ラウンダーの店頭具現化率を高めるために!知っておきたい5つのポイント
本部商談で決定された施策を店頭で実現させるためにラウンダーを導入しているにも関わらず、『依頼事項が思うように店頭での具現化されていない』といったお悩みはありませんか?
今回は、ラウンダーを活用し、店頭での具現化率を高めるために必要な5つのポイントについて解説します。
※ラウンダー、フィールドスタッフ、マーチャンダイザーなどメーカー様により呼称が異なりますが、本コラムでは「ラウンダー」という表現を使用します。
ポイント1.ラウンダーへの依頼事項の伝達方法
店頭での具現化率は、ラウンダーへの依頼の仕方で大きく変わるといっても過言ではありません。
具現化率が低い場合、「臨機応変にお願いします」といった曖昧な依頼を行っていないでしょうか?
このような曖昧な依頼は、次のような問題を引き起こします。
曖昧な依頼によって起こる弊害「属人的な活動」
曖昧な依頼の場合、ラウンダーによりやるべきことの理解が異なり、店頭でどのように具現化を進めていったらよいかが人それぞれの判断にて実施することとなります。
よって、ラウンダーの経験値の差によって、具現化率が変わってきます。ベテランラウンダーは経験から読み解いて判断できるものの、新人ラウンダーは情報を読み解いて理解でいないために、最終的に業務の結果に差が出てしまうのです。 これでは属人的な活動になってしまい、具現化率にばらつきが出てしまいます。
このような理由により、せっかくラウンダーを導入しても、具現化率の向上につながらないことがあります。状況を改善するには、まずラウンダーへの依頼の仕方を見直すことが必要です。
具現化率を高めるために有効な業務依頼書の作成
具現化率を高めるためには、ラウンダーへの業務依頼内容に具体性を持たせることが重要です。
特に5W1Hに沿って依頼事項を整理することで、ラウンダーの現場判断が必要となる場面を極力減らすことができます。さらに、具体的な判断基準を記載した業務依頼書を作成することで具現化率とその質をあげることが可能となります。
また、業務依頼書はフォーマット化することをおすすめします。ラウンダーに依頼を行うために必要な情報の種類は一定ですので、あらかじめ項目化し、フォーマットを作っておきます。依頼の度にそのフォーマットの項目を埋める形で依頼書を作成するルールにしておくことで、本部担当営業様によるバラつきの防止や、抜け漏れのない依頼が実現できます。フォーマット化することは、ゼロから依頼書を作成するよりも、大幅な時間短縮にもつながります。
業務依頼書の項目をうめるように本部商談を行うことで、抜け漏れのない商談ができるため、業務依頼書のフォーマット化は、新人の本部担当営業様の商談サポートツールにもなります。
参考記事:【ラウンダー組織運営ガイドvol.4】店頭活動に必要な情報と業務依頼書の書き方 |
ポイント2.小売視点の店舗交渉用ツール
本部商談の決定事項を店頭で実現するには、店舗担当者様との交渉が欠かせません。
店舗担当者様との交渉を成功に導くために必要なポイントは、
① どれだけ売れる(小売店様の売上に貢献する) 商品であるかを伝えること
② その場で決断していただけること
この2点です。
人間の五感による情報収集のうち83%は視覚によるものと言われています。そのため上記情報を店舗担当者様の視覚に訴える交渉用のツールが必要です。
店舗交渉用ツールに必要な要素は、以下の5つです。
・その商品、カテゴリがどれだけ必要とされているかという市場ニーズの提示
・なぜその商品が売れるのかという根拠(他商品との差別化ポイント)
・売場展開イメージ
・売場づくりに活用できる販促ツールの一覧(サイズ、写真)
・その場で発注が可能な商品情報(入数、JANコードなどを記載)
これらの情報をストーリー性のある形で提示できるツールが望ましいです。店舗の来店客層を考慮した情報も含まれているとさらによいでしょう。こうしたツールを作成することで、新人ラウンダーでもベテランラウンダーでも同レベルでの交渉が可能となる環境をつくることができます。
参考記事:店舗交渉用ツールの作成方法(今後公開予定の記事となります) |
ポイント3.ラウンダーによる小売担当者様のファン化
前述の通り、依頼事項の具現化率を高めるためには店舗担当者様からの承認が必要です。そのために重要なのは、店舗担当者様と良好な関係性を構築することです。
店舗担当者様との接触回数が増えて関係性が構築されていくにつれ、本部決定事項の具現化率が上がるというデータもあるほどです。店舗担当者様との関係性を構築するためには、メーカーおよび商品のファンになっていただくことが重要なポイントとなります。
参考記事:理想の買い場を実現!本部商談から各店舗の展開までを成功させる4ステップ |
店舗担当者様にファンになっていただく2つの方法
店舗担当者様のファン化の方法1つ目は、定期的に顔を合わせることです。
「会えば会うほど好きになる」ザイアンス法則でもあるように、こまめに店舗を訪問し、店舗担当者様と面談する、直接コミュニケーションを取ることは信頼関係の構築のためには欠かせません。
参考記事:「会えば会うほど好きになる」ザイアンスの法則とは? |
2つ目は、店舗の売上拡大に必要な情報を整理して提供することです。
店舗担当者様の周囲にはたくさんの情報があふれていますが、忙しいために処理しきれていないことも珍しくありません。実際に、ある食品カテゴリの売り場担当者様約120名の方に調査を行ったところ、商品についての詳細情報を理解していたのは約3割という結果にとどまりました。
このような状況の中、店舗の売上拡大に必要な情報を整理して提供することにより、ファン化は確固たるものとなります。また、商品の情報を提供する際に、サンプルの提供など口頭説明だけでなく、体験を通じて商品の良さをわかっていただくことは、ファン化への大きなチャンスです。
ラウンド活動の全てにおいて、メーカーのシェア獲得だけでなく、小売りの売上アップ、お客様の満足度アップといった「三方よし」の精神をもって活動に取り組むことが重要です。
店舗担当者様との関係性構築がもたらすメリット
店舗のキーマンと関係性を構築することは、活動の採算性を高めることにも繋がります。
なぜなら、関係性構築ができると、店舗担当者様が具現化をしていただける可能性が高まるからです。これは、「この人のためだったらやってあげよう」という心理が働くためです。意外と、店舗担当者様との関係性を意識しているメーカー様は少ないのではないでしょうか。
参考記事: 店頭活動の裏技(コミュケーション編) 小売担当者様のファン化に必要なこと(今後公開予定の記事となります) 依頼事項の達成率に影響する店舗との関係性の可視化方法(今後公開予定の記事となります) |
ポイント4.ラウンダースキルの育成
本部決定事項の具現化には、ラウンダーのスキルも重要となります。しかし、スキルは、交渉ツールや店舗担当者様との関係性の上に成り立つものであるため、ラウンダースキルの育成に着手するとともに、店舗交渉用ツールの整備や店舗との関係性構築の見直しも行うようにしてください。
提案を承認していただくためにラウンダーに求められるスキルには、以下の3つがあります。
<ラウンダーに求められる3つのスキル>
①ヒューマンスキル:ヒアリング力や交渉力、ビジネスマナーなど
②テクニカルスキル:商品やカテゴリ知識、陳列に関するスキル
③モチベーション:スキルを発揮させるために必要な気づきや動機付け
これらのスキルを育成するには、一律の研修ではなく、「個に合わせた継続育成」を行っていくということが重要です。プロジェクトの目標達成のために必要なスキルを整理し、ラウンダー毎に不足していると考えられる箇所を伸ばすという考え方で教育を行いましょう。
参考記事: 課題はスキル?モチベーション?具現化率を高める『ラウンダー育成』のポイント 提案を承諾に導く心理テクニック!店舗担当者様ファーストでの商談の進め方 |
また、業務においてどのようなスキルが必要で、どの点が不足しているかを把握するためには、事前に目標と連動した活動内容と報告項目の設定が大切です。これらを可視化することで、ラウンダーに求めることが明確になり、ラウンド組織全体のスキルの底上げが可能となります。
参考記事: 【ラウンダー組織運営ガイドvol.1】ラウンダーの活動内容設定方法 【ラウンダー組織運営ガイドvol.2】報告項目の設定方法 |
ポイント5.ラウンダーを仕組化するための事務局
具現化率を高めるためには、ラウンダーの活動についてPDCAサイクルを回し、仕組化を行うことが必要です。事務局はその中心的な役割を果たします。
お取引企業様よりラウンダーを組織化するエージェンシーの違いを尋ねられることがございますが、重要なポイントは「事務局の機能・品質」の違いであるとお伝えしています。
店舗を訪問するラウンダーは、複数のエージェンシーに登録し、仕事に応じて異なるエージェンシーを利用していることはよくあります。ではなぜ同じラウンダーが活動しても、エージェントにより、具現化率に大きな差が生じるのでしょうか?
ラウンド業務にあたっては、前章でお伝えした、ラウンダーのモチベーションやスキルを上げること、およびPDCAをもとにラウンド活動の問題点を把握し、改善のサイクルを回していくことが成果につながります。これらを中心となって行うのはラウンダー組織の運営事務局であるため、「事務局の機能・品質」が具現化率に影響するのです。
事務局は、ラウンダーからあがってくる活動報告より全体の活動状況を可視化し、達成率の低かった活動に対しては、原因を追究し、その改善を図る、ということを繰り返します。目標未達成の理由には、小売りとの関係性や、ツールの不足、依頼方法、スキルなどさまざまな問題が考えられますが、原因を明らかにできれば、改善のアクションを取ることが可能です。逆に、達成率が高い場合にはその活動を横展開するための仕組化に取り組みます。
ここで大切なのは、以下の3つがあります。
① 依頼事項の達成・未達成の根本的な原因の可視化
② 目標達成に繋がる活動の検証
③ 費用対効果を高めるための質と量のバランス調整(店舗・業務の見直し)
事務局が根本的な原因を適切に判断できない場合、一律の研修といった無意味な対策を行ってしまうケースも少なくありません。
参考記事: 【ラウンダー組織運営ガイドvol.3】効果検証の手順 |
また、流通業界や競合メーカーも日々変化していますので、1年前にうまくいったことが、今必ずしも成功するとは限りません。このようなPDCAの仕組化を継続的に行い、その時々で常にベストな活動を模索していく必要があります。
以上、5つのポイントを押えることで、店頭での具現化率を最大化させることが可能です。
理想の売り場が実現されないとお感じの場合には、この5つの項目を再確認していただくことをおすすめします。