整理しました。
| 業務区分 | 主な対象業種(日本標準産業分類) | 任せられる作業例 |
|---|---|---|
| 機械金属加工 | 鋳型製造業、鉄素形材製造業、非鉄金属素形材製造業、生産用機械器具製造業 など | 鋳造・鍛造・ダイカスト・金属プレス加工・機械加工・溶接・塗装 など |
| 電気電子機器組立て | 電子部品・デバイス・電子回路製造業、電気機械器具製造業、情報通信機械器具製造業 など | 電子機器組立て・電気機器組立て・プリント配線板製造・機械検査 など |
| 金属表面処理 | 溶融めっき業、電気めっき業、金属熱処理業、その他の金属表面処理業(アルミニウム陽極酸化処理業) など | めっき・アルミニウム陽極酸化処理 など |
金属素形材製品製造業、溶融めっき業(表面処理鋼材製造業を除く)、電気めっき業(表面処理鋼材製造業を除く)、金属熱処理業、その他の金属表面処理業(アルミニウム陽極酸化処理業に限る)など、実際の産業分類は細かく規定されているため、自社の事業内容と照らし合わせて確認する必要があります。なお、工業製品製造業の仕事に関わるうえで、関連して一緒に行われる作業については、付随的に行うことが認められていますが、関連業務だけを主たる業務にすることはできません。
分野名の読み方と略称の整理
専門用語が多い分野のため、読み方を整理しておくと社内での共有がスムーズになります。
| 用語 | 読み方 | 意味・補足 |
|---|---|---|
| 素形材 | そけいざい | 鋳造・鍛造・プレスなどで作る部品の中間素材 |
| 産業機械 | さんぎょうきかい | 工場や産業向けに使われる機械全般 |
| 電気電子情報関連 | でんきでんしじょうほうかんれん | 電子部品・電気機械器具・情報通信機器を扱う分野 |
| 工業製品製造業 | こうぎょうせいひんせいぞうぎょう | 2024年以降の現在の分野名称 |
| 機械金属加工 | きかいきんぞくかこう | 業務区分の1つ、金属加工全般を指す |
| 金属表面処理 | きんぞくひょうめんしょり | めっきなど表面加工を行う業務区分 |
なお、旧名称「素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業」は略して「製造3分野」「製造業分野」と呼ばれることも多く、資料によって表記が異なっても同じ分野を指していると理解しておくと混乱を防げます。
自社の業務区分を正しく特定する手順

自社が対象になるかを調べるには、事業所の産業分類と外国人に任せる作業内容という2つの軸を照合する必要があります。次の項目で、具体的な確認手順と判断に迷いやすいケースの相談先を解説します。
自社の製造工程から該当区分を判断するポイント
産業分類の該当性は、会社全体の登記上の業種ではなく、外国人が実際に働く事業所単位で判断します。特定技能制度における製造業の判別は事業者が直近1年間に素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業に分類される産業を行い、製造品の出荷額等を発生させているかどうかで判断されます。本社の登記業種が別であっても、工場となる事業所が対象産業分類の製造品出荷額を計上していれば、対象になり得るということです。あわせて、外国人に任せる主たる作業が、機械金属加工・電気電子機器組立て・金属表面処理のどの区分の作業内容と一致するかも確認しましょう。産業分類と業務区分の両方が満たされて、はじめて受入れの土台が整います。
判断に迷いやすいケースと確認先
産業分類の判断は解釈が分かれやすく、たとえばサッシを製造する場合、他から支給されたアルミ形材に陽極酸化処理をおこなうだけの場合は、その他金属表面処理業に該当するため金属表面処理の区分で受入れ可能ですが、鋳造から表面処理、組立までおこなう場合は金属製サッシ・ドア製造業となり受入れ対象の産業分類に該当しません。また、修理のための塗装や溶接、機械加工等の売上は修理料収入であり、修理業となるため機械金属加工での受け入れはできません。他社製品への加工処理のみを行うのか、自社で組立まで一貫して行うのかによって判断が変わるため、迷ったときは自己判断だけに頼らないことが大切です。工業製品製造業分野ではJAIM(工業製品製造技能人材機構)への加入手続きの中で産業分類の該当性について確認を受けられますし、行政書士など特定技能に詳しい専門家に相談する方法もあります。なお外部に手続きを依頼する場合、人材紹介会社に採用支援を依頼する際の手数料相場は30万〜50万円程度、登録支援機関へ入社後の支援を委託する場合は外国人1人あたり月額2万〜4万円程度が一般的な目安です。
業務区分を間違えると起きるリスクと注意点

自社の業務区分を誤って判断し、対象外の業務ばかりに外国人材を従事させてしまうと、単なる手続きミスでは済まない重大なリスクを招きます。もっとも注意すべきは、不法就労助長罪に問われる可能性です。「特定技能」の在留資格では、告示で定められた特定産業分野ごとの業務内容(職種・業務区分)の範囲外での就労は認められていません。これは、外国人本人だけでなく、受入れ企業や担当者も処罰の対象になる点が特徴です。
罰則の内容も軽くありません。現時点の不法就労助長罪は、3年以下の拘禁刑もしくは300万円以下の罰金、またはその両方です。5年以下の拘禁刑・500万円以下の罰金への引上げは2027年4月1日施行予定です。しかも、故意であった場合はもちろん、事業主が不法就労の可能性を認識し得たにもかかわらず適切な確認を怠っていた場合など、結果として「知らなかった」との主張が認められず、責任を免れないケースが多いと実務上指摘されていますので、確認を怠らないようにしましょう。
また、原材料の運搬や清掃、設備の保守管理といった関連業務は、主たる業務に付随する範囲で行うことは認められていますが、これらの関連業務のみを行わせることは認められていません。あくまで主たる業務に付随する範囲でのみ従事させられる点を忘れないようにしましょう。誤った区分判断は、在留資格の不許可や更新拒否だけでなく、事業主や法人が書類送検されるケースや、業種によっては行政処分に至る可能性もあるなど、経営リスクにも直結します。業務内容を決める前に、産業分類と業務区分の両方を必ず確認する習慣をつけてください。
まとめ

工業製品製造業は1分野に統合されましたが、内部は事業所要件(日本標準産業分類)と実際の作業内容を示す業務区分という2つの軸で細かく規定されています。旧分野の素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業では、それぞれに機械金属加工・電気電子機器組立て・金属表面処理などの業務区分と、対応する日本標準産業分類が定められています。自社が対象になるかどうかは、登記上の業種ではなく、実際に外国人が働く事業所の産業分類と業務内容の両面から確認しましょう。判断に迷う場合は、自己判断だけに頼らず、特定技能を取り扱う行政書士など専門家への相談も検討してみてください。
特定技能 製造業 業種 細分化についてよくある質問

自社が何区分に該当するか自分で判断できない場合は誰に相談すべきですか?
特定技能に詳しい行政書士や登録支援機関などの専門家に相談するのがおすすめです。なお、JAIM(工業製品製造技能人材機構)は工業製品製造業分野の制度案内・対象産業分類の確認などに関わる機関とされているため、行政書士や登録支援機関への相談に加え、必要に応じて受入れ企業の所管官庁やJAIMの公式資料もあわせて確認すると安心できます。
複数の業務区分にまたがる作業をさせてもよいですか?
原則として、在留資格の区分や受入れ計画で認められた業務範囲内でのみ従事できます。複数区分での従事可否は、業務区分の再編内容や経過措置も含め、分野別の運用方針・対応表・受入れ計画に基づいて確認する必要があります。
旧分野(素形材産業など)の技能試験合格者は新区分でも働けますか?
統合前に旧区分の技能試験に合格していた人材の合格実績が新区分のどの業務に読み替えられるかは、経過措置や業務区分対応表などの公式資料で定められているため、必ず最新の対応表で確認する必要があります。
「工業製品製造業」と「素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業」は同じ分野ですか?
2024年3月29日の閣議決定により、従来の「素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業」は「工業製品製造業」に再編されました。あわせて産業分類や業務区分の対象が再整理・拡大されています。詳細は告示や運用要領、対象一覧での確認が必要です。
自社の登記上の業種が製造業でなくても対象になりますか?
なり得ます。判断基準は登記上の業種だけでなく、外国人が実際に働く事業所が日本標準産業分類上どの業種に該当するかが中心です。事業所が対象となる産業分類に該当し、かつ受入れ業務区分などの要件も満たしていれば、対象になる可能性があります。詳細はJAIMの対象産業分類一覧など公式情報で確認する必要があります。