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コラム

店頭マーケティング
2020.07.15

ラウンダーとは~営業に代わって店舗巡回を行う人財リソース~

一部のメーカーでは営業担当者に代わり、「ラウンダー」が店舗巡回を行っていますが、この「ラウンダー」とは一体どのような人財なのでしょうか?今回はメーカーが売上アップを実現するうえでなぜラウンダーが必要とされるのか、ラウンダーの業務内容や導入後の効果などラウンダーに関する基礎的な情報について解説します。

目次

メーカーの抱える課題は大きく分けて2つあります。

課題1 本部決定事項が店頭で具現化されない

チェーンオペレーションの基本の流れは以下の通りです。
①メーカーの営業担当者が小売バイヤーと本部商談を行い、商品の品ぞろえ、棚割り、陳列レイアウト、販促企画などを決定する
②バイヤーは、商談で決定した事項を各店舗の運営担当者と連携し、各店舗に落とし込む
③小売店舗の店長は、店舗のカテゴリ担当者に運営担当者から申し送られた内容を伝える
④カテゴリ担当者は、担当の売り場で具現化する

この流れを見ると、本部商談で決定した事項は各店舗でそのまま実現しているように思いますが、実は本部商談決定事項が店頭で具現化されるのは2割から3割と言われています。
具現化されない理由のひとつは情報過多です。1つのカテゴリだけでもブランド数・SKU数は多岐にわたり、店舗担当者に共有される情報は膨大な量になってきています。そのような中で、店舗担当者はメーカーから流れてくる情報すべてを読み切れていない、情報が伝達されず埋もれてしまっている、情報は確認したが忘れてしまっていた、などのケースが発生します。小売側のリソース不足なども上記の傾向を助長させています。
また、もうひとつの理由は店舗独自の判断によるものです。店舗担当者は自店の売上が上がるように商品展開や販促を考えます。よって、過去売れなかった商品だから採用しない、立地や売り場の広さを加味して自店では対応しない、本部商談では決まっていなかったが、メーカーが直接来て提案してきたところを採用した、などの様々な理由により、バイヤーとの商談時に決定した企画が店舗判断で中止されたり、実行されても途中で撤去されたりすることがあるのです。

課題2 メーカー営業担当者のリソース不足

前述の通り、バイヤーとの本部商談決定事項であっても必ずしも店頭で具現化されるとは限りません。このような状況下で店頭での具現化率を高めるためには、営業担当者が各店舗を訪問し、店舗担当者に本部決定事項を直接伝達し、実施可否の交渉や売り場作成を自ら行うという選択肢もあります。
しかし、メーカー営業担当者を取り巻く環境は変化してきており、店頭のフォローまで手が回らないケースが増えてきています
たとえば、自社で取り扱うカテゴリや取り扱いチェーン数の増加とともに、商談相手のバイヤーが増え、本部商談により多くの時間とパワーが必要となったり、カテゴリ増加にともない、競合も増えるため、本部商談や店頭フォローのさらなる強化が必要になったりするケースです。さらに、各業態の商品構成も変化しつつあるため(ドラッグストアが食品を取り扱うなど)、新しい販路開拓を行わなければいけないケースもあるでしょう。

図1 チェーンオペレーションにおけるメーカーが抱える課題

 

このような状況下で必要となるのが、流通の世界では今や常識となっている、ラウンダーの活用です。

→FMSが提供する「量販店ラウンダー」サービスについてはこちら

ラウンダーとは、メーカーの営業担当者に代わって店舗を訪問し、本部決定事項である店頭プロモーション全般を具現化するスタッフです。ラウンダーは、本部で決定した内容やメーカーの戦略をもとに、担当する店舗で店舗担当者とコミュニケーションを図りながら、売り場づくりを行います。

さらに、ラウンダーと営業担当者の違いについて詳しくご紹介します。

違い① 業務範囲

メーカーの営業担当者の業務は量販店本部との本部商談、卸商談、そして各店舗での店舗商談や店頭作業。さらには会議や商談資料の作成等もあります。これらの多岐にわたる業務の中で、店舗内で行う業務を担うのがラウンダーです
メーカーの営業担当者とラウンダーの業務範囲を図2にまとめましたが、店舗内における業務はほぼラウンダーで実施が可能です。

図2 業務範囲表

※1 営業社員の場合、他業務も多く定期的な訪問が難しい場合が多いため

また、店舗営業では店舗間を移動する時間が発生しますが、これが1日の業務時間の30%~60%(※2)を占めているという調査結果があります。移動は能力と一切関係ない部分となるため、そうした非効率な時間やラウンダーに依頼できる業務を切り離すことで、営業担当者は本部商談や重要店舗の巡回など、営業担当者にしかできないコア業務に注力できるようになるのです。

※2 FMS調べ。店頭巡回を1日行った際の全体の業務時間に対する移動時間の比率。

違い② 目標の持ち方

メーカーの営業担当者は売上・利益を上げることが目標となるため、売上目標などが設定されているケースが多いでしょう。
対してラウンダーは営業代行ではありませんので、売上目標(ノルマ)を課せられることはほぼありません。あくまで、従来の営業担当者の業務内容を分担して行うことで、営業の業務負担を軽減させる存在です。
ただ、一切目標がないわけではありません。ラウンダーは売上・利益でなく、その手前の活動指標が目標として設定されます。営業の目標をクリアするためのKPIの一つです。

目標と連動したラウンダーの行動指標の設定方法については下記資料にて具体的に解説しています。
(参考:目標達成に結び付ける!ラウンダーの活動内容設定方法

ラウンダーを導入するメリットは大きく2つあります。

営業体制強化

本部商談と店舗巡回を営業担当者が一人で担当している場合、本部の意向が具現化しやすい、店舗担当者との情報交換が密にできる、といったメリットがあります。その反面、本部商談に時間を取られることで、フォローできない店舗が生じたり、その逆で本部商談の質が低下したりといったデメリットも発生します。
そこで、店舗巡回業務をラウンダーに依頼することで、営業担当者は主業務である本部商談に集中しつつ、店舗へのフォローも維持(もともと巡回できていない店舗であればフォローの強化)できる体制が構築できます。

図3 メーカー営業の業務時間、リソース配分内訳例(※3)

※3 FMS調べ。某メーカー営業担当者様の1ヶ月間の各業務時間を集計

上記はあるメーカーの営業担当者様の業務時間とリソースの配分です。これを見ると、本部商談にさける時間は全体の25%、さらに店舗巡回に40%の時間をあてていますが、フォローできていない店舗が発生しています。店舗巡回をラウンダーに分業することで、営業担当者は商談や主要店舗のフォローに時間(リソース)をさくことができ、さらに今まで巡回できていなかった得意先以外の店舗のフォローをラウンダーが担当することで、新たな売上を生み出すチャンスとなるでしょう。

コスト削減

ラウンダーは、地場のスタッフを組織化(後述)するため、営業担当者が店舗訪問の際にかかっていた交通費や出張経費のコストの削減が見込めます。全国チェーンの店舗を東京に在籍する営業担当者が出張ベースで巡回していたとしたら、コストは膨大なものになるでしょう。また正社員である営業担当者が店舗巡回に費やしていた人件費というコストを削減することにもつながります。

ラウンダー導入のメリットについては下記ページでも詳しくご紹介しています。
→FMSが提供する「量販店ラウンダー」サービスについて

それでは、ラウンダーとはどのような仕組みで動いているのでしょうか?
ラウンダーはそれぞれ担当する店舗を複数持ち、それらの店舗を定期的に訪問し、依頼を実行します。
ラウンダーのオペレーションの流れは以下のようなPDCAサイクルが一般的です。

依頼(Plan)

営業担当者は本部商談で決まった事項をもとに、ラウンダーへ業務を依頼します。依頼の仕方としては、依頼内容をフォーマットにまとめた書面「業務依頼書」を使って依頼をするケースが多いです。

店頭活動(Do)

ラウンダーは担当店舗に訪問し、依頼内容を店舗担当者に伝え、具現化する活動を行います。

活動報告(Check)

ラウンダーは店頭活動後に各依頼の実施可否や活動した内容の詳細、店舗担当者様の反応などの報告をあげます。

企画・商談の方針見直し(Action)

活動や店頭状況のフィードバックを受けた営業担当者は、その内容をもとに企画や商談方法の見直しや戦略を練り直し次回の商談に臨みます。

図4 ラウンダーの仕組み

※ラウンダー組織を外注する場合は、③と⑤のやり取りは、運営事務局を介します。

ラウンダー導入の目的は本部決定事項の具現化によるメーカー売上の向上です。具体的にいうと、本部商談で導入が決まった商品をきちんと店頭に並べる、発注漏れを防ぐ、販促企画を店頭で具現化する、など、販売機会の損失を防ぎ、店頭から売上を上げる支援をします。

ラウンダーへの依頼内容はさまざまです。
ざっと項目を挙げると、売り場のメンテナンス、売り場づくり、販促材の設置業務、商品管理(未採用商品の取り扱い交渉や発注促進など)、店舗担当者との交渉、情報提供、情報収集など、非常に幅広い業務が対応可能です。

ラウンダーの活動内容については下記ページでも詳しくご紹介しています。
→FMSが提供する「量販店ラウンダー」サービスについて

ラウンダーの強み① 店舗担当者のファン化(関係性構築)

ラウンダーは担当店舗に定期的に巡回するため、その頻繁なコミュニケーション機会がラウンダーの強みとなります。営業担当者なら年に数回しか来訪しないような店舗にも、ラウンダーは定期的に訪問し、担当者とコミュニケーションをとることができるのです。
新商品やキャンペーン情報の提供、商品サンプルの提供などを通じ、繰り返しコミュニケーションを行うことで店舗担当者との関係性構築を行います。
店舗担当者時代に関係性を構築できた担当者が小売本部のバイヤーになり自社商品を強く応援してくれた、などというケースもあります。

ラウンダーの強み② 地場情報に精通

ラウンダーの活動範囲は自宅から50km圏内であるケースが多く、地場のスタッフに巡回を依頼しているため、その地域の人の傾向や地域特性に詳しい人財です。店舗担当者は人事異動が頻繁にあるため、赴任間もない担当者にとってこうした地場情報は大変有益な情報となります。情報提供を通じて店舗担当者からの信頼獲得につながるでしょう。

ラウンダーの強み③ 優秀なご意見番

例えばラウンダーが集まる定例会議などの場において、商品(パッケージ含む)、販促資材改善点、企画内容に対する要望など社員であれば言いにくいことであっても忌憚のない意見を言ってくれるのもラウンダーの特徴です。
これらのラウンダーの意見は、手の届きにくい全国の店頭を「見える化」する貴重な情報となります。

来店客の多い土日や品出しのある開店直後、夕方の来店ラッシュを避けると、店舗に迷惑をかけずに効率的に来訪して活動ができる時間帯は、平日の10時から16時。ラウンダーは基本的にこの時間帯内の実働5時間で、自家用車を使った直行直帰の業務スタイルで働くことが多いです。

図5 ラウンダーの1日の活動例

限られた時間内で効率よく活動を行えるかがポイントとなるため、ラウンダーの配置はエリア制を採用しているケースが多いです。エリア制とは、巡回店舗をエリアで区切り、近隣に居住するスタッフが巡回を担当することです(エリア制以外では、チェーン毎に担当するチェーン制があります)。
限られた範囲で活動するため、移動にかかる時間と経費の無駄を削減することができます。また、担当エリア内の複数のチェーン店舗を巡回するため、業界動向をバランスよくキャッチすることが可能です。

図6 エリア制

それでは、どのような属性の人がラウンダーとして活躍しているのでしょうか?
断然トップの属性は、実は主婦層です。
その理由は下記の通りです。

・ラウンダーの活動スタイルとして多いのが、「10~16時の活動時間」「週2~3日の活動日数」「直行直帰」「エリア担当制による活動範囲の狭さ」となり、家庭との両立もしやすく主婦が働きやすい条件にマッチします。

・主婦層は消費者視点・買い物客視点で商品や売り場を観察することに長けている、第一級のショッパーです。ショッパーと営業の顔をあわせ持ったラウンダーは、店舗担当者との人間関係構築や情報収集業務で真価を発揮します。

・主婦ならではの気配りを武器に担当者とのコミュニケーションを行い、理想の売り場の具現化や店舗担当者のファン化を実現します。

ラウンダー導入前後でどれくらいの変化が期待できるのでしょうか?
以下はある消費財メーカーのラウンダー導入後の前年度比の売上増加額と、ラウンド組織への年間投資額(当社にお支払いいただいた額)を表した表です。
巡回を開始してから、年間投資額はほぼ横ばいなのに対して、2年目、3年目も売上は前年を上回り増え続けています。3年目の売上額は、ラウンダー導入前と比べ、120%アップとなりました。

図7 ラウンダー導入の効果

その他の事例もご紹介しています。
(参考:新たな販売チャネルの開拓に成功!定番売り場拡張率114%を実現した食品メーカー様事例

ラウンダー組織の内製化・外注化

ラウンダーを導入するには、自社でスタッフを採用し運営・管理まですべて自社で行う「内製化」と、ラウンダーを専門会社にアウトソースする「外注化」の2つの選択肢があります。
詳細は以下のコラムをご参照ください。
(参考:成功事例から学ぶ。ラウンダーを外注する前に知っておくべき3つの検討要素(前編)

また、契約形態もさまざまな方法があります。
詳細は以下のコラムをご参照ください。
(参考:ラウンド組織で使われる主な3つの契約の基本【雇用契約・派遣契約編】
(参考:ラウンド組織で使われる主な3つの契約の基本【業務委託編】
(参考:5分で理解できる、目的の達成とコスト削減を同時に実現する契約形態とは?

小売本部からの巡回許可の取得

ラウンダーを活用することを決め、採用・契約まで済ませても、巡回開始までに、あらかじめ小売店の本部に承認をいただく必要があります。これは、ラウンダー組織を外注化する場合でもメーカーが実施するべきタスクです。
巡回承認をもらう際には、ラウンダーは売上を上げるために巡回する部隊、すなわち小売店の売上アップに貢献するという小売側のメリットをしっかりと説明することが重要です。
また、この段階では巡回時の対応について細かく確認しすぎないこともポイントです(販促物や什器は設置してもよいのか?定番はこうしてよいか?など)。あまり細かく確認をしすぎると、バイヤーは不安になり、巡回の許可が下りない可能性があります。
ラウンダーは、店舗担当者様に必ず承認をいただいてから活動を行うため、本部商談の段階では確認は細かすぎないことをおすすめします。

業務設計

ラウンダー導入前に、しっかりとした業務設計を行う必要があります。
詳細は以下のコラムをご参照ください。
(参考:知っておきたいフィールドマーケティングの基礎(前編)
(参考:目標達成に結び付ける!ラウンダーの活動内容設定方法

ラウンダーを単なる小間使いだと思っている人がいたら、それは大きな誤りです。
ラウンダーは、メーカーと小売店の双方に力強く利益を生み出す、非常に頼れる存在なのです。
→FMSが提供する「量販店ラウンダー」サービスについてはこちら