中小企業の外国人採用の始め方を全ステップで解説
「外国人採用を考えているけれど、何から始めればいいのかさっぱりわからない」——そう感じている中小企業の経営者や人事担当者の方は、決して少なくありません。在留資格の種類、書類の手続き、社内の受け入れ体制……と、知らないことだらけで不安になるのも当然です。この記事では、外国人採用が初めての中小企業に向けて、在留資格の選び方から人材の探し方、社内準備まで、順を追ってわかりやすく解説します。
中小企業が外国人採用を始めるための3つのステップ【全体像】

外国人採用は「難しそう」というイメージがあるかもしれませんが、全体の流れを把握してしまえば、ひとつひとつのステップは決して難しくありません。大きく分けると、在留資格を決める→人材を探す・採用する→社内の受け入れ準備を整えるという3段階で進みます。
ステップ1:在留資格を選ぶ
まず取り組むのは、どの在留資格を持つ外国人を採用するかを決めることです。在留資格によって、働ける職種や業種が異なります。採用したい職種や自社の業種に合った在留資格を選ばなければ、そもそも採用自体が成立しません。
特に製造業・飲食・介護・農業などの現場職であれば、特定技能という在留資格が中小企業には使いやすい選択肢です。在留資格についての詳しい説明は後のセクションで改めて解説します。
ステップ2:人材を探す・採用する
在留資格の方針が固まったら、次は実際に人材を探します。外国人採用の場合、一般的な求人媒体よりも外国人専門の人材紹介会社(エージェント)や登録支援機関を活用するケースが多いです。
初めての採用であれば、手続きのサポートまで含めて対応してくれる専門業者に相談するのが安心です。自社だけで進めようとすると、書類の不備や手続きの遅延が起きやすいため、専門家の力を借りることを検討しましょう。
ステップ3:社内の受け入れ環境を整える
採用が決まった後に慌てないよう、社内の受け入れ体制は採用活動と並行して準備を進めておきましょう。担当者(窓口)の設定、住居や生活サポートの手配、既存スタッフへの周知などが主な内容です。
受け入れ環境が整っていないと、せっかく採用しても早期離職につながりやすくなります。特に初めての外国人採用では「入社後のフォロー」が定着率を大きく左右するため、準備を丁寧に行いましょう。
外国人採用を始める前に知っておくべきこと

実際の手続きに入る前に、最低限知っておきたい基礎知識が2つあります。「在留資格」の仕組みと、中小企業の人手不足対策に特定技能が有効な理由です。ここを理解しておくと、この後の各ステップがぐっとスムーズに進みます。
在留資格とは何か?就労できる資格・できない資格の違い
在留資格とは、外国人が日本に滞在するために必要な「許可の種類」のことです。よく混同されがちですが、査証(ビザ)と在留資格は別の制度です。査証は原則として在外公館(大使館・領事館)が入国前に発給するもので、在留資格は日本で行うことができる活動または身分・地位を定めるものです。在留カードには在留資格・在留期間などが記載されており、採用時はこのカードで就労可能な在留資格かどうかを必ず確認する必要があります。たとえば「留学」は原則として就労不可(資格外活動許可を得れば、週28時間以内でのアルバイトは可)、「永住者」や「定住者」はほぼすべての職種で就労が認められています。 主な就労可能な在留資格の例をまとめると、以下の通りです。
| 在留資格 | 主な特徴 |
|---|---|
| 技術・人文知識・国際業務 | エンジニア、営業、通訳翻訳など専門職向け |
| 特定技能1号 | 人手不足の16業種で働ける現場職向け |
| 特定技能2号 | 特定技能1号の上位資格(在留期間の上限なし) |
| 永住者・定住者・日本人の配偶者等 | 職種制限なし |
採用後に「実は就労できない在留資格だった」となると、企業側も不法就労助長罪に問われる可能性があるため、確認は必須です。
中小企業の人手不足対策に特定技能が有効な理由
数ある在留資格の中でも、人手不足に悩む中小企業にとって特におすすめなのが特定技能です。理由は大きく3つあります。
- 製造業・建設・農業・飲食料品製造・介護など、人手不足が深刻な16業種に対応している
- 即戦力として採用できる(一定の技能試験・日本語試験の合格が要件)
- 転職が可能な制度設計になっており、外国人側のモチベーションが高い傾向がある
一方で、特定技能1号の受け入れには「1号特定技能外国人支援計画の作成・実施」が企業に義務付けられています。自社で対応するのが難しい場合は、後述する登録支援機関に委託できるため、初めての企業でも安心して活用できます。
ステップ1:どの在留資格で採用するかを決める

外国人採用の最初のステップは、自社の業種・職種に合った在留資格を選ぶことです。在留資格によって採用できる人材の要件が異なるため、ここの選択を誤ると後の手続きがすべて無駄になりかねません。
業種・職種別に使える在留資格の選び方
「どの在留資格で採用するか」は、採用したい職種と業種によって絞り込めます。選び方の目安は以下の通りです。
- 事務・営業・ITエンジニアなどのオフィス職 → 「技術・人文知識・国際業務」が基本
- 工場・農業・飲食・介護などの現場職 → 「特定技能1号」または「技能実習」が選択肢
- 国籍を問わず幅広く採用したい → 「永住者」「定住者」「日本人の配偶者等」など身分系の在留資格を持つ方も対象に
注意したいのは、「技術・人文知識・国際業務」は、関連科目を専攻した大学等の卒業、日本の専門学校の専門課程修了、または原則10年以上の実務経験等が要件となり、従事業務との関連性も審査される点です。一方、特定技能は学歴不問で試験合格が要件になるため、現場職での採用にはより使いやすい制度です。
迷ったときは「どの職種で、どんな業務をしてほしいか」を明確にしてから、専門家に相談するのがスムーズです。
特定技能制度の基本的な仕組みと対象16業種
特定技能は2019年に創設された比較的新しい在留資格で、深刻な人手不足が認められた産業分野に絞って外国人が就労できる制度です。
対象となる16分野は以下の通りです(2025年時点)。
- 介護
- ビルクリーニング
- 工業製品製造業
- 建設
- 造船・舶用工業
- 自動車整備
- 航空
- 宿泊
- 農業
- 漁業
- 飲食料品製造業
- 外食業
- 林業(2024年追加)
- 木材産業(2024年追加)
- 自動車運送業(2024年追加)
- 鉄道(2024年追加)
特定技能1号では在留期間の上限が通算5年ですが、一部業種では特定技能2号に移行でき、在留期間の上限がなくなります。長く活躍してほしい人材であれば、2号への移行も見据えた採用計画を立てると良いでしょう。
中小企業が外国人採用を始め方に迷ったときも、まずはどの分野が対象かを確認するところからスタートしてみてください。詳細は出入国在留管理庁の特定技能ページでも確認できます。
ステップ2:外国人人材を探す方法を選ぶ

在留資格の方針が決まったら、いよいよ人材を探す段階です。外国人採用には国内外のさまざまな採用ルートがあり、初めてなら「誰に頼るか」を慎重に選ぶことが大切です。ここでは代表的な3つの選択肢を紹介します。
人材紹介会社・エージェントを使うメリット
外国人採用に特化した人材紹介会社(エージェント)を利用すると、求人票の作成から候補者のマッチング、面接設定まで一括でサポートしてもらえます。
特に中小企業にとってのメリットは次の点です。
- 自社に採用ノウハウがなくても、エージェント側が主導してくれる
- 海外現地でも求人を広げられるため、国内にいる外国人だけでなく海外在住の人材にもアプローチできる
- 在留資格の変更申請など、手続き周りのアドバイスをもらいやすい
ただし、成果報酬型の場合は採用1名あたり数十万円程度の費用がかかります。とはいえ、日本人を人材紹介で採用する場合は100万円前後かかるケースも珍しくないため、それと比べると外国人採用の費用感はむしろ抑えやすいといえます。費用の目安は事前に確認しておきましょう。
登録支援機関とは何か?エージェントとの違い
「登録支援機関」という言葉を初めて聞く方も多いかもしれません。登録支援機関とは、1号特定技能外国人を受け入れる企業が行わなければならない支援業務を代わりに担う機関のことで、出入国在留管理庁に登録されています。
人材紹介会社(エージェント)との違いを整理すると、以下のようになります。
| 人材紹介会社 | 登録支援機関 | |
|---|---|---|
| 主な役割 | 求人・マッチング | 入社後の支援(生活・手続きサポート) |
| 費用の発生タイミング | 採用成功時 | 月次(委託料) |
| 必要性 | 任意 | 1号特定技能では必要性が高い |
特定技能で採用する場合、法律上「受け入れ企業が支援計画を作成・実施する」か「登録支援機関に委託する」かのどちらかが必要です。自社で対応する体制が整っていない中小企業の多くは、登録支援機関に委託しています。
初めての中小企業に向いている相談窓口の選び方
「エージェントと登録支援機関、どちらに相談すればいいの?」と迷う方も多いですが、実は採用支援から入社後のサポートまで一気通貫で提供しているサービスもあります。
選ぶ際のポイントは以下の通りです。
- 特定技能に特化しているか(汎用的な人材会社より専門知識が深い)
- 入社後の生活支援・定着支援まで対応しているか
- 中小企業の受け入れ実績が豊富か
- 費用体系が明確で、担当者に気軽に質問できるか
初めての採用で不安が多い場合は、ひとつの窓口で採用から定着まで対応してもらえるサービスを選ぶと、社内の負担を大きく減らせます。FMS(フィールドマーケティングシステムズ)のような、特定技能人材の受け入れに特化した登録支援機関への相談もひとつの手です。
ステップ3:採用前に社内の受け入れ環境を整える

人材が決まってからバタバタしないよう、受け入れ環境の準備は採用活動と並行して進めるのが理想的です。「採用できた!」と思ったあとに社内がまったく準備できていない状況は避けたいところ。主な準備内容を3つに分けて解説します。
担当者を決めて「窓口」を明確にする
外国人スタッフが入社した際に「何かわからないことがあったら誰に聞けばいい?」と迷わないよう、社内に専任の担当者(窓口)を決めておくことが大切です。
担当者の主な役割は、書類手続きのサポート、日常業務の指示・確認、生活上の相談の受け付けなどです。特定技能の場合は、登録支援機関が支援業務を担ってくれますが、社内での連絡窓口は別途必要です。
担当者が複数にまたがると「誰が対応するのか」が曖昧になりやすいため、最初は1名に集約するのが無難です。語学が堪能でなくても、ゆっくりと丁寧に対応する姿勢があれば十分機能します。
住居・生活支援など入社前に準備すること
特定技能外国人を受け入れる場合、受け入れ企業は住居の確保に関する支援を行うことが義務付けられています(登録支援機関に委託可)。入社後にすぐ生活が安定するよう、以下の点を事前に準備しておきましょう。
- 住居の候補を確保しておく(社宅・近隣の賃貸物件など)
- 銀行口座の開設サポート
- 生活ルール(ゴミ出しのルールなど)の説明資料を用意する
- 必要に応じて通勤手段・交通費の案内
外国人スタッフにとって日本での新生活は未知のことだらけです。生活面のサポートが手厚いほど、早期定着につながりやすくなります。
現場スタッフへの事前周知と意識合わせ
外国人スタッフが入社してから「聞いてなかった」という既存スタッフの戸惑いを防ぐために、事前の周知と意識合わせは欠かせません。
伝えておくべき内容の例としては、「どんな人が入社するか(国籍・日本語レベルなど)」「コミュニケーション上の配慮事項」「困ったときの相談先」などが挙げられます。
「外国人が来ることへの不安」を持つスタッフがいる場合は、無理に正論でねじ伏せようとせず、丁寧に対話する時間を取りましょう。受け入れる側の職場文化が整って初めて、外国人スタッフも本来の力を発揮できます。
採用手続きの流れと必要な届出

外国人を採用する際は、日本人採用と異なる手続きがいくつかあります。大きな流れは「雇用契約の締結 → 在留資格の確認または変更申請 → ハローワークへの届出」です。ここでは特に注意が必要な2点を取り上げます。
雇用契約・労働条件通知書のポイント
外国人を採用する際も、日本人と同様に労働条件通知書の交付が義務です。賃金・労働時間・休日・業務内容などを明示する必要があります。
外国人採用ならではのポイントとして、母国語での説明が求められる場面もあります。特定技能の場合、雇用契約の内容を外国人が十分に理解できる言語で説明することが支援計画の要件に含まれています。
また、在留資格によっては「従事できる業務の範囲」が限定されているため、契約書に記載する業務内容が在留資格の範囲内に収まっているかの確認も必須です。
外国人雇用状況の届出(ハローワーク)とは
外国人を雇用した(または離職した)際は、ハローワークへの「外国人雇用状況の届出」が事業主の義務です(労働施策総合推進法に基づく)。
届出の方法は雇用保険に加入するかどうかで異なります。
- 雇用保険に加入する場合:雇用保険の取得届・喪失届の提出をもって届出とみなされます
- 雇用保険に加入しない場合:様式第3号「外国人雇用状況届出書」を提出します
届出の期限は翌月10日までです。なお、届出対象から除外されるのは在留資格「外交」「公用」の者および特別永住者のみです。永住者は届出の対象となるため注意しましょう。
詳細は厚生労働省の外国人雇用状況の届出制度ページで確認できます。
まとめ

外国人採用の始め方を整理すると、「①在留資格を選ぶ → ②人材を探す・採用する → ③社内の受け入れ環境を整える」という3ステップが基本の流れです。
中小企業にとって特定技能は使いやすい制度ですが、支援計画の作成・実施など企業側の義務も発生します。初めての採用であれば、登録支援機関や専門エージェントをうまく活用して、手続きの負担を減らしながら進めるのが現実的です。
「何から始めればいいかわからない」という状態から、この記事が一歩踏み出すきっかけになれば嬉しいです。まずは専門家に相談することで、自社に合った採用プランが見えてくるはずです。
中小企業 外国人採用 始め方についてよくある質問

外国人採用を始めるにはどのくらいの費用がかかりますか?
採用方法によって異なりますが、人材紹介会社を利用する場合は採用1名あたり20万〜50万円程度が相場です。特定技能の場合、さらに登録支援機関への月次委託料(1〜3万円程度)が発生します。ハローワークなど無料の採用ルートもありますが、外国人採用に特化した求人票の作成や在留資格の確認など、社内の工数も考慮しておく必要があります。
日本語が話せない外国人でも採用できますか?
在留資格によって要件が異なります。特定技能の場合、日本語能力試験(JLPT)N4相当以上またはそれに準ずる試験の合格が求められるため、一定の日本語力が確認できた人材を採用することになります。業務内容や職場環境に応じて、どの程度の日本語力が必要かを採用前に整理しておくとミスマッチを防げます。
技能実習と特定技能はどう違うのですか?
技能実習は「日本の技術を母国に持ち帰ることを目的とした国際貢献制度」として設計されております。一方、特定技能は「国内の人手不足解消を目的とした就労制度」で、同一業種内での転職が可能です。採用側の中小企業にとっては、即戦力採用が前提の特定技能の方が採用目的に合いやすいケースが多いです。
外国人採用に必要な社内の体制はどの程度必要ですか?
最低限、社内窓口となる担当者を1名決めることから始まります。特定技能1号の場合は支援計画の作成・実施が必要ですが、登録支援機関に全部委託すると法定支援の実務負担は軽減できます。ただし、雇用主としての労務管理や各種届出、社内での連絡対応、委託先との連携といった責任は引き続き受入企業に残ります。専任の人事担当者がいない中小企業でも、外部の専門機関をうまく活用しながら社内体制を整えていくことで十分に対応できます。
採用から実際に働き始めるまでどのくらいの期間がかかりますか?
国内にいる外国人(在留資格の変更申請が必要な場合)は、申請から許可まで1〜3ヶ月程度かかることが多いです。海外在住の外国人を採用する場合は、在留資格認定証明書の交付申請から入国まで3〜6ヶ月程度を見込んでおく必要があります。採用スケジュールには余裕を持って計画を立てましょう。