外国人の定着率を上げる方法!離職を防ぐ実践施策
「せっかく採用した外国人従業員がすぐに辞めてしまう」と悩む人事担当者の方は多いのではないでしょうか。採用や教育にかけたコストが無駄になるだけでなく、現場の負担も増えてしまいます。この記事では、外国人が早期離職する原因を整理し、定着率を上げる方法を具体的にご紹介します。
外国人の定着率を上げるために最初にやること

定着率を上げたいと考えたとき、いきなり新しい制度を導入したくなるかもしれません。しかし、まずは自社の現状を正しく把握することが大切です。ここでは着手すべき2つの初動アクションをご紹介します。
定着率が低い原因を正確に把握することが第一歩
外国人従業員の離職理由は、待遇、孤立、文化摩擦、キャリアの不透明感など複合的に絡み合っていることがほとんどです。そのため「きっと給料が原因だろう」といった思い込みだけで対策を打つと、的外れな施策になってしまうおそれがあります。
まずは退職した従業員へのヒアリングや、在籍中の外国人従業員向けアンケートを実施し、実際の不満や悩みを具体的な言葉で集めてみましょう。母国語でのアンケートを用意すると、より本音を引き出しやすくなります。
集めた声を整理していくと、自社特有の課題が見えてきます。次の章では、多くの企業に共通する4つの離職原因を詳しく見ていきましょう。
「採用で終わり」になっていないか確認する
採用活動には力を入れていても、入社後の受け入れ体制が手薄になっている企業は少なくありません。求人広告や面接には多くの時間をかけたのに、初日からのフォローが場当たり的になっているケースはよくあります。
以下の項目を振り返ってみてください。
- 入社初日から数週間のオンボーディング計画があるか
- 業務マニュアルは外国人従業員が理解できる言語で用意されているか
- 困ったときに相談できる窓口や担当者が決まっているか
- 定期的に様子を確認する仕組みがあるか
これらが整っていない場合、外国人従業員は職場で孤立しやすくなります。次章では、この孤立の問題を含めた4つの離職原因を詳しく解説します。
外国人従業員が辞めてしまう主な4つの原因

外国人従業員の離職には、いくつかの共通したパターンが見られます。ここでは代表的な4つの原因、孤立、待遇格差、文化摩擦、キャリアの不透明感について順番に解説します。自社の状況と照らし合わせながら読んでみてください。
職場で孤立しやすい環境になっている
外国人従業員は言語の壁や文化の違いから、職場の中でマイノリティな立場になりやすいものです。休憩時間の雑談や飲み会といった何気ない場面で輪に入れず、少しずつ孤立していくケースが目立ちます。
孤立が進むと、業務上の困りごとや職場への不満を誰にも相談できなくなります。「相談しても分かってもらえない」と感じてしまうと、悩みを抱え込んだまま静かに離職を決意することも少なくありません。
こうした孤立を防ぐには、日常的に声をかけ合える関係性づくりが欠かせません。後述するメンター制度は、この孤立感を解消する有効な手段のひとつです。
職場への不満や将来への不安が積み重なり、給与が最後のきっかけになる
退職理由として「給料が低いから」と語られることは多いのですが、実際にはその背景に評価基準の不透明さや待遇への不満が長く積み重なっていることがよくあります。給与は不満の集大成として表面化する、最後のきっかけに過ぎない場合が多いのです。
具体的には、同じ業務をしているにもかかわらず日本人従業員と賃金に差がある、在留資格の種類によって待遇に差をつけられているなど、外国人従業員が納得しにくい格差が存在するケースがあります。こうした格差は本人に説明されないまま放置されやすく、不信感の温床になりがちです。
給与そのものを見直すだけでなく、評価の仕組みを分かりやすく伝えることが、不満の蓄積を防ぐ第一歩になります。
人前で怒る、大声で叱る——日本式の指導が通じない理由
日本の職場では、人前で叱責するという指導方法がまだ根強く残っている場合があります。しかし、面子を重んじる文化を持つ外国人従業員にとって、人前での叱責は単なる指導ではなく人格を否定されたと受け取られやすく、深い不信感やハラスメントの認識につながることがあります。
こうした文化摩擦を避けるには、指導は個別の面談スペースで行い、感情的な言い方を避けることが大切です。あわせて、外国人従業員にも伝わりやすい「やさしい日本語」を使うと、指導の意図が正確に伝わりやすくなります。
指導方法を見直すことは、離職防止だけでなく、健全な職場づくりにもつながります。次章では、こうした文化摩擦を防ぐための具体策を紹介します。
キャリアアップの道筋を示せているか——特定技能2号・介護福祉士支援が鍵
将来のキャリアが見えないことも、外国人従業員が離職を選ぶ大きな要因です。今の仕事を続けても何が待っているのか分からない状態では、長く働き続けるモチベーションを保つのが難しくなります。
例えば、特定技能1号から2号への移行や、介護分野であれば介護福祉士の国家資格取得を支援する仕組みを示すことで、在留期間の延長や待遇改善という具体的な将来像を描けるようになります。こうした制度を分かりやすく説明し、社内での取得支援体制を整えることが、長期的な定着への強いモチベーションになります。
キャリアパスの明示は、次章で紹介する具体策の中でも特に重要な位置づけです。
外国人の定着率を上げる具体的な方法5選

外国人の定着率を上げる具体的な方法5選
ここまで見てきた孤立、待遇格差、文化摩擦、キャリアの不透明感という4つの原因を主な論点として、実際に取り組める5つの具体策をご紹介します。すべてを一度に始める必要はなく、自社の課題に合わせて優先順位をつけて導入してみてください。
特定技能1号の外国人について、支援計画に基づく定期面談は3か月に1回以上実施する必要があります。令和6年1月1日から、原則として対面で実施する扱いに変更されました。面談は本人が理解できる言語で、本人が話しやすい環境で実施することが望ましく、制度上は本人と監督者それぞれに面談を行う運用です。
メンター制度で「頼れる人」をつくる
外国人従業員一人ひとりに相談相手となるメンターをつけることで、孤立を防ぎ、悩みや疑問を早期に解決できる仕組みが作れます。誰に聞けばいいか分からないまま不安を抱え込む状況を減らせる点が大きなメリットです。
メンターを選ぶ際は、留学経験がある社員や、過去に外国人従業員と一緒に働いた経験がある社員など、異文化への理解がある人を選ぶと効果的です。業務だけでなく生活面の相談にも対応できると、より安心感を与えられます。
定期的にメンターと面談する時間を設けることで、小さな不満が大きな離職理由に育つ前に対処できるようになります。
多言語マニュアルで業務のわからないをなくす
文字だけのマニュアルでは、日本語に不慣れな外国人従業員に業務手順が正確に伝わらないことがあります。多言語対応の動画マニュアルや、スマートフォンの翻訳アプリを組み合わせて使うと、伝わりやすさが大きく改善します。
動画マニュアルは繰り返し見返せるため、教育にかかる時間の短縮やミスの防止につながります。加えて「会社がここまで対応してくれている」という安心感が伝わることも、定着率を上げる上で見逃せない効果です。
初期の教材作成にはある程度の手間がかかりますが、一度整えれば継続的に活用できる資産になります。
定期的な1on1面談で本音を引き出す
特定技能1号の外国人を受け入れている場合、支援計画に基づき、外国人本人およびその監督者と3か月に1回以上の定期面談を実施する必要があります。しかし、この面談を義務対応として済ませるだけでは、本人の本音を引き出すことは難しいものです。
面談は本人が理解できる言語で実施し、直属の上司ではなく中立的な立場の人が担当することがポイントです。評価につながる立場の人が聞き手になると、本音を話しにくくなってしまうためです。
形式的な確認だけで終わらせず「最近困っていることはないか」といった開かれた質問を投げかけることで、早期に不満や不安をキャッチできるようになります。
キャリアパスを明示して「この会社で頑張れる」と思わせる
特定技能2号への移行や介護福祉士資格の取得支援など、将来の在留資格や待遇がどのようにステップアップしていくのかを可視化することは、長期的に働く意欲を高める効果的な方法です。
入社時にロードマップを提示し、達成に必要な条件や期間を分かりやすく説明しておくと、外国人従業員は自分の将来を具体的にイメージできるようになります。「今の頑張りが将来につながる」と実感できることが、離職を防ぐ大きな支えになります。
ロードマップは一度提示するだけでなく、定期面談の場で進捗を確認し合うことで、より実感を伴ったものになります。
評価基準を明確にして不公平感をなくす
昇給や昇格の条件が不明確だと、外国人従業員は「自分だけ正当に評価されていないのでは」という不信感を抱きやすくなります。特に日本語でのニュアンスが伝わりにくい評価制度は、誤解を生みやすい傾向があります。
評価基準は多言語の資料で分かりやすく説明し、どのような行動や成果が評価につながるのかを具体的に示すことが重要です。同じ業務内容であれば国籍にかかわらず公平な基準を適用する姿勢も、信頼関係の構築に欠かせません。
こうした取り組みは、前述の待遇格差への不満を未然に防ぐ具体策として機能します。
定着率改善に取り組む前に知っておきたいこと

具体策の実践に入る前に、定着率に関するデータの見方や早期離職が及ぼす影響について、正しい前提知識を持っておくことが大切です。ここでは2つの観点から整理します。
外国人従業員の離職率は、実は日本人新卒より低い——それでも定着が難しい理由
「外国人だから離職率が高い」というイメージを持っている方もいるかもしれませんが、必ずしもそうとは限りません。新規大学卒就職者の就職後3年以内の離職率は34.9%というデータが厚生労働省から公表されており、日本人新卒の離職率自体も決して低くはないのが実情です。
また、民間企業の調査によれば、約3割の外国人材が入社後1年未満の離職を経験しているというデータもあります。こうした数字を見ると、外国人従業員の離職が特別に極端な水準というわけではないことが分かります。
それでも定着が難しく感じられるのは、受け入れ体制の違いが影響していると考えられます。日本人新卒には当たり前に用意されている研修やサポートが、外国人従業員には十分に提供されていないケースが多いためです。
早期離職は採用コストだけでなく職場全体に影響する
早期離職は、再募集にかかる人材紹介手数料(相場30万〜50万円程度)や登録支援機関への委託費用(外国人1人あたり月額2〜4万円程度が一般的な相場)といった直接的なコストを発生させます。せっかく確保した人材を失うことは、経営的にも大きな痛手です。
さらに、これまで教育にかけた時間や労力も無駄になり、教えていた先輩社員の負担感も増してしまいます。人が抜けた分の業務を既存社員が急にカバーすることになれば、職場全体の一体感やモチベーションの低下にもつながりかねません。
このように、定着率の低さは一部の従業員だけの問題ではなく、組織全体に関わる経営課題として捉える必要があります。だからこそ、次章でまとめる具体策を組み合わせて、腰を据えて取り組むことが大切です。
まとめ

外国人従業員の早期離職は、孤立、待遇格差、文化摩擦、キャリアの不透明感という複合的な要因が絡み合って起こります。給与だけを見直しても解決しないことが多く、根本的な原因に向き合う姿勢が求められます。
メンター制度や多言語マニュアル、定期的な1on1面談、キャリアパスの明示といった具体策を組み合わせ、受け入れ体制をコツコツ整えていくことが、外国人の定着率を上げる方法として着実な効果を発揮します。まずは自社の現状を振り返り、できることから一つずつ取り組んでみてください。
外国人 定着率 上げる方法についてよくある質問

外国人従業員の定着率は何%を目指せばいいですか?
業種や職種、またその企業によって大幅に変わるため、一概に何%とは言えませんが、現在の自社の3年以内の離職率を基準として設定するのが一つの方法です。ただ、この率にこだわり過ぎず、なぜ離職したのか、その理由を振り返り改善を続ける姿勢が大切です。
定着率改善はいつから始めるべきですか?
離職が発生してから慌てて動くのではなく、採用を決めた時点から受け入れ体制を整えておくことが理想です。すでに離職が続いている場合は、今すぐヒアリングやアンケートから始めることをおすすめします。
効果が出るまでどのくらいの期間が必要ですか?
職場環境や信頼関係の構築には一定の時間がかかるため、数か月から半年程度は継続して様子を見ることをおすすめします。効果の出方には個人差や職場ごとの差があるため、焦らず継続することが重要です。
特定技能の外国人でも同じ方法は有効ですか?
はい、特定技能の外国人従業員にも同様に有効です。特定技能1号では3か月に1回以上の定期面談が必要なため、その機会を本音を引き出す場として活用できます。