5分で理解できる、目的の達成とコスト削減を同時に実現する契約形態とは?
これまでラウンド組織で使われる主な3つの契約形態「雇用契約」、「派遣契約」、「業務委託契約」のメリット/デメリットや各契約形態の基礎を紹介してきました。
契約形態は、ラウンド組織の導入目的に応じて適したものを選ぶ必要があります。今回は、内製化と外注化も踏まえ、どのような契約形態を選定すればよいのか、事例を挙げて説明します。
1.ラウンド組織の主な契約パターン比較
契約形態「雇用契約」、「派遣契約」、「業務委託契約」の3つに、外注するかしないかの要素を加えると、表のような5つのパターンが存在します(図1)。
図1
1)外注会社を使用しない場合
外注会社を使用せずにメーカーが直接スタッフと契約する場合、選択肢は「①直接雇用契約」と「②業務委託契約」の2パターンです(図2)。
この2つの契約の最大の違いは、直接指揮命令ができるかどうかです(参考:「契約の基本【雇用契約・派遣契約編】」「契約の基本【業務委託編】」。
図2
2)外注会社を使用する場合
外注会社を使用する場合、選択肢は「③派遣契約」と「④⑤業務委託契約」の3パターンです。
③派遣契約の場合、希望するスタッフのリクルートを派遣会社が代行してくれるメリットがあり、それ以外は、①のメーカーが直接雇用している場合とほぼ同じです(図3)。
図3
④と⑤は外注と業務委託契約を行う場合です。
委託先がスタッフと雇用契約を締結している場合は④、業務委託契約を締結している場合は⑤です(図4)。
業務の依頼は委託先への業務依頼書によって行う必要があります(日常の連絡や確認作業はスタッフに直接行うことが可能です)。
図4
2.契約形態の検討の観点
このパターンに沿って、主な特徴をまとめたものが以下の表です(表5)。
適した契約形態は、採用の手間、業務の難易度や進め方、業務を遂行する期間、予算、貴社内で管理に割ける時間の有無などに応じて変わってきます。
貴社が実現したいゴールの達成に向けて、比較項目について貴社の実情を照らし合わせ、①~⑤のどれが適切か検討すると良いでしょう。
表5
3.契約形態をどのように検討すべきか?
FMSの過去の取引の経験から、契約形態を見極める最も重要なポイントは、指揮命令とプロジェクトの安定度であることが多いようです。直接指揮命令ができないと遂行できない業務かどうかによって判断が違ってくるからです。
よくみられる意思決定の事例は、下記の4パターンです。
【判断例1】
メーカーにノウハウがあり、かつ、難易度が高い業務の場合、直接指揮命令ができないと遂行できないということから「雇用契約」か「派遣契約」で運営する
→対象パターン:①③
【判断例2】
メーカーにノウハウがあり、かつ、業務の標準化が可能な業務の場合、直接指揮命令なく遂行できるということから「業務委託契約」で運営する
→対象パターン:②
【判断例3】
メーカーにノウハウがない業務の場合、自社で知見を育む時間的・経済的資源投下を節約するため、そのノウハウを持つ外注会社に「業務委託契約」で契約をする
→対象パターン:④⑤
【判断例4】
メーカーのノウハウの有無に関わらず、新しいプロジェクトを立ち上げる場合、その効果が見込めないことから、変動費扱いとなる「業務委託契約」で運営する
→対象パターン:②④⑤
一般的に、難易度の高い業務を行おうとする場合、判断例①のように直接の指揮命令にこだわった意思決定をすることが多い傾向にあります。
一方で、難易度が高い専門的な業務であっても、定期的なトレーニングや勉強会、ナレッジ化を盛り込んだ業務設計を行うことで、コスト面で不利な雇用契約ではなく、比較的安価な業務委託契約に切り替えられる可能性もあります。
うまく組織化して育成するノウハウがあれば、想定以上の力をスタッフが発揮してくれる場合が多いからです。
業務設計が可能であれば、業務の進捗管理をはじめ、ほとんどの業務を専門会社が設置するラウンド組織の事務局に委託することが可能です。新しいプロジェクトで変動費化したい場合、管理の手間や運営コストの削減を実現したい場合などは、業務委託契約を目指して外注化のチャレンジをしてみる価値は大きいと考えられます(参考:知っておきたいフィールドマーケティングの基礎(前編))。
4.外注する場合の契約形態検討のコツ
仮に外注すると決めた場合でも、パターン③~⑤の比較は一筋縄ではいきません。単純比較できない費目が多く、経験がないと見落とす項目がたくさんあるからです。
FMSが蓄積したノウハウをもとに、具体的事例を挙げて解説しましょう。
パターン③・④と⑤について、それぞれ下記の条件と仮定し、比較をしていきます。
パターン③・④の外注会社とスタッフが雇用契約の場合 7時間/日×20日×1名 |
どちらの場合もスタッフの時間あたりの報酬を2,000円/1時間と考えます。
表6をご覧ください。
スタッフへの支払い費用が一律280,000円/月であっても、実際に運用した時のトータルコストが大きく異なり、結果貴社への請求額も異なってくることがお解りいただけると思います。
スタッフ費用以外にどのような経費があるか、それは必要なものかどうかを考えることで、適した契約形態が明らかになります。
表6
例えば、直接的な指揮命令が重要ではない業務で規模が大きいラウンド組織であるにも関わらず、パターン③を採用している場合、メーカー側の見えない人件費が無駄にかかっている可能性があります。
この場合、パターン④や⑤のスタッフ外注に移行することで、コストだけではなくラウンド組織を運営する手間を大幅に削減することが可能です。専門会社の事務局運営ノウハウにより、目標達成に大きな期待が持てるようになるという効果もあります。
FMSは、長年にわたるフィールドマーケティングの実践の中で、業務委託契約のポイントとなる主婦層を組織化するノウハウを構築してきました。
内製による目標達成の実現に不安があれば、FMSにご相談ください。
外注を前提とした案ではなく、貴社の実情に合った提案をさせていただきます。
今回の記事が、成果を上げ続けるラウンド組織構築の一助になっていれば幸いです。