知っておきたいフィールドマーケティングの基礎(前編)
フィールドマーケティングは、専門会社に外注すれば自動的に効果が出る、というものではありません。もし外注を検討されているのであれば、まずは内製で成果を出せないか、という観点で、FMSの知見をご活用いただきたいと考えています。
フィールドマーケティングとは、メーカーの営業社員や専門スタッフ(以下総称して、「ラウンダー(フィールドスタッフ)」と記載)が店舗を定期的に訪問し、各店舗と信頼関係を築き、販売戦略どおりの買い場を構築して売上を上げることです。
店頭は購買の最終段階に位置するため、最前線で活躍するラウンダー(フィールドスタッフ)のマネジメントは売上に直結する重要な要素となります。
成功の鍵は業務設計の有無
フィールドマーケティングに新たな予算を投入する場合、仮説立案に基づく業務設計がされているかどうかが、失敗と成功を分ける重要な要素となります。
新築の注文住宅の発注を考えてみてください。
どのような物件を、どこにいくらで建てるのか?自分の生活スタイルや希望をしっかり考え抜いた施主だけが、建築メーカーとうまく連携し、後悔しない理想の家を入手することができます。
今回は、FMSが長い時間をかけて培ってきた成功に必要な3つの要素をご紹介します。
この流れに沿ってフィールドマーケティングの極意を解説いたします。
STEP1:仮説立案に基づく業務設計
まずは仮説立案に基づく業務設計を行います。
業務設計というと難しく感じるかもしれませんが、目的、目標、戦略、戦術の4つをまとめ、PDCAで回すサイクルを作るという基本的な内容です。
[目的]
フィールドマーケティングを導入することで達成したい目的を明確にします。目的は、後に設定する目標、戦略、戦術に繋がりますので、業務設計の中でも最重要事項となります。
シンプルな言葉で表現できるものにすると、社内で共通理解がしやすくなります。
例:新しい業態(チャネル)で売上・利益の柱をつくること
[目標]
目的を達成するための目指すべき道筋を設定します。目的達成のための道筋は一つとは限りません。
現実的でポテンシャルが高いものを選択し目標とすると良いでしょう。
例:新業態(チャネル)の納品実績前年比110%アップ
[戦略]
戦略とは、目標達成に向けて有限であるリソースをどこに集中させるかということです。
具体的には、予算を投入してフィールドマーケティングを行う対象を選択します。
1:訪問先(エリア・チェーン・店舗) ・・・ どのエリアのどの店舗に巡回するのか
2:訪問頻度 ・・・ 1店舗月に何回訪問するのか
3:時期 ・・・ 年間通してなのか新商品発売時期など一定の時期に集中させるのか
4:理想の売り場の状態(=買い場) ・・・どのような売り場を作ることに注力するのか
訪問先については、売上上位店だけを選定するのではなく、来店客層(オフィス街、住宅街 など)をもとに、ポテンシャルも考慮して選定することが理想です。
理想の売り場の状態例:定番売り場の拡大
[戦術]
戦術とは、目標達成に向けた具体的な方策を表します。
理想の買い場を作り上げるために「ラウンダー(フィールドスタッフ)が店頭で何をするか」「ラウンダー(フィールドスタッフ)をどうマネジメントするか」を決定します。
※「ラウンダー(フィールドスタッフ)の行動マネジメント」「ラウンダー(フィールドスタッフ)の組織マネジメント」については、次回詳細の解説をします。
[検証]
「戦術」の進捗管理と目標達成にむけた効果測定を行います。そのためには、検証を想定した報告項目の設計を行っておくことが非常に重要となります。
[仕組化]
成功事例を再現させるために、ルール化、マニュアル化を行い「運用フロー」を作ります。
目的、目標、戦略、戦術の4つをまとめ、PDCAを回し、仕組化するコツは、内製化・外注化問わず、本部とラウンダー(フィールドスタッフ)側それぞれにPDCAサイクルを回す事務局を設けることです。
(事務局に関してはこちらの記事もご参照ください。
5分でわかる!効果が出せるラウンダーの「運営事務局」)
業務設計なしで巡回を開始すると、ラウンダー(フィールドスタッフ)が営業社員の小間使いのような役割となってしまい、店舗の定期的な訪問による信頼関係の構築が叶わないため、販売戦略どおりの買い場の実現につながらないといった不整合が起きます。また、軌道修正の必要に気づいても検証しにくく、どのようにその不整合を解決すればよいかわからなくなってしまいます。
次回は、フィールドマーケティングの成功に必要な「ラウンダー(フィールドスタッフ)の行動マネジメント」「ラウンダー(フィールドスタッフ)の組織マネジメント」について解説します。